見出し画像

「ちょっとした夢」のような場所

 最初に話を聞いた時は、微妙なおとぎ話のように聞こえていた。

 妻にとっては、同じ街に昔から知っているお医者さんがある。
 確かに、義母が存命中は、妻が小さい子どもの頃に、急に病気になって、そこへ駆け込んで、治してもらった、といった思い出を語っていたこともあって、妻にとっても「〇〇さん」と呼ぶ、なじみの医院だった。

 だけど、私にとっては、今は行かなくなっているところだし、現存しているとはいっても、微妙に分かりにくい場所で、だけど、その話を聞いた時は、その医院の場所が重要になっていた。

 その「〇〇さん」の近くに、そこは住宅ばかりが並んでいるようなところだったのは覚えているのだけど、そこに急に、ショップが集まるようなちょっとおしゃれな場所ができた、と妻に聞いた。

 それは、商業施設とも呼べるのだろうけど、その場所のイメージがわかなかった。

 そんなおしゃれな施設が、ファーストフードが撤退してしまうような小さな街である、うちの近所にできること自体も、なんだかだまされているような気持ちだった。

ケーキ

 妻が、タヌキにばかされているわけではなかったので、そのうちに、そこにあるカフェのようなショップで、ケーキを買ってきてくれた。

 うちにとっては、少し高価だったけれど、おいしかったし、そのケーキは、パッケージも、おしゃれだった気がした。

 そして、後日、妻に頼んで、一緒に出かけた。

 歩いて、数分の場所。確かに「〇〇さん」の医院の隣といって良かった。

 だけど、駅前の商店街からは少し距離があり、明らかに人通りが少なく、周りは住宅地で、隣は空き地に、こつぜんと、テラスという名前がついた商業施設が現れる。

 つくりは、木材を使っていて、その建物のレイアウトも、確かにおしゃれだった。

 カフェも、隣の弁当などを販売しているショップも新しさを感じるし、どちらのスタッフも若かった。

 ただ、その2軒だけが入っていて、あとは8か所ショップが入るスペースがあったのだけど、まだ新しく店舗が入る気配がなかったし、この場所で、販売をしていくのは大変ではないかと思ったし、どうして、この場所に、この商業施設を作ったのか、その狙いは、やっぱり分からなかった。

 ただ、実際に足を運んでも、最初の話を聞いた時のイメージとあまりギャップも起こらず、自分にとっては、「ちょっとした夢の中」の場所のようだった。

チラシ

 それからまた時間が経ち、気がついたら何ヶ月か過ぎたけれど、また行く機会もなく、再び、一人で出かけるとしても、迷わず行けるかどうか自信がなかった。

 自分にとっては、周囲に「〇〇さん」以外に目標がないから、それほど遠い場所ではないのに分かりにくいままで、どこか縁がないところだと思っていた。

 そんなとき、妻が急にチラシを持ってきた。

 マルシェがあるんだけど。

 その単語に心が身構えてしまったけれど、その開催場所が、その「ちょっとした夢のような場所」である商業施設だった。

 次の休みの日だった。

 ただ、そのチラシを手に入れたのが、その施設であって、駅のそばで配るわけでもなくこれじゃ、人は来ないんじゃないか、と妻が心配や不信感と共に話をしていた。

 確かに、この施設の経営母体は、本当にここのショップに人を呼ぶ気持ちがないのでは、といった気持ちになる。

 そういうことも含めて、というよりも、こういうイベントは妻が好きで、しかも、近所といっていい場所で行われるのだから、私も出かけようと思った。

マルシェ

 その日は、天気がよかった。

 柿の木の葉っぱは、随分と落ちている。
 その背景の空は、本当に青い。

 妻と一緒に歩いて、その「ちょっとした夢のような場所」は、そんなに時間がかからないけれど、やっぱり、家からの場所の関係性が、まだ自分の中で明確にならないから、次に一人で来たら、たどり着くことはできるかもしれないけれど、少し迷うかもしれない。

 突然、その商業施設は現れる。

 営業しているのは2軒だけだけど、今日は、店舗が入っていないスペースの前に、「マルシェ」なので、小さい机やハンガーなどで、いろいろなものを売っている。

 みかんが美味しそうだった。

 古着も並んでいて、妻に似合いそうなコートもあり、それは胸にカフェの名前が透かし彫りのように入っているけれど、何しろ値段が分からなかった。

 さらに奥に行くと、多肉植物を売っていたり、食器も販売していた。

 妻は、もう楽しそうだった。

 いろいろと迷って、箸を買った。300円。いつも食器を洗うときに、妻の箸だけ一種類で、しかも、色は渋めで、他のものは明るい色を好むのに、なんで?と聞いたら、うーん、食べるものが安っぽく見えるのが嫌なのかも、と答え、それでも、新しい箸を買った。

 それから、古着をもう一度見て、カフェのスタッフに聞いたら、最初は「6000円」と思っていたコートが、その数字は値段ではなく、「1000円」だったので、買うことにする。

 それから、みかんが美味しそうだったので、一袋500円で購入した。

 そのショップでは、チーズケーキなども扱っていて、美味しそうで、品質や味から言えば、決して高くないのだろうな、と思いながらも、貧乏なうちにとっては、高額で、ちょっと残念な気持ちになった。

 こういうところでも、迷わず、普通に買えるくらいの経済力が欲しい、などと、こんな時には思う。


 それでも、妻が喜んでくれたし、私も家から近い場所で新鮮な気持ちにはなれた。

 帰りは弁当を買って、ささやかなデザートも買った。

 少しのことで、楽しい1日になった。

 よかった。



(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。





#休日のすごし方   #商業施設    #カフェ  
#コート #マルシェ   #みかん   #古着
#買ってよかったもの   #ちょっとした夢のような場所
#近所   #毎日投稿  

いいなと思ったら応援しよう!

おちまこと 記事を読んでいただき、ありがとうございました。もし、面白かったり、役に立ったのであれば、サポートをお願いできたら、有り難く思います。より良い文章を書こうとする試みを、続けるための力になります。