飲食店未来学240:価格転嫁するため『全品50円値上げ』~これは正しい判断か?弁当店のリアル
昨年実際にあった話です。過去1年間余り同じ価格で売ってきた弁当店さんが、25年秋に店頭売りの弁当価格を全品50円値上げしました。さらに、事業所配達弁当の価格も同じく50円引き上げました。
この弁当店の経営者の方は、
『価格転嫁をしなければ利益率が悪化する』という意識があったものの、『具体的な売価引き上げの根拠と目安』はわからないため、これくらいなら許してもらえるだろうという金額を上乗せした価格に変更したのです。
言うなれば、メクラ値上げを実行していました。

結果はどうだったかというと、50円の値上げでも評価は分かれました。
店売はお店のスタッフと会話しながら好きな弁当を買うため、50円の値上げは吸収していただけました。が、事業所の方たちは、好みに関係なく店側の日替わり弁当を購入するしかなく、一挙に50円(10%超え)の値上げでおよそ30%の人が購入をやめてしまいました。
このアクションに対する反省点は、
★二つの異なる客層に一律50円の値上げを実行したこと
後に事業所用の弁当売価は20円引き戻しして受注が回復しました。
★根拠のない少額値上げを実行したこと
要するに、改善効果の度合いが見えない値上げになりました。
★専門家の意見を聞くことなく経営者の独断で実行したこと
事前に、事業所弁当部門の売価の変更は「10円単位」で何円にするか検討してくださいと伝えていたが、不公平のないようにと、同価格の引き上げを実行してしまった。(商品構成の基本形は違います)
★商品ごとの「売価の壁」のチェックや、新売価と商品の商品力の「バランス」のチェックができていなかったこと
場合により販売数を落とさないためには、このような点まで配慮して価格転嫁を行わないとうまくゆきません。事前に、一つひとつ商品ごとに吟味することをしていませんでした。(実に手間がかかる作業です)
また、商品により、
売れる限界価格の10円や20円手前の価格で売るために、逆に「商品内容を変更する」商品もあってよいのです。それがプロの仕事だと思います。
価格転嫁の王道は『食材原価率を適正比率に戻す』ために売価の引上げや食材構成の変更を行うこと
この弁当店の当時の食材原価率をチェックしてみると、一律50円の値上げをしても、食材原価率は以前よりも「1.5%」上昇していました。価格転嫁をしないよりは実行したほうが良いのですが、後々の試算表が出てくるまで予測ができないのは困りものです。
本来の価格転嫁の目的は、一度の価格転嫁でその時点の引き上げられた高比率を適正な元の比率に戻すこと。100%の価格転嫁率でないと、次々と起こるコストアップに押しつぶされてしまいます。
先の弁当店においては、次回は、30円~40円の値上げや商品構成の見直しが必要になると考えています。
さらにその先には、「満腹感を味わえると共に買える価格の商品づくり」を追求する未来が待ち受けています。
売価と商品力の総合満足度の高さでオーダー数が決まります。
価格転嫁の壁は、
★商品を購買するお客様ごとに「この価格までなら買う」「この価格になれば買わない」があります。98%以上のお客さまが買ってくれる売価の決め方が見えないからこそ難しい作業なのです。
あえて宣伝ではありませんが、価格転嫁で悩まれている人にヒントとなる私の本を紹介させてください。
詳しい価格転嫁の考え方の説明や、価格転嫁作業を初めてする人でも自分で始められる手順を説明しています。
(了)
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