テレビについて㉜伊集院光の「万能解説者」としての力。
クイズ番組で、伊集院光は、知識の上に面白さを必ず重ねてくる凄さを見せて、そのことでただの知識だけでなく知性といえる力まで、見せているような気がしている。
そして、他の出演者の肩書きに「〇〇大卒」といった最終学歴が並ぶのに、伊集院の肩書きは、「〇〇に詳しい」といった微妙なものが多いのは、高校中退だからかもしれないが、「〇〇中卒」もしくは「〇〇高校中退」といった肩書きが普通に並ぶ日は来るのだろうか。
それは、学歴差別がなくなっている時かもしれないけれど、それよりも先に、その肩書きで知性を見せることで、学歴差別の解消が少しでも早まったりはしないだろうか。
100分de名著
この番組で、伊集院は出演者として、約10年、多くの場合、まだ未読の読者として、4回の番組内で「指南役」と言われる研究者たちの解説を聞き、伊集院は独自の視点での質問を向けることで、視聴者にとっては、さらに豊かな見方を可能にしてくれる存在だと、分かってくる。
その上で、本人もこの番組でも学び続けているのが伝わってくる。
最近で、特にその凄さを感じたのは、「エドガー・アラン・ポー」のときだった。
その最終回である4回目。解説をする「指南役」が、エドガー・アラン・ポーは、探偵小説の祖などと言われているが、実は、エドガーも、色々な影響を受けているという話になり、番組の最終盤を迎える。
その時、あと少しの時間しかないはずだけど、伊集院光は、エドガーだけでなく、創作に関わることは、本当はすべてが影響を受け合いながらつながっていく、そんな大きな人類の流れのようなことを、付け加えた。
それは瞬間的に、「指南役」の解説を上回ったような内容にも聞こえたが、伊集院が役回りを踏み越えないようにしながらも、最終回で、まだそこには触れられていないことを確認してから、伝えるべきことだと考え、話しているように思った。
なんだかすごいと感じた。
あちこちオードリー
2022年5月4日の放送で、ゲストは、渋谷凪咲と、伊集院光だった。
このところ、バラエティで、大喜利の力を見せ続けている上に、さらに向上しようとしているアイドルの渋谷凪咲が話をし、そのあとに伊集院光が、自身の経験をもとに、一般的なことにも通じながら、渋谷の話の内容と行為のどこが具体的に優れているか、を付け加えるように話を引き継ぐ場面があった。
渋谷だけの話でも十分に興味深く、しかも笑える内容ではあったのだけど、伊集院の指摘によって、その凄さについて改めて気がつけるように思えた。
「100分de名著」では教養の真ん中についての話をし、「あちこちオードリー」でも視聴者の見方の解像度を上げるようなコメントもできて、いつの間にか、伊集院が「万能解説者」になっていることに気がついた。
「万能」と言いたくなる理由は、すべてのことに専門的な知識を得ることは人間であったら、誰しもが不可能なことではあると思うのだけど、伊集院は、分からないこと、知らないことがあったとしても、その分からなさや知らなさについて、かなり明確に話をした上で、では、どこへ向かって学べばいいのか。それをエンタテーメントとして視聴者に見せてくるように思うからだ。
分からないことを、知らないことを、学ぶことを、見せてくれながら、それが面白さにつながる。
伊集院の知性の質は、そこまで来ているように思う。
総合知
これからの時代に必要な「知」のあり方について、この書籍↑の筆者の辻田真佐憲は、こう書いている。
そのとき頼りになるのは、厳密ながら細分化された専門知というよりも、むしろ評論家が提供するような、ざっくりとした社会の見取り図ではないだろうか。総合知というのは、これのことである。
「あちこちオードリー」の中で、伊集院自身が語っているけれど、高校中退で、最終学歴が中卒であることにコンプレックスがあり、だからこそ学んでいる、ということらしいが、その学ぶ総量と、考える力は、今も学び続けているだけに、レベルと質が上がっているはずだ。
その知性の質は、伊集院の「伝える力」を考えると、これからの「総合知」の担い手の一人になっていくのではないだろうか。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
いいなと思ったら応援しよう!
記事を読んでいただき、ありがとうございました。もし、面白かったり、役に立ったのであれば、サポートをお願いできたら、有り難く思います。より良い文章を書こうとする試みを、続けるための力になります。