パキッ、ポキッ。
メガネをかけていた。
メガネをかけたまま、顔の側面をタオルで拭いた。
瞬間、パキッと音がした。
顔面から崩れ落ちるように
力なくメガネが消えていく
そして、私の視界も消えた。
私は、無惨な姿のメガネを拾った。
いったい何度目だろうか…
なぜ人は学ばないのだろうか。
なぜメガネは顔の一部として認識されてしまうのだろうか。
誰か、研究してほしい。
いや、私がやるしかないのか。
いや、そんなことは、#どうでもいいか。
慣れというものは恐ろしいもので
あって当たり前だったメガネは
儚くも私の前から姿を消した。
人は大切なものがなくなった時
その大切さに気づくという。
そして何度気づいても、また忘れるのである。
それはまるで痛みのように。
なんと恐ろしいことか。
こうして老いていくのだ。
世界は残酷である。
神様は残酷である。
人生は残酷である。
私にチャンスはあるのだろうか。
メガネにチャンスはあるのだろうか。
私はメガネを見た。

私の心もポッキリ。
すでに命尽きたように思えた。
接着剤で繋ぎとめられる命ではなさそうだった。
ここまで来るとヤケクソである。
私は両手に持ったメガネをコンロで炙った。
そう、ペンパイナッポーアッポーペンである。
もうヤケクソどころか、焼けクソッ!である。
結果、どうなったのか。

(当たり前)

変形して原型を留めていない。
つまり、私はメガネにとどめを刺したのである。
なんて事をしてしまったのか。
すまない、メガネ…
私はメガネを見つめた。
心做しかメガネに睨まれている気がする。
まぁ、睨まれて当然か。
なんせ、私はメガネを火炙りの刑に処したのだから。
そして、もう取り返しのつかない形にしたのだから。
私に残された手段はもうない。
何よりメガネの命がもうない。
買い替えを検討するしかない。
(良いお値段したメガネだったのになぁ…)
さよなら眼鏡。
さよなら視力。
さよならお金。
また新しくなって、私の元に戻ってこいよ。
私、待ってるから。
君たちのこと、待ってるから──
こうして、待てど暮らせど戻ってこない彼らを、自ら迎えに行く羽目になったのは言うまでもない。

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