面白くないゲームは、面白くない人が作っているわけではない話
面白くないゲームは、面白くない人が作っているわけではありません。
むしろ優秀な人たちが集まっていても、面白くないゲームは生まれます。その理由は、ゲームの中ではなく組織の中にあることもあります。
クーロンです。
ゲーム開発がうまくいかない理由はいくらでも挙げられます。
予算が足りない、開発期間が短い、技術的な課題が解決できない、市場の読みを外した、などなど。
ゲーム業界で働いていると、そうした理由に遭遇する機会は決して珍しくありません。
ただ、僕がこれまで見てきた中で、特に厄介だと感じたものがあります。
いわゆる「社長案件」です。
社長案件というのは、その名の通り社長の意向で進められる企画や機能追加のことです。
経営者がゲームの方向性に関与すること自体は自然な話ですし、それが悪いとは思いません。ゲーム会社の社長になるような人は、たいていゲームが好きです。
ゲームが好きだから会社を作り、ゲームが好きだから自分のアイデアを世に出したいと思う。その気持ちは開発者として理解できます。
問題は、アイデアそのものではなく、その案件だけが組織の中で「議論も評価もされない」ことです。
会議室の空気
過去に関わった案件で、社長の発案によって追加された機能がありました。
現場でその機能を高く評価していた人はほとんどいなかったと思います。
むしろ、逆。
会議も行わず一方的な指示だったので、議論も行われないままスケジュールは組まれ、開発は淡々と進んでいきました。
ところが、雑談の場になると空気が変わります。
「あれ本当に必要かな」
「工数の割に効果が見えないな」
「誰得なんだか分からない」
そんな話は普通に出ていました。
それにもかかわらず、それらの意見が正式な場で議論されることはありませんでした。
誰かが明確に守っているわけではありません。
「社長の企画だから触れるな」と言われるわけでもありません。
それでも会議の空気は変わります。
他の企画なら厳しく数字を追及するのに、その企画だけは深く掘り下げられない。
別の担当者の企画なら改善案や反省点を求められるのに、その企画だけは静かに議題から消えていく。
結果として、機能はリリースされましたが、売上への貢献があったとは言えませんでした。
通常であればその時点で検証が始まります。
ユーザーが使わなかった理由は何か。
導線設計に問題があったのか。
そもそもニーズが存在しなかったのか。
しかし社長案件には、その改善サイクルが回りませんでした。
機能は誰にも評価されないまま、ただそこに存在し続けました。
「指摘できなかった」僕の失敗
ここで正直に書いておきたいのですが、僕自身も声を上げなかった一人です。
雑談では「効果が薄いんじゃないか」と話しながら、社長に対しては黙っていました。
「どうせ言っても変わらない」という諦めと、「波風を立てたくない」という保身が混ざっていたと思います。
後から振り返ると、それは怠慢だったと感じています。
組織の空気が問題だとしても、その空気を構成しているのは自分も含めた一人ひとりです。
誰かが小さな声で「この数字、もう少し深掘りしませんか」と言うだけで、会議の流れは変わったかもしれない。
もちろん変わらなかったかもしれない。
でも、試みることはできました。
その経験から、僕が今意識していることがひとつあります。
「誰が言ったか」ではなく「何を言っているか」で反応するようにする、という当たり前のことを、当たり前にやり続けること。
社長案件だから慎重になる、ではなく、社長案件でも同じ基準で数字と向き合う。
それを自分の中のルールにしています。
一人の現場担当者にできることは限られていますが、少なくとも自分の発言の基準は自分で守れます。
ゲームの品質は、組織の構造が決める
ゲームの面白さを決めているのは、企画力だけではないと思っています。
誰が発言できるのか。
誰が反対できるのか。
誰が修正を決めるのか。
そうした組織の構造そのものが、ゲームの品質に大きな影響を与えています。
面白くないゲームについて語る時、開発者の能力やセンスの話をしがちです。
しかし現場にいると、それだけでは説明できない場面を何度も目にします。
誰も面白いと思っていない。数字も期待通りではない。それでも存在し続ける。
そんな機能を見るたびに、ゲーム開発はクリエイティブの仕事であると同時に、組織運営の仕事でもあるのだと感じます。
そして、組織の問題を「組織のせい」にして終わらせることは、自分にとって何の解決にもならないとも学びました。
できることは小さくても、自分の基準だけは手放さない。
それが、あの社長案件から持ち帰った、僕なりの結論です。
それでは、また!
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