「君だけの怪獣」 Liner Notes 的なの
おはようこんにちはこんばんは、歌詞を書く人です。
所属してるバンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの新曲が配信リリースされました。
そちらの歌詞のことなどについて書いてみようと思います。
が、
音楽なんてのは作った人の想いより聴く人の想いの方が大事だと思ってるし、人に渡った時点でみんなのものだと考えてるので、解釈に間違った答えなどないです。
それでも興味ある方だけよければ読んでみてください。

急ですが、私は逆境がだーいすき。
平和最高と思ってるし歌ってますが、ギタギタな瞬間を乗り越えた先の貫いて掴み取った平和だから最高なんです。
なので最低な日のことも愛してる。
そして、傷まみれ穴まみれの心にしか染み渡らない、経験と愛情のカラーもあると思っています。
この曲は、そんなギタギタな逆境から始まります。
私が去年発覚した乳がんの手術を終え、グループとしても新体制になってから、一発目のレコ発のリードトラックがこの曲。
失うものばかりだったが失ったもの以上にでっかいものを生み出してやる、とこの歌詞を書きました。
タイトルの怪獣とは、そんな人生アウェイのときにだけやっと引き摺り出てくる、自分の中の破壊神のことです。
自分だけを守るために、くだらねえ世界もいらない未来も木っ端微塵にぶっ壊してくれる、君だけの怪獣。
曲を聴くたびにその怪獣を呼び出せる祝詞として、書かせていただきました。
君が叫んだ絶望は
エンドロールじゃなく
BADなオープニングでした
残念!もっと苦しんでね
巨影を映した黎明(アバン)
燃え落ちた流星
ここはその序章。
“巨影”は怪獣の誕生、燃え落ちる流星は世界の崩壊の合図です。
「全てなくなっちまっておしまいです!」というような絶望的な状況から始まる物語。
メンバーのぐみさんは赤ちゃんのような声色をしてるので、白雪を真っ先に踏み潰すような純粋な恐さがあるなと思いこのAメロ後半を歌ってもらいつつ、曲の最後のパートではその純粋さで光を感じさせてくれました。
飛び散る羽根 空を掴んだ手
“疲れた” “もう駄目” “消えたい”だとか 騒めく脳
それでも あったかい涙なんて
塵からは流れないでしょ
とうに諦めてたんだ
明日の朝日を真っ直ぐに受けるなんてさ
それでも 夢の破片が半歩先へ
物語を狂わしていく
Bメロは共通して、頭では諦めてると思っていて体もろくに動かないのに、心に一縷の希望が居座り続けている描写です。
何もできないと悶えているときにも、その希望が勝手に人生を思わぬ場所へ少しずつ進めている。
2番Bはみゆちぃの長いパートで、希望を持って生きることを諦めきれない人が重力に逆らって立ち上がっていくような変化があります。
「ダイナシにしちゃおうぜ」
君だけの怪獣は
押し付けられた くだらねえ世界
ぶっ潰しに来たんだ
でかい口でバクッと喰らって
崩壊 爽快 みんなBye-Bye
君以外どうだっていいの
瓦礫 風に舞って キラキラ
怪獣と自分と空以外、何も目の前になくなった気持ち良さを浮かべて書いたサビ。
サビ前半はオーディションスタイルで歌割りが決まったのですが、みゆちぃとしおの魂の中から叫んでるような歌声で二人になりました。
あと、事前に作曲の浅野尚志さんにサビでバスドラと歌メインで極端に音数を減らして欲しいという要望を例と共に伝えたのですが、それを前半で叶えてくれた上で後半は疾走感あるビートを入れてくださったのを聴いて、より開けた場所で風を感じるような歌詞になりました。
ちなみに映画『ゴジラ-1』を観たときに、破壊っていうものを司る神がいるとしたら、こんな姿(ゴジラ)なんじゃないかな?と思ったんですよね。
それくらい神々しくて、ゴジラ。
で、強く恐怖も感じるのに、同時に命に代えても「一度この目で見てみたい」というほど引力があったのでした。
ただ、ゴジラは人間は食わないんですよ。ずっと蹂躙するだけ。
でもこの曲の“怪獣”はぜーんぶ食べます。
人生において絶望こそがメインディッシュで、人を人たらしめる感情と体験を全部もたらしてくれるものだと思うからです。
傷を牙にして、全部食べて怪獣の力にする。
失ったものは形を変えて自分の高エネルギーの一部に。
本当の化け物は誰じゃ?
