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「知識よりも、大切な力」—— これからケアマネになるあなたへ


先日、うちの事業所にケアマネジャーの実習生が来ました。

少し緊張した様子で、「ケアマネって、何が一番大事ですか?」と聞かれました。

そのとき、私はこう答えました。

「相手の立場に立って考える力が、一番大事だと思います」

ケアマネの仕事に興味を持ち始めた方や、これから目指そうとしている方の中には、

「制度が難しそう」
「覚えることが多そう」
「自分に務まるのかな」

そんな不安を抱えている方も多いと思います。

たしかに、ケアマネの仕事には知識も技術も必要です。

制度、サービス、医療、介護保険、書類、調整…。
覚えることはたくさんあります。

でも、知識や技術は、あとから少しずつ身につけていくことができます。

本を読んだり、調べたり、先輩に聞いたりしながら、積み重ねていけばいい。

けれど、「この人はいま、どんな気持ちなんだろう」と想像する力は、マニュアルにはなかなか書いてありません。

そして実は、その力こそが、現場でいちばん大事になることが多いのです。

ケアマネの仕事は、調整の連続です。

利用者さん本人の思いがある。
ご家族の思いがある。
医療職の考えがある。
介護職の見立てがある。
行政のルールもある。

それぞれに事情があって、それぞれに「こうしてほしい」がある。

だからこそ、ケアマネはただ制度に詳しいだけでは足りません。

相手が何を言っているかだけでなく、その言葉の奥に、どんな不安や願いや苦しさがあるのか。
そこに目を向けられる人が、信頼されるのだと思います。

人は、「わかってもらえた」と感じるだけで、少し楽になります。

これは、心理学者カール・ロジャーズも大切にしていた考え方です。

相手の世界を、相手の立場から理解しようとすること。
その姿勢が、信頼関係の土台になります。

現場でも、相手の話にきちんと耳を傾けて、「この人は、こういう思いで言っているんだな」と受けとめられたとき、張りつめていた空気が少しゆるむことがあります。

言葉そのものより、「自分のことをちゃんと見ようとしてくれている」その感覚が伝わることの方が、大きいのかもしれません。

ただ、ここで大事なのは、共感することと、同意することは違うということです。

ケアマネの仕事をしていると、怒り、苦情、不満、無理な要求にふれることもあります。

そんなとき、「わかります」と何でも引き受けなければならないわけではありません。
相手の気持ちは理解しようとする。

でも、自分の考えまで無理に合わせる必要はない。

たとえば、「それは納得できないですね」と同意する必要はなくても、「そう感じるほどおつらかったんですね」と気持ちを受けとめることはできます。

この違いは、とても大切です。

相手に寄り添うことと、自分を見失うことは、同じではありません。
むしろ長く支援を続けるためには、相手を理解しようとしながらも、自分の軸を保つことが必要です。

そして、もうひとつ、これからケアマネを目指す方に覚えておいてほしいことがあります。

それは、「意見」と「依頼」を分けて受け取ることです。

現場では、本当にいろいろな言葉が飛んできます。

「もっと来てほしい」
「なんでこうなってるの?」
「前の人はやってくれた」
「あの事業所はちょっと…」

こうした言葉を全部まともに受けていたら、心がすり減ってしまいます。

でも、その言葉が

ただ気持ちを吐き出している“意見”なのか、
具体的に対応を求めている“依頼”なのか、

そこを分けて受けとめるだけで、ずいぶん楽になります。

たとえば、「もっと訪問回数を増やしてほしい」という言葉があったときも、本当に支援の再調整が必要なのか、ただ不安が強くて気持ちをぶつけているのかで、対応は変わってきます。

ここを丁寧に見ていくことも、ケアマネの大切な力です。

これからケアマネになるあなたへ。

知識や技術に自信がなくても、大丈夫です。
最初から何でも知っている人なんていません。
最初からうまくできる人も、ほとんどいません。
私もそうでした。

でも、

相手の立場に立って考えようとすること。
言葉の奥にある思いを想像しようとすること。
理解しようとしながら、自分の軸も大事にすること。
この姿勢がある人は、きっと信頼されます。

そして、たとえ失敗しても、「この人はちゃんと向き合おうとしている」そのことは、周りにも伝わります。

ケアマネの仕事は、正解を出し続ける仕事ではありません。

人と人のあいだで、揺れながら、それでも丁寧につないでいく仕事です。
だからこそ、知識より先に、“相手を理解しようとする力”を大事にしてほしいと思います。

「この人の言葉の奥には、どんな思いがあるんだろう」
「これは意見なのか、依頼なのか」
「理解することと、同意することは違う」

そんな視点を持ちながら、どうか、自分を守ることも忘れずに歩んでいってください。

それはきっと、これから先の支援の土台になるはずです。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
ケアマネの仕事は、知識だけではうまくいかない場面がたくさんあります。

相手の気持ちの受けとめ方や、現場での関わり方をもっと深めたい方は、こちらの記事もおすすめです。


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