恥ずかしかったあの頃の機会損失
私は見た目も手伝って
10代はいわゆる娘時期というものを過ごせなかった。
今思えば自分が勝手に
そう思い込んでたのかもだけど。
とにかく見た目が幼い。
だから合コンにも呼ばれない
同年代の恋愛対象からも外される
そんな諦めが多感期の恋愛からも遠ざけた。
高校も終わる頃に
同じ歳のよっちゃん(男子・仮名)と
ひょんなことから仲良くなった。
よっちゃんは音楽をやっていて
ベースやギターを弾きこなしていた。
ロックンローラーっぽく
不健康そうではなかったけど
痩せていて色白だった。
よっちゃんは何がきっかけだったか
わからないけど
私に「歌って」といって
いつも肌身離さず持ってた
ギターをしゃら〜んと鳴らし始めた。
何を弾き始めたのか
イントロの時点で気づいたので
私はその音楽に合わせて歌った。
よっちゃんは
私の歌が好きだと言った。
何かことあるごとに
シャラ〜んとギターを弾いては
私に歌を促した。
すごく声がいいね
よっちゃんはニコニコして
ギターを弾きながら
私の歌を聴いていた。
周りの人たちは
よっちゃんと私の様子を見ては
「セシボンちゃんのことが好きなんじゃない??」
と冷かした。
私はよっちゃんに嫌われているとは思わなかったけど
好かれているとも思わなかったし
まさかこんな子供みたいな私を
好きだと思う異性がこの世にいるとも思えなかった。
よっちゃんも特に私に何をいうでもなく
何をするでもなく
いつも横にいてギターをシャラ〜っと弾いて
その音に合わせて私は時折
鼻歌を歌ったり、声を出して歌ったりした。
そんな優しい時間が流れていたのだけど
いつだったか
よっちゃんが急に私に真面目な顔をして
じっと見つめてきた時があった。
わたしはどうしていいかわからなくて
よっちゃんから目を逸らして
遠くを見ることしかできなくて
それでも居心地が悪くなって
私はよっちゃんに何も言わずに帰ってしまった。
それからよっちゃんからの連絡がなくなって
季節が変わった頃に
よっちゃんの隣に知らない女の子がいた。
あ〜もしかしたら
私は振られたのかな?
振ったのかな?
言葉になってないやりとりが
そこでは行われたのかもしれないけど
私は何も気づけなかったし
わからなかったし
恥ずかしくてどうしていいかもわからなかったし
ただ、あ〜よっちゃんのあの優しいギターに合わせて
歌えることはもうないんだな
ということだけはわかった。
もし自分が当たり前に年頃の女性として
自分を意識できてたのなら
よっちゃんのテレパシーに気づけたのかな
そんなふうに思うことがある。
目の前に「はいどうぞ」って
差し出されているのに
自分がその対象者じゃないと思い込んで
見逃してしまったのかもしれないと思うこともある
生きているといろんなチャンスが巡ってくる
私なんて
私なんかが
この思い込みが
いろんなチャンスや機会を逃しているかもしれないと
そんなことを考えていると
いつもよっちゃんのギターを思い出す。
遅いとか早いとか人生に
きっとそんなことはない。
きっとこれからも人生はあっという間
一つ一つを
おかしな感情に飲まれずに
受け取っていこうと思う。
