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他者の人権を蹂躙したい奴は【スルタンのゲーム】をやれ

尊重したい奴も【スルタンのゲーム】をやれ

(はじめに)
一言で言うと【ワンゲームが長いローグライトTRPG】
という感じの作品で、ほぼ完成品のようなDemoが約半年前からリリースされていたもあり、このゲームを好むタイプの人間には既に行き届いていると思われるが、万が一を考えて記事を書いた。「未プレイの方に興味を持ってもらう」ことを目的とした紹介記事となる。


スルタンのゲーム?


 史上最高にて 最も残虐なスルタン(※)が統治する国があった。
 彼は非常にサディスティックで、わがままな王だったが、同時に強大な魔法の力を有していた。彼の機嫌を損ねようものなら、たちまち首が落とされる。そのため、誰も彼に逆らえなかった。

※ スルタン
アラビア語圏で「君主/絶対的な権力者」を指す単語。人名ではない。

 スルタンは有り余る金と権力で およそすべてのことをやり尽くし、邪智暴虐の限りをはたらいていた。気まぐれとわがままで臣下をいたぶり、国を振り回していたスルタンだったが、彼はいよいよ自分の境遇に飽きを感じていた。
 そんな折、スルタンに謁見したいと申し出る一人の女魔術師が現れた。彼女は言うには、「偉大なるスルタンを楽しませることができる、おもしろいゲームがある」と。

 ゲームの内容は単純明快、女魔術師が手に持つ箱からカードを引き、カードが示す命令を7日以内に達成するというもの。そして箱が空になるまでの速さをもって、いかに優れた王であるか競うのだそう。

 カードの種類は「殺戮」「色欲」「征服」「散財」の4種類。また、それぞれに4つのランクがある。一番位の低い「石」のカードは城下に住み着く物乞いや、明日死ぬような孤児から貴族まで、誰を対象としてもいいが、「金」のカードは貴族の中でも最高位の人間を相手にする必要がある。
 至高のスルタンはすぐさま理解した。「このカードはいつもの【戯れ】を何倍も刺激的にするものである」と。

「銅の征服」を手にしたスルタンは 今まで友好的に接していた近隣の小国家に軍を仕向けた。「石の散財」を手にすれば戯れに物乞いに金貨をやった。「銀の色欲」では衆目の前で臣下を強姦し自死に追い込み、「金の殺戮」では兄弟の首を刎ねた。

 指令を達成すると、カードが破られる。するとまた次のカードを引くことができる。使用人も、小貴族も、高官も、彼の親族や妻たちさえも、誰も彼もがみな 一様に顔を青くしてスルタンの引くカードに注目していた。

 そう、このゲームはこの地上で最も賢く、最も偉大で、最も残虐な「至高のスルタン」となり、残虐かつ愉快なゲームに身を投じ、人々の命を弄ぶゲーム……ではない

スルタンとして他人をめちゃくちゃにするパートは、プロローグとして存分に楽しむことができる


スルタンの蛮行を諌めようとした、正義感の強い貴族がいた。狂気に駆られる王の姿に見かねて進言を行う たかだかいち貴族に、スルタンは突然笑いかける。「お前が代わりにやってみればよい」と。

 そう このゲームにおける「あなた」は少しばかりの正義感と勇気を持ち、ゆえに憐れにもスルタンに目を付けられた、ただの一般貴族だ。

 スルタンは予め「カードの破壊のための行為の一切」に恩赦を与えた。たとえあなたが他人を殺害しようが姦通しようが、その罪を問う者はいない。
しかし「あなた」は「偉大なスルタン」ではない。

 理由もなく他人を殺害したくなどない。罪に問われなくとも誰かの恨みを買うことは間違いない。
 妻以外と交わるなど考えたこともない。実行しようものなら、こんな境遇にも関わらず従ってくれた健気な妻は苦しむことだろう。
 土地を侵攻するための兵などない。そもそも何を征服すれば良いのか、想像もつかないのだ。
 散財できるような金もない。必死に稼いだ金貨を、無意味に手放さねばならないことのなんと虚しいことだろうか。

 それでも、7日の間に指令を達成できなければ 容赦無くあなたの首が飛ぶ。スルタンに一切の慈悲はない。
 生きるために、時にはこれまで己に一生懸命尽くしてくれた家来を殺さねばならない。大切な妻をスルタンに捧げなければならない。必死に情報をかき集め、道化を演じねばならない。あなたの憐れな姿を周囲の貴族たちは嘲るだろう。あるいは「カードにかこつけて欲望を満たす愚か者」と軽蔑するだろうか。

身を切るような犠牲を払ってカードを破壊した先には、また地獄のような7日間が待っている。

 そんな究極の状況下で、何ができるだろうか。このゲームから逃げることができるか?カードを引き切りゲームをクリアするか?あるいは至高のスルタンに反旗を翻すか。……果たしてそんなことができるのか?

