「Mr.」のデザインなので、買ったことのないラスクを急いで注文した話。
ぼんやりとTwitterを見ていたら、自分にとっては意外な情報があった。
竹熊健太郎《地球人》
@kentaro666 1月19日
村上隆さんの一番弟子のアーティスト、ミスターさんがデザインしたチョコレートの詰め合わせを贈っていただきました。食べるのが勿体ない。そういえば村上さんも少し前にクッキーをデザインして販売してましたね。
これを見て、「Mr. アート お菓子」で、検索したら、このサイトが見つかった。
あの「Mr.」の作品が、お菓子になっているのは、なんだか、勝手に感慨深かった。
村上隆の弟子
最初に、「Mr.」の作品を見たのは、20年以上前の事になる。
今では、世界的なアーティストになった村上隆の「一番弟子」という表現で、現代美術の世界で、そんな言い方があることも意外だったが、おそらくは、そうとしか言いようのない関係でもあって、そして、「Mr.」は、おそらくは貧しさも含めて、レシートにいわゆる「萌え絵」のような作品を描いていた。村上隆の完成度の高さとは対極のような作品だった。
それは、今では時と場所によっては炎上してしまうような作品でもあるのかもしれないが、見ていて、うそがなく思えた。凄さがあるように思った。
「誰も死なない」
村上隆の経営する会社カイカイキキが、2008年、最初に映画を手がけた時に、監督はMr.が務めた。それが「誰も死なない」だった。
そのストーリーは、Mr.の作品に出てくるような少女が、サバイバルゲームを戦うというシンプルなもので、だから、どれだけMr.の世界観が3次元になるか、というのが、注目のポイントだったと思う。
最初は、見にいく気はなかったのだけど、妻が村上隆のラジオ番組「エフエム芸術道場」で、ミスター(Mr.)の映画の話を毎週聞いていて、そしてそのテーマソングが相当気にいったみたいで、だから、見に行きたいと言い出した。
意外だった。ミスター(Mr.)が女子中学生を主人公にして、その制服にこだわったとか。靴を焼きリンゴの赤にしてくれ、というので相当時間をかけた、とか。ミスターが妥協しないようにと、結局長編映画と同じくらいの予算がかかったとか。それから最初にテーマソングの歌詞を書いたときに、ふざけたものを書いたというので、村上隆にものすごく怒られた、とか。
だから、作品として凄いのではないか、という興味があったようだった。
東京・下北沢の「トリウッド」という短編専門の映画館に行った。
映画が始まり、制服の袖の長さや靴やその完成度というか、3次元への実現度は確かに異常に高そうで、だいたいサバイバルゲームで迷彩は目立たないように、のはずなのに、可愛く見える、という事が、すべてに優先されていて、大人がほとんど出てこない。
他に見たことがないような映画だった。
Mr. “lost” —— めんたーる すけっち もぢふぁいど ——」
これは、2015年の「Mr.」の個展のタイトルで、中野ブロードウエイにある村上隆の運営するHidari Zingaroというギャラリーで開催されていた。
作品は、確かにMr.が描き続けて来た少女の絵だけど、それだけで仕上げているのではなく、穴が開いていたり、焦げていたり、とても重厚な質感があって、さらに、あちこちに文字が書いてあり、内容は生活に密着した一見重いとはいえないもののようだけど、それでも、そのことがリアルさを増していて、作品として、魅力的で、目の離せないものになっていた。
だけど、見続けていると、現実感が薄いというか、夢みたいに見えるのは自分の今のあまりよくない体調や、それに伴う気分もあるのかもしれない、などと思った。
当たり前なのだけど、改めて、作品として、きちんと仕上げられている。それでいて、レシートの裏に描いていた頃の作品の切実さも、忘れていないような感覚になる作品だった。
現代美術家
その後、Mr.は国内ではなく、主に海外で、個展を続けていた。
2021 「日常派」HOW ART MUSEUM(上海)
2019 「A Call To Action」ギメ東洋美術館(パリ)
「ミスターのぶらり哀愁街角散歩」ペロタンギャラリー(パリ)
2018 「みんな僕のこと、僕の絵の内容を勘違いしています。ノスタルジックで可愛らしく、日本のアニメ的で、って、それだけ。そうかもしれないけれど、僕はホントに僕の心に巣食う悪魔から逃げる為に毎日絵を描いてるし、その悪魔は、この僕の血そのものに宿っていて、逃げたいのだけれども逃げれない。仕方がないから絵を描いてるわけです。」ペロタンギャラリー(香港)
2016 「僕の知っている街、東京の夕暮:まるで僕の胸の空洞のようだ」ペロタンギャラリー(ソウル)
プロフィールには、こうした文章がある。
村上隆の弟子として約20年、共に歩んで来た作家。
画風は今現在の日本の住宅地の中にいるかわいい少女をアニメ風、ゲームキャラクター風に描く事に集中し続けている。
Mr.以前にはこうした作家は存在しなかった。
マイナーな、存在だった彼が、いまや、メジャーシーンへと飛び出して来ている。
生意気な表現だけど、自分が知らないだけで、Mr.は、本当に世界的なアーティストになっていた。
注文
竹熊健太郎のツイッターで、期間限定だということを知って、ラスクを買おうと思ったのは、Mr.のパッケージだったからだ。
最初に、そのサイトを見て、ショッピングデザイントートバッグ(合皮製)が、限定100個とはいえ、個人的には外で持ち歩くには勇気が必要そうな商品が、9900円にも関わらず、すでに売り切れていて、少し驚く。
それだけの作家になっている、ということに思えた。
その後に、どの商品を買うかどうか、妻と相談をして、二つのラスクから、6個入りの方を買うことにした。
ラスク
注文をして、2日後に届いた。私は留守だったので、代引きの料金を用意していて、妻に受け取ってもらった。
包装紙も、缶のカバーも、手提げ袋も、本当にMr.のデザインで、しかも、これまで見てきたMr.の作品の質を大事にしているように思え、その上で、缶の表面の作品も、よかった。
さらに、ラスクを包んでいる包装も、さらには、ラスクの中の型紙のようなものにも「Mr.」の文字があり、とても大事にされているように思えた。
Mr.(ミスター)
1969 年キューバ生まれ。
現代美術におけるアニメ美少女モチーフの草分け的存在。
日本の原風景とアニメ、ゲームキャラクター風の少女を描く。
戦後日本の心象風景が描き出された作品は、海外でも高い評価を受け、2019 年にはフランス・ギメ東洋美術館、2021 年には上海・昊美術館で個展開催。
異業界のブランドとのコラボレーション、国内にとどまらず海外での個展開催など精力的に活動している。
このラスクのサイトのプロフィールを見ると、立派なアーティストになったと改めて思えたし、勝手な感慨があった。
ラスクには、チョコがたっぷりとかかっていることで、いわゆるサクサク感よりも、しっとりした感触の方を強く感じ、ちょっと一般のラスクのイメージとは違っていたが、Mr.のデザイン重視で購入したけれど、おいしかった。
録画したドラマを見ながら、このラスクを食べて、コーヒーを飲んで、妻と一緒のおやつの時間は、少し豊かなものになったから、なんだかうれしかった。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。
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