【ステイホーム】#3 カラオケ?バドミントン?ジャニーズ?プログラミング教室?
土曜日になった。会社も学校も休日だ。よし気分を変えよう!妻と打ち合わせて、娘を昼からカラオケに連れていくことにした。
ーーなぜ学校に行きたくないのか?
ーー誰かに何か嫌なことを言われたのか?
ーーどうして何も言ってくれないのか?
ーー学校に行くために親にどうして欲しいのか?
訊きたいことは山ほどあった。だけど口を開いてくれないのだ。そこでカラオケにした。歌ならそうした嫌な会話をしなくてもいいし、歌ってるうち気分も晴れるんじゃないかと言う作戦である。しかし普段から一緒にカラオケに行くような家族ではない。娘が歌ったのは、King & Prince とかSexy Zoneとかで全然知らない曲だった。一緒に歌うこともできず、狙った連帯感も得られなかった。結局何もわからないままだった。
日曜日になった。やっぱり学校がないせいか機嫌は悪くない。家の前の道で、バドミントンに誘ったら相手して遊んでくれた。しかし何も話してくれないし、こちらも機嫌をそこねるのが怖くて質問できない。腹を探り合うような顔をして上っ面の会話しかしてない。
そのあとは妻がシッピングに連れ出してくれて、昨日の男子アイドルのCDを買ってきた。CDなんか買ってきたって、今の子はCDプレイヤーを持ってないから聴けないじゃないか。妻に小言を言いつつ、私がDVD-Rドライブをパソコンに繋いでリッピングして、さらにMP3をプレイリストにまとめ、娘のスマホに転送してやった。大サービスだ。
そしてまた月曜日が来た。学校がある。
娘は朝から自室に閉じこもって口も聞いてくれない。
ああ、やっぱりねー!そうなるよねー!
だけどもう12月だ、2学期の期末テストどうするんだ。結局、妻が学校の先生と電話で相談して、教室とは別な部屋(音楽室)で独りで受けるのでどうかと言う譲歩案が出て、娘を説得にかかり、それならばテストを受けてもいいということになった。それでこの週は妻が同伴してなんとか登校。誰にも会わずに帰宅。期末テストだけは出席してくれた。
そうしてやっと2度目の週末が来た。土曜日は先週とはまた別なショッピングモールへ連れていき、アイドルの写真をはめ込むアクリルのキーホルダーなど買わされた。
日曜日には私の考えでプログラミング教室へ連れ出した。スクラッチというビジュアル言語でゲームを作る講習だ。前からプログラミングに興味があるようだったので、すぐに行けるところを探してお試し体験コースを申し込んでおいたのだ。朝早くだったので終わったのはお昼。ラーメンを一緒に食べて午後は映画館へ行った。またジャニーズのアイドルが主演の恋愛映画を観たいと言うので独りで観せて(だって私はそんなの全然興味がないし、学生料金より金がかかるし)、私は下の階の本屋で立ち読みしながら映画が終わるのを待っていた。終わったら今度はコンビニでアイドル(こいつだれだか知らんけど)の写真をプリント購入させられた。これだけ言うこときいてやったら、娘も少しは親の期待を汲み取って学校へ行ってくれるだろうと言う下心だった。そうしてお金を散財することで娘の行動を操作する権利を買った気になっていた。しかも娘も土日は機嫌が良かった。それで私は勝手に事態は回復傾向にあるだろうと楽観していた。
ところでこの土日は、こうして父親である私と不登校娘の二人で過ごしたわけだが、なぜ妻(母親)がいないか説明してなかった。
これまで説明を省いてきたが、実はこの中1の娘は次女である。つまり我が家にはもうひとり長女(お姉ちゃん)がいるのだ。次女とは少し歳が離れていて、今高校3年生だ。今12月だから、つまり大学受験生ということだ。彼女は、いわゆる名門県立高校に通っており、親が言うのはアレだが頭がいい子だ。この土日は志望大学をいくつか下見に行く予定だったので、妻は長女に同行していたと言うわけだ。
長女と妻が帰宅する頃には、冬だからもう真っ暗になっていた。ただいまーと言う姉の声が玄関から聞こえるやいなや、それまでなんとかリビングでテレビを見ていた次女は、まるで巣穴に引っ込む小動物のように無言で自室にこもってしまった。
(次回へ続く)
