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【ステイホーム】#7 父、娘を島根県へ連れて行く

 令和2年(2020年)夏、有給休暇をとって隠岐諸島に次女と妻とで家族旅行に行った。島根県の北方60kmの日本海沖合に位置する離島である。主な目的地は海士(あま)町の、県立島前(どうぜん)高校と隠岐國学習センター(町営の塾)の見学である。

 この頃はまだ三密を避けるように言われ、どこに行くにもマスクを強要され、行きすぎた同調圧力にはストレスと反発を感じていた。(あまり関係ないけどホリエモンの餃子事件が起きたのはこの少し後である)。飛行機に乗るにも感染検査を受けて陰性証明を取らなくてはいけなかったり、島も感染には神経質で、食堂でのイートインがダメでテイクアウトでしか売ってくれなかったり、ホテルの大浴場が閉鎖されてユニットバスしか使えなかったりした。
 でもどこに行っても、例年より人の数が少ないのは次女には好都合だった。「GoToトラベル」という政府のキャンペーンで、後からお金が返ってきたりもしたので、自粛ムードを押し通って旅に連れ出した。

 次女はいま中学2年生に相当し、引きこもりの真っ最中。中学を卒業した後の進路などめども立っていない。もし高校に行きたいのだとしたら、広い選択肢があることを見せてやりたかったのだ。目標が持てれば準備も始める気になるのではないか。なにしろ中1の2学期から全く勉強することをやめてしまった。どこかで少し勉強を再開しないと義務教育レベルの知識さが身につかないことになる。それでは進路の選択肢はどんどん狭くなる。中卒では就職できない職業も多いという。
 と話しても、今の本人はとても考えられないだろうから、まずは考えるよりも、強烈な体験をさせたかった。
 充実したサポートがある学生寮を備えた素晴らしい高校や、ユニークな次世代教育をしている塾を見せてもらっても、彼女には、どうも魅力を感じることがなかったようだ。

 この島の自然の美しさは異世界だ。濃く広大な海も、降るような星も、歴史ある神社も、美味しい牛も牡蠣も、豊富な湧き水も神々しく深遠で、それは私の筆ではとても表現できない。とにかく感動した!私がここに住みたいくらいだ!(関係ないけど、ワーケーションなどと言う言葉も巷で流行り始めていた。ここでもネットさえ繋げば仕事できるじゃないか!)

 だから娘も、ここに来れば嫌なこと全てリセットして、さぞかし心が解放されるだろうと期待していた。実際、ずっと部屋から出なかった子が、太陽の下で透き通った水のビーチでシュノーケルを楽しんだ。15センチの距離のスマホしか見てなかった目が、どこまでも続く青い海原を見ていた。しかしあくまでも彼女にとっては、この体験は夏休みの家族旅行でしかなかった。将来ここで3年間を過ごしたい!と言う気持ちは湧いてこなかったようだった。私としては、せっかくお金と時間をかけてお膳立てしたのに……と肩を落としたのだった。

(続く)

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