「髭は恋をする。」 #毎週ショートショートnote

 放課後の教室。「ひげ」はしきりに顔を撫ででいる。夕方になると顔半分に青々と生えてくるひげ。「ひげ」というあだ名は、クラスの人気者愛ちゃんにつけられた。「ひげちゃん」という少し可愛げを含む表現で。
 クラスには「禿はげ」というあだ名の男子もいる。やはり愛ちゃんに見出され「禿はげちゃん」と呼ばれるようになったのだ。「ひげちゃん」と「禿はげちゃん」は、いつしかコンビとして扱われていた。
 この日、愛ちゃんは「禿はげ」に近寄ると「禿はげちゃん、今日も禿げてる」と言いながら頭頂部を撫で始めた。撫でられてもぞもぞと身を捩らせる「禿はげ」。それを眺めていた「ひげ」は突然叫んだ。「ヤメろや!」
一瞬の沈黙の後、「怖っ」「何怒ってんの」などと言いながら、愛ちゃんのグループは教室から出ていく。
 「ひげ」は教室の真ん中に取り残された。自分でも顔が赤らんでいるのがわかった。「バンッ」という声に驚き、振り向くとそこには「禿はげ」が指先を銃の形に構えニヤニヤと笑いながら立っていた。

(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。
今回の作品、ぜひ音読で味わってくださいね。

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