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【エッセイ】遅蜂が飛んだクリスマス

年末になると思い出す。

淡く、切なく、苦い、そんな思い出。

食材を名乗ってnoteを始めるより、ずっと前の話。







ピザは保育園の年長から少しの間、ピアノを習っていた。
「ピアノやりたい」と言って習わせてもらったくせに、全く練習をしなかった。

そこには真っ当な理由があった。

『思ってたより、ムズかった』

忠実に言語化すると、これである。

毎年、年末になるとピアノ教室ではクリスマスの発表会があった。
ピアノを習い始めた初年度。
発表会の課題曲は『ぶんぶんぶん』。
蜂が飛ぶことでお馴染みの曲。

しかし、曲が決まっても全く練習しなかった。
そして、そのまま発表会を『ピアノ初見状態』で迎えた。

当日になって……、
めっちゃ焦った……。

しかも発表は年齢順。
最年少だったのでトップバッター。

散歩を嫌がる犬のような足取りで舞台へ上がる。

客席から大きな拍手を浴びた。

拍手くれた皆様ごめんなさい。ピアノ弾けません。アーメン。
心の中で、思いつく限りの神に謝罪を済ませた。
ついでに、ピアノが上手そうに見える上品な服を着せてきた母親を睨んだ。

その後、ピアノ専用のやけに高い椅子に座り、姿勢を正した。




拍手が鳴り止み無音の時間。




色々な思考が一周して、
なんか逆に弾けるんじゃないかと思い始めた。





ゆっくり弾けば大丈夫。

丁寧に弾けば大丈夫。

出てこい蜂。勝負だ蜂。




覚悟を決めてピアノに触る。













ぶーーーーーん…………♪









ぶーーーーーん…………♪









ぶーーーーーん…………♪












静かな会場を低速の蜂が飛んだ。












新種の蜂。












遅蜂。












昆虫博士もびっくり。












「なんか遅いの見つけました」










もし『めざましテレビ』に取材でもされれば、照れながらインタビューに答えていたかもしれない。












「僕はチョキを出しました」










ついでにノリノリで『めざましジャンケン』もやっていたかもしれない。












アドレナリン全開で演奏を続けた。

多分出てこないはずの黒鍵に何度か触りながら、完奏した。














ぶんぶんぶん(ジャズアレンジ・バラードver)
※個人の感想です。












高い椅子から降りると、顔と体が赤く熱くなった。

後にこの感覚を『羞恥心』と呼ぶことを知った。

僕はお辞儀を雑に済ませ、
ブンブンブンッ
と高速で立ち去った。




(888蜂蜂蜂文字)








……文字数のとこ、やかましかったですか。すみません。おっしゃる通りです。





というわけで、この記事は12月14日(日)に行われた「紅白記事合戦」の参考エッセイです。
皆様ご参加いただきありがとうございました。

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