大嘘寺 #毎週ショートショートnote
ここは人呼んで「大嘘寺」。その本堂に一人の男。男はある「力」を求めて寺にやってきた。
寺の和尚は言った。「これまでについた嘘を一つずつ振り返るのじゃ。この修行を行えば、その『力』を手にできる」。男は言われるままに、これまでについた嘘をひたすら振り返った。 すると毎晩、嘘の相手が夢に現れ、男を責めるようになった。男は心を病み痩せ衰えていった。
ある日、和尚は男に言った。「今日は、人生で最も恥ずべき嘘を振り返るのじゃ」
「それは…身重の妻に嘘をつき、若い女と遊んだ事でございましょう。妻とはそれで離縁となりました」
その夜、男の夢に元妻が現れ、激しく男を責めた。男は一晩中うなされ続けた。
目覚めると、和尚は言った。「万行じゃ」。男は和尚に問うた。「私は『力』を手にできたのか?」
和尚は応えた。
「おぬしは今後どんな嘘をついても、顔色一つ変える事はない。世を欺く力を、確かに手に入れたのじゃ」
(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。
