おばぁ。【日記】
私は2日前から田植えの手伝いのため帰省している。
そして今、実家のおばぁがデイサービスから帰宅した。
御歳95を超えるおばぁは膝が悪く、押し車を使うものの歩けるほどには元気である。
何より私よりもボケていない頭は本当に95かと思えるほど記憶力も抜群だ。
そんなおばぁは玄関を開け大声で元気よく言った。
「ただいまぁ」
そして、人がいるにもかかわらず誰からも返事がないことにおばぁはこうボヤいた。
「あらー、返事なかねー、誰もおらんとかにゃ」
(訳:あら、返事がないわね、誰もいないのかしら)
それに付き添っているデイの女性職員さんが答える。
「おらっさんとかもですねぇ」
(訳:居ないのかもしれませんね)
私は申し訳なさに駆られた。
決して誰もいない訳ではない。
私は今、玄関の真横にあるトイレにいるのだ。
ここから「はーい」なんて返事ができるわけがない。
なんなら腹を壊してトイレにこもっているのだ。
なおさら返事なんてできるわけがない。
すまないが、許してくれ、ばぁちゃんよ。
そしてデイサービスの人よ。
私は今、己の腹痛との戦いに必死なのだ。
そんな死闘の末、私はトイレから出た。
すでにデイの女性職員さんが帰っていることは確認済みだ。
(なんせ真横のトイレだから気配で分かる)
玄関に腰掛けているおばぁに、私はトイレから出ながら極自然に「おかえり」と声をかけた。
「そこにおったんか」
(訳:そこにいたのね)
私はその言葉を期待していた。
しかし、おばぁはこう言った。
「どがんじゃった。もう良かとか」
(訳:どうだったの?もう大丈夫なの?)
まるで私がトイレに居たことを知っていたかの如く、驚きもせず何食わぬ顔で私を見る。
私は一瞬固まった。
まさか、本当に私がトイレに居たことに気づいていたのか。
そうなれば話は変わってくる。
玄関で長らくおばぁと話していた、あのデイサービスの女性職員さんにもバレていたことになる。
私は「うん、もう大丈夫☺️」と、爽やかに答えながら無い頭で考えた。
そうきっと、おばぁは気づいていた訳ではない。
私が昨日の田植えで瀕死になり発熱し、今朝病院へ行ったことをおばぁは知っている。
それが気がかりで、記憶力の良いおばぁは「そこにおったんか」をすっ飛ばして「どがんじゃった。もう良かとか」になってしまったのだ。きっとそうだ。
私の居留守、いやトイレ留守は完璧だったはずなのだ。
腹痛も発熱もマシになり、こんな記事も書けるくらいには少し元気になりました🤒
ちゃんと体調が戻ったら、タグ回収に向かいます。それまで自由にタグを楽しんでてください(-人-)
私はもう少しの間、乳酸菌と共に戦います。
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