「スルタンのゲーム」はそういうゲームだ。



スルタンのゲームの注目ポイント


 このゲームにはアクション要素や派手なグラフィックなどはない。基本的には広げられた地図と手元のカードを見比べ、1日の行動を決め、文字を読むことで進行していく。

 あらゆる要素はカードの形で表され、そのカードを適切なイベントに配置する。配置を終え、右下の【END DAY】を選択することで1日の清算が行われる。場合によっては、配置した人物やアイテムの能力値を参照に数個のダイスが振られ、その結果によって分岐が発生する。すべてのイベントを確認し終わると次の日がやってくる。

ダイスロール

 そうして配置パートと清算パートを繰り返してゲームは進行していく。クリア条件を満たすか、主人公が死亡するとゲームが終了する。


  • この「サイクル」の中毒性が非常に高く、ついつい遊び進めてしまう

 配置を終えたら当然その結果を確認したくなる。イベントの進行を見守れば翌日が来る。翌日になれば、新しく発生したイベントや入手したアイテムを確認し…気付けば  また配置を終えている。そもそも数ターン先を見越して人員の配置を行う時もある。「スルタンのゲーム」に終わり時などない
 「カードを一枚破って終わろう」と思っても、カードの破壊には新規カードの入手が伴う。すると頭が「どうすれば最小限の犠牲でこのカードを破棄できるか」を考え出す。その途切れることのない繰り返しだ。

 手持ちのカードを管理し、勝利を目指す。フレーバーの面白さやランダム性から「ローグライトTRPG」に区分されると筆者は感じた。主人公と二人三脚で物語を作っていくような楽しみがあるジャンルだ。

 注意点として、クリアを目指す場合の1ゲームはかなり長くなる10〜15時間かかると思う。カードを破った枚数に応じたポイントが与えられ、それを元手に新規要素をアップグレードしていき、どんどんプレイは簡易になるものの、「ワンゲーム10時間」というスケールは「失敗を恐れずいろいろやってみろ」となかなか言えない長さでもある。(※この点についてはセーブ&ロード機能が実装され遊びやすくなった)


  • しかし このゲームには時間を費やすだけの価値がある

 費やす時間が長いだけ 従者や、イベントで交流する貴族の一人一人に愛着が湧いていく。なんなら残虐な王:スルタンにさえ 愛嬌を感じるかもしれない。エピローグの内容は、似た過程を辿ろうとも 細かい選択の差異により変化がある。プレイヤーのための物語がそこにはある。

 苦楽を共にした従者を置いて船に乗らなければならなかったり、必死に教えを説いた弟子のような青年が死を選ぶのを受け入れなければならない、この痛みは格別だ。もちろん正の方向への喜びもある。このた意見には間違いなく時間分の価値がある。

 当記事は割と、善意に基づいてプレイを進めることを前提に書いているが、どう動いてもいいのがこのゲームの魅力である。なにせカードを破るために行うあらゆる行為は罪に問われることがない。どんなにあなたの行動がつまらなくとも、スルタンはそれを理由にあなたを処刑したりはしない(嫌がらせはしてくるかもしれないが)。

 もしかしたら最初に妻を殺すのが、一番気楽かもしれない。お気に入りの人物こそ、暴行し、殺してみるべきかもしれない。筆者にも、毎回ついつい最大効率を求めて「色欲」→「殺戮」してしまう女性※がいる。どんな女か?プレイすれば自ずとわかってくるだろう。

※ 執筆当初、この女性にあまり思い入れはなかったが、最近気まぐれでイベントを進行させたら「私より美人とされている6人の女性を全員排除して私を国一の美女にして❤︎イベントが発生し 一躍好きな女選手権のトップに立った

 この他、テキストベースのゲームに恥じぬ 豊富な「人ごとの反応の違い」が楽しめるのがこのゲームの魅力でもある。

 この記事は新規プレイヤー獲得を目的に書いたため、その他のキャッチーな「いい点」に触れたい。

  • 雰囲気たっぷりのグラフィックと質の高いテキスト

 このゲームには基本的な立ち絵のグラフィックしかない、が あまり他では見ない独特の画風は作品の雰囲気作りに一役かっている。
 また、スチルがない分 叙情を煽るテキストが際立っている。特に残虐シーンは顕著で、直接的な表現でないながらも非常に艶のあるテキストが楽しめる。


  • 上部のメダルに触れると音が鳴って楽しい

 ステータスを表すメダルなのだが…触ると揺れ、チリンチリンと気持ちのいい音を鳴らす。これに限らず 特にオブジェクトに触れた時の効果音が心地いい。

こいつだ

 筆者は カードを引く時の 箱が擦れる音が好きで、毎度箱の動きにカーソルを合わせて楽しんでいる。



スルタンのゲームのいいキャラたち


 たとえ他の貴族たちから見下されようと、どんな手を使ってでも「スルタンのゲーム」をプレイする人を増やしたいと考えている。そのため 特にお気に入りの登場人物を紹介して、この記事を読んでくれた人の気を引きたい。
 しかし彼らの魅力を伝えようとした結果 ネタバレを含む文章になったので、すこしのネタバレも許せない潔癖な臣下たちは、いますぐ「スルタンのゲーム」をやるといい。

ゲーム本編には犬やその他動物の死亡シーンがあるので苦手な方は一応注意




(1) ベキ夫人

 猫だ。魔法で猫の姿に変えられた人、とかではなく 本当に猫だ。猫、かつ貴族でもある。そのため 通常貴族以外立ち入ることを許されぬ宮廷に平然と侵入し、それを誰も不思議に思わない。賢きベキ夫人は 何食わぬ顔で金貨を土産に持ち帰る。
 邪悪な蛇を捕獲し貴族位を得た猫の子孫か何かで、代々「ベキ夫人」を名乗っているのだそうだ。猫なのでニャアと鳴く。かわいい。

猫なので「任務を果たしました」と鳴く

 …よく汎用台詞を喋っているが、耳で聞こえる声は「ニャア」「ニャオ」「フシャ」なので問題ないだろう。

 夫人は「運命点」というポイントでアンロックすることのできる、追加の従者だ。筆者ははじめてもらった10運命点を握りしめて、迷わず夫人を迎え入れた。夫人は賢い猫であり、大抵のことをこなせるが、武器が持てず、書物が読めない。それは致命的な気もするが、知ったことではない。運命点を稼いで猫との生活を手に入れろ。

 そしてこれはカードに任せて従者に好き放題できるゲームだ。あなたはベキ夫人を殺すこともできるし犯すこともできる。「猫に淫行をはたらくな」と攻略サイトに書いてあった気がしたが知ったことではないし、スルタンも多分こういう主人公を気に入ってくれるはず。

 期待を持たせないために言っておくと、内容は割とあっさりしている。しかし行為後の夫人の様子があまりにも賢く、かわいいため是非その目で見て欲しい。
 
通常 強姦されると主従関係が解消される者が多いが、夫人はそうではない。邪教の教えを解くと逃げ出すので実は色欲行為は満更でもないのかもしれない。

 ちなみに雄猫だ。



(2) イマン

 この地で広く親しまれる、正教・清浄教会と呼称される宗教の 最高司祭だ。長い白髪・金粉を塗した身体・ゴージャスな装飾に反してほぼ無い服など 容姿がとにかくキマっており、筆者はほぼ見た目だけを理由に昇進させ……エピローグで彼が死ぬ姿を見る羽目になった。それも ただ死んだのではなく、自身の死を待ち望んでいたかのような言葉を残していった。

 それ以外のエピローグが予想の範囲内だったために、彼の死はなおさら衝撃だった。

 なぜこんなことになったか?あらためて紐解いていくと イマンが、正教の称える「純粋者」が救いをもたらさないと悟っていること、他者に祝福を与える行為には強烈な痛みが伴うことが描かれている。

 彼から祝福をもらう際に、「金のダイス」というアイテムをもらえる。
 スキルチェックの結果を有利にできるこのダイスが欲しくて 教会に通っていたが、実は 「彼の背中を尖った石で傷つける儀式」を通じて「祝福」を受けていた。(ちゃんと描写されていたのにしっかり読み飛ばしていた)

 正教の最高司祭は、激痛を感じている時のみ 神の言葉を聞くことができる。救いを求める者に祝福をもたらす一方、自らは まともに眠ることもできない痛みを死ぬまで抱えなくてはならない。鎮痛剤を使うことを神は許さない。
 そんな事情も一切知らず、ダイス欲しさに 知らぬうちに彼の背中をズタズタにし、いらぬ苦しみを植え付けていたのだ。

 イマンは「神託」を伝える力に課せられる重すぎる対価や、その他いろいろな理由により、自分の命の価値を軽んじ、己の破滅を望んでいる。そんな彼に生への希望を与えることがプレイヤーにはできる……らしい。筆者はまだ到達していないが、これを読んだ方の中にうまくやれる人がいるかもしれない。



 このゲームでは実に多様な人を殺害できるし、救うことができる。いろいろな人物のいろいろな面を見ることができる。
 二者択一を迫られることも多い。進行上どの周でも殺戮カードの処分に使っていた囚人を気まぐれで(密教の信徒を増やしたくて…)加入させたら 金ランクの貴族まで名を回復することもあった。

 また セオリーとして娼館がカード消費に適しているらしいのだが、筆者は5周やって一度も利用したことがない(極力妻以外に色欲カードを使いたくない)。にもかかわらず多くのイベントが控えているらしい。全てを網羅するのが難しいくらいにイベントは多岐に渡り 登場人物の魅力は一口にとどめることができない。

 例では筆者が特に好きな人物を紹介したが、多くの 魅力的ながらも複雑な人々との交流がゲームの中にある。



 そんな感じだ。

 派手な動きのあるゲームではなく、じっくり取り掛かる「静」のゲームなのでどうしても好みは分かれるが、もし興味があれば 手に取ってもらえると嬉しい。人の尊厳はどこまでも