入院日記【8】番外編 信頼と実績
あれは風呂上がりのひと時だった。
私は濡れた頭を手荒に拭いていた。瞬間、パキッという音と共に何かが宙を舞うのを肌で感じる。目の前がぐらりと揺れて、直後、安定感を失ったそれは虚しく床へと落ちた。鮮明だった視界は奪われ、私の世界は何もかもがぼんやりと淡く滲んだ。
また、やってしまった……私はすぐに察した。いったいそれがどういう事なのか。
何度やっても学ばない自分に腹が立つ。しかし、それも全て後の祭りだ。
私は足元から彼を拾い上げた。彼の左肩はやはりもう、どこにもなかった。
「あぁ……」
まさかこんな事になるとは。
この病院に入院してからというもの、私は自分の手術がないからと油断していたのだ。
私は手術をされる方ではなく、する方だったのだと改めて気づく。なにより、眼鏡オジサンになる日を前にこんな事になるとは…。
いや、待て、ここは病院だ。何かしら手立てはあるはずだ。
私は看護師へと訊いた。
「接着剤とかありますか?」
そして、彼女は言った。
「ん〜ここには置いてないですね……売店に行けばあるかも?」
そうか、重要な事を忘れていた。ここは私を治すための病院であって、彼は住む世界が違うのだ。
私は売店に走った。点滴が繋がっていて走れないから、心の中で走った。あれだけ走ったつもりなのに、売店に着いた時間は歩いた時とさほど変わらなかった。
私は息も切らさず真っ先に店員へと訊いた。
「接着剤は、ありますか?」
店員はすぐに私を目的の場所まで案内した。
「ここにありますよ」
そこにあったのは、あのギネス記録にも認定された最強の刺客だった。
アロン、アルファ。638円。


「あ……」
さすが世界最強。値段も強気だ。入院中の私から、たった一瞬のために638円も搾り取ろうとは……
世知辛い世の中だと思った。
クイックペイ♪♪
私の元から638円が消えた。そうして、アロンアルファが仲間へと加わった。
私は早速、アロンアルファと共に病室で彼の手術に取り掛かった。

これまでに私は彼の手術を3度経験している。
術式は既に頭の中に入っていた。
きっと4度目の彼も、もう手馴れたものだろう。むしろ、よくここまで生き延びたと思うと関心する。
私はアロンに言った。
「さぁ、始めようか」
そうして彼の接合部にそっとアロンアルファを触れさせた。
それは一瞬の出来事だった。

「こんなに、早く……」
アロンの力は絶大で、ほんの少し彼の傷に触れるだけで、それまで真っ二つだった彼の身体と腕を瞬時に繋げ修復したのだ。
「さすがだ、アロン。やるな」
638円。私はアロンの価値を認めざるを得なかった。
「君にこれだけ出した甲斐があったよ」
私は早速、本来の姿を取り戻した彼を装着した。
「すごいよ、アロン」
それは全く違和感のない着け心地だった。
ぼやけていた私の世界が鮮明に浮かび上がる。
「ありがとう。これでもう安心だ」
私はアロンを仲間の待つポーチへと迎え入れた。そうして、皆が待つあの会場へと向かった。
今日は眼鏡オジサンになる日2026
ということで、今日の9時頃までは、こちらの眼鏡で過ごします(っ ॑꒳ ॑c)

皆様、眼鏡オジサンにて楽しい一日をお過ごし下さい(□_□✨)笑
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