砂を吸うだけの水底
理も可変 グラつく境界
思惟止むるなかれ
こちらは、真実の目を持って生きろ、ルールも壁もいつか崩れる、だから光の届かないような場所でも考えることを止めるなというメッセージです。
メンバーのしおに「実年齢1000歳以上の少女」のイメージで歌ってくれと伝えた箇所です。
永い歴史を眺めてきた存在からの啓示のような感じで。
痛いもリタイアも不正解か
いらんよ 全部 分割で
なあ どうせ奪ってくんだろ
じゃあくれてやるよ
痛い=痛みだけ感じて生きていくこと、リタイア=人生を終わらせること。
生きてくことは失うこと、ではあるかも知れないけど、
人は持ってるものしか失えないんですよね。
だから、失うことって自分がそれまで持ってたものを、確認させてくれる大切な所業なんだと思います。
楽しみたいしクリアな眼で真正面からそれを見たいのです、私はそれを。
そう思って書いて歌いました。
噛み付いて 引き千切って 遊ぼう
やめてなんて 遅いね お黙り
ジャギってて凡庸 不幸って陳腐じゃん
薙ぎ払え 蹴散らせ
伽藍堂 ふたりぼっちになろう
「不幸って陳腐」は、私が書いといてあれですが、19歳で両親を亡くしてるももに高みから歌ってもらわないと力を発揮しない歌詞だと思っておりました。
不幸に囚われて自分のアイデンティティがそれのみだと思い込んでいる人たちが、それを見上げて「本当に?」と疑問を抱いてはくれないかと…。
私は死を救いにすることを全くもって否定しないし不幸には一生耳を傾け続けるけれど、
それに至るまでに、“おかしいのは自分じゃなくて世界だろ”という考え方は広まって欲しいし、できることならそんな世界に潰されないで欲しい。
あなたを陥れた世界に、あなたが言いなりにならないで欲しい。
それらとひとりでは戦わせないために、怪獣はいます。
最後のサビはそんな気持ちから
「イッショにまちがおうぜ」
君だけの怪獣は
悪意 悲しみ 全ての罰も
笑って背負うんだ
守らせろ!生きる証明
消えない この愛は 無限大
いつか君がそのキズの
美しさを知るときまで
となります。
私は、あらゆる神が「罪を流す」という役割を担っているの見て、この曲でもそれができたらいいなと思っていました。
人間が神にそれを求めるのは、自分で課した罰に人はころされることがあるからだと思ってます。
しかし、
恐らく人間以外の生物は、生まれてきたことや今生きていることに、責任も罪も使命も持ってないのではないかと想像できます。
だったらそんなのは本来無いのと一緒でしょう。
しかしそれなら、責任や罪や使命は全く必要ないのか?と言えば、
人間はそれらに心底酔っ払うこともでき、それを支柱に生きることまでできるから素晴らしいとも思うのです。
私たちはこの曲を通して、笑顔で使命に陶酔しながら聴いてくれた人の罰を全部拾っていくことで、共に生きられたらと思ってます。
怪獣を具現化したいときは、バンもん!のことをどうか心に召喚してみて欲しい。
最後に、歌詞の表記にない部分はこちら。
イントロ&インター
[滅し給い 砕き給え 咎こそ徒(あだ)なれ]
[断ち給い 穿ち給え 朧 漣を]
1Aメロ
[因果げにあさまし]
アウトロ
[幕明ける 無明の神住処(かすか)にて…]
となっています。
このような感じではありますが、この曲が心の荒魂だとしたら、心の和魂である「ゴッドソング」という曲があるので、
遠い日にその曲の歌詞についても書けたらいいなあ、と考えたりはしています。
希望的観測。
