骨折祈願 #毎週ショートショートnote
清と正徳は、月に一度酒を酌み交わす仲だ。この日も居酒屋で飲み始めたが、いつも明るい清が急に硬い表情で語り始めた。
「正徳。お前に詫びたい事がある…。学生時代にサッカー部でポジション争いをしていた頃、お前は骨折し、その後俺がレギュラーになった。やがて俺たちは同じ会社に就職し、何度も営業成績一位を争った。お前が骨折で休職した年に俺は念願の一位。白状するが、どちらの時も俺は神社で願掛けをしたんだよ。その時、お前が骨折でもしてくれたらと、軽い気持ちで願ってしまった…」
正徳はグラスの酒を飲み干し、口を開いた。
「清は俺の骨折を不運とだけ考えているようだな…」
正徳は続けた。「学生時代の足の骨折は、上半身を鍛える時間になった。ひ弱だった俺が復帰後活躍できたのはその為だ。骨折での休職は、学び直しの時間と研究職に転じるきっかけをくれた…」
正徳は清の猪口に酒を注いだ。
「だから清。詫びる事なんてないんだよ。とんだ骨折り損だったな」
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