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241130 東洋のマンチェスター大大阪

輪行ポタリング紀行 004


富士フィルムフォトサロン大阪さんで、「富士フイルムグループ 創立90周年記念コレクション展『フジフイルム・フォトコレクションII』世界の20世紀写真「人を撮る」」が始まりました。しかも、無料。これは行くっきゃない。

でも、わざわざ大阪まで行くのにそれだけでは芸がない。そこで、大大阪時代のレトロ建築を巡回することにしました。大阪市は1925(大正14)年に面積181平方km、人口211万人となり、関東大震災もあって、当時の東京市を上回る日本一の大都市となりました。それを「大大阪」と呼びます。今回は、大大阪になるまでの現存する建物を回ることにしました。


1.日本銀行大阪支店

  • 施工 1903(明治36)年

  • 設計 辰野金吾

この夏、『国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯』(板谷敏彦著)を読みました。日本近代建築の父、辰野金吾さんは、高橋是清さんが北九州の唐津で見出だした天才だと知りました。明治の日本を美化するつもりはありませんが、キラ星のごとき若者たちが集まって、日本に「近代国家」を立ち上げようとして粉骨砕身、努力したことには感動せざるを得ません。

2.大阪府立中之島図書館

  • 竣工 1904(明治37)年

  • 設計 野口孫市と日高ゆたか

中之島にある住友ビルディングを中心として、住友グループのオフィスが立ち並ぶ界隈を、大阪の人は若干の揶揄を込めて「住友村」と呼んでいます。その近くに建つ中之島図書館は、第15代当主、住友吉左衞門友純さんが施主です。西洋型の奉仕活動として、府民にとって有益な施設となるようにと寄付されたそうです。

3.北浜レトロビルヂング

  • 施工 1912(明治45)年

  • 設計  不明(大林組)

建物の北側(撮影者の後ろ)に、150年近くの歴史を有する大阪取引所があります。この地を「北浜」と呼ぶのは、経済の中心地であった船場の最も北にある浜だったからです。江戸時代から金相場会所があったところでした。本ビルヂングは、株式関係者の集会所「株友会倶楽部」として建てられました。人生の浮沈をどれほど見てきたのでしょうか。

4.大阪市立愛珠あいしゅ幼稚園

  • 竣工 1880(明治13)年

  • 設計 不明

今回初めて行きました。どうですか、この立派な入母屋造いりもやづくりの大屋根は。現存最古の木造幼稚園は、北船場の道修町の町会が設置しました。江戸時代から薬種問屋が集まる「薬の町」です。日本最大の製薬会社、武田薬品工業も元はここにありました。なお、「道修」は「どしょう」と読みます。つい最近、人前で「どうしゅう」と読んで恥ずかしい思いをしました。お気をつけあれ。

5.伏見ビル

  • 施工 1923(大正12)年

  • 設計 長田岩次郎いわじろう

元はホテルだそうです。長田岩次郎さんは、本作以外に名を残していません。辰野片岡建築事務所に所属していました。辰野金吾さんが弟子の片岡やすしさんと開設した事務所です。名建築と名高い大阪中央公会堂や奈良ホテルを設計した事務所です。そこの嘱望された若手が手掛けたんですね。

6.旧小西家住宅資料館

  • 竣工 1903(明治36)年

  • 設計 本間乙彦

堺筋に面する道修町の象徴となる建物です。漆黒の壁がかなり迫力です。なぜ黒いのか?防火や防虫、防腐の効果があるそうですが、よくわかっていません。いずれにしても、谷崎潤一郎の『春琴抄』の舞台としてはぴったりでしょう。今はボンドを取り扱うコニシ株式会社さんの前身です。木工用ボンドのあの黄色い容器を知らない人はないでしょう。

7.船場ビル

  • 竣工 1925(大正14)

  • 設計 村上徹一

なんと、工事中でした。え!解体!?と心配しましたが、帰宅してから検索すると、中に入っているテナントさんの記述を見つけました。来年の100周年に向けて外装や窓枠を再塗装する大改装なんだそうです。ホッとしました。内部には吹き抜けの坪庭があるそうですが、まだ見たことがありません。

8.清水たけし商店

  • 竣工 1924(大正14)年

  • 設計 小川安一郎

外見は洋風ですが、根本は和風建築です。和洋折衷様式なんて言われますが、簡単に言えば「なんちゃって洋館」です。当時の大工さんは、どんなに苦労したでしょうか。洋と和では、基準となる長さの単位から違うんです。施主のわがままを聞いて、恐らく我を屈して、それでも腕を見せようとしたんでしょうね。京都や兵庫にもたくさんある「なんちゃって洋館」は大好きです。

9.フジフイルム・フォトコレクションII

一番観たかったのは、ユージン・スミスの「楽園のあゆみ」でした。本やデジタルで観る限り、なんだか甘ったるくてピンとこなかったんです。石井妙子さんの『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』を読んで以来、ずっと思っています。念願のオリジナル・プリントが観られる!結構、緊張していました。メガネをかけて、しばし熟視。結果、そんなに甘いものではありませんでした。多少は納得しました。

10.今橋ビルヂング

  • 竣工 1925(大正14)年

  • 設計 不明

大阪市中央消防署今橋出張所だったビルです。今はアンティカ・オステリア・ダル・ポンピエーレ(消防士の古い食堂)です。名前が洒落ていますね。若い二人が入るのを迷っていました。うらやましい限り。久しぶりに美味しいピッツァが食べたくなりましたが、さすがにイタリアンに一人で入る勇気はありません。

11.大阪倶楽部

  • 竣工 1924(大正13)年

  • 設計 安井武雄

今も大阪の財界人が集う社交の場です。2代目の本館を設計したのは、昭和モダニズム建築を代表する安井武雄さんです。辰野片岡建築事務所に入所して2年という若いころの代表作です。そういえば、去年の大学同窓会で憧れていた女性と、たまたま大阪倶楽部の話になりました。「昔、父によく連れていってもらったわぁ」と明るく言われ、大学時代に告白しなくてよかったと思いました。

12kmほど2時間ほどでした。仕事が終わってから行ったので、ちょうどよかった感じです。