スプラッシュ!
トイレが詰まった。
カップで何度吸出だしても水が溜まる一方なので、気晴らしに外に出た。
公園の空はどこまでも秋晴れで、鳩が芝を啄んでいる。公園の段差を降りていくと頭上に白い蛍光灯が出てきて、スニーカーでも靴音響く廊下の突き当たりに、呼び鈴のついた扉があった。開けても暗いだけで返事がなく、あたりのネオンが夜のように光っている。歩いていくと中央の壇上にたしかに一人二人いて踊っているのか朧げな姿のうちにへその襞を認めるとそこに手頃な指を突っ込んで、体が吸われる感じがした。体を無重力の速度をもって急にあたりが明らむと砂が目に入った。風が吹いている。どこを見ても砂の景色で右手には少しばかり丘になっている。そうか、俺は砂漠に行ってみたかったのだ。柔らかいものを交互に踏みながら数歩目で底が抜けて毛布の上に深く落ちた。手のひらでまさぐると気持ちがいい。閉め切ったカーテンをすっと引くと夜の豊かな山が眼前をはばんでいる。その中腹からぽつぽつとこちらに信号を出すように赤く動いているのはおそらく登山者だった。目下はまったく夜の闇であまりに凹凸が見えないから田畑だろう。たまに通る車の白い灯りが向かいの登山者よりも小さい。そうだ、俺はタワマンに住みたかったのだ。上機嫌で部屋のスイッチをつけると交差点に立っている。左ハンドルの外車ばかり横切って縁石に紙コップが転がっている。信号が見知らぬ形の青になって足元のコップを蹴るとごつんと押し返す音がして巨岩が土煙を上げながら転がり落ちていった。それが崖から茂みに勢いよく突っ込んでとんちんかんといい音がすると頭上の高いところに無数のライトがついて指揮者がタクトを振っている。壇上の各々の抱えた楽器の光を眺めているとふと池の漣になってアヒルボートが走り抜けていく。岸についてから本当のアヒルになって黄色い足がぺたぺたと翼とともに素晴らしいストライドになっていくと嘴から急に鉄になってごとんと落ちた。そこに秋茜が一匹とまると急に燃え上がってこちらまで一瞬で包むと水の中だった。緩い砂煙をあげながら蛸が歩いている。砂の詰まった吸盤を一つ押すと番号が光ってエレベーターのなかだった。徐々に体が軽くなってきて扉が開くとぶら下がった広背筋が腕の動きとともにたくましい形を変えている。そこにずいっと顔を近づけるとそのまま誰かに押されたように前を見たまま落ちている。緑の豊かな山地のその谷合の淵の色に飛び込んで、水の流れる音がした。
