【ステイホーム】#29 世界の終わりの始まり
2022年2月8日(火)、未明に電話が鳴った。
父が死んだ。
私ではなく、私の父、つまり娘にとっては祖父のことだ。
救急車からの電話で、慌てて深夜の救急病院に駆けつけた時にはすでに息を引き取っていた。胸の大動脈に瘤があることはわかっていた。眠っている時に破れて肺に血が溜まったのだという。おそらく本人も気付かぬうちに安楽に死んだのだろう。
すぐに遺体に面会することはできず、隔離された部屋でPCR検査を行い、コロナ陰性であることがわかるまで数十分間待たされた。父の遺体はビニールでぐるぐるに巻かれて顔の部分だけかろうじて寝袋みたいにむかれていた。誰もいない深夜の救急病院で照明も必要最低限しかついてない。怖くはなかったが、ちょっとお化け屋敷みたいだなと思った。葬儀の前の日には珍しく大雪が降った。都市部だが、喪主がいけないと困るので、念の為タイヤチェーンを買ったほどだ。
娘は(雪の日以外は)毎朝20分縄跳びをしていた。どうして運動しているのか聞くと、二重まぶたになりたいからだという。痩せるとなるものらしい。お菓子を制限したり、水を毎日2リットル飲んだりするという。米の炊き方を教えたら、料理もしてくれるようになった。ハンバーグの作り方など妻から教わっている。
2月21日、とうとうカラーコンタクトを買ってあげた。てっきり青い眼になるのかと思って期待していたら、色というより黒目が大きく見えるというコンセプトのものだったみたい。
2月22日。N中卒業式。と言ってもニコ生の中継を自宅で見るというものだったけど。
2月24日。ロシアがウクライナに攻撃。パンデミックに続いて戦争だ。
世界の終わりが始まったと思った。
娘は毎朝きっちりと縄跳びをしていた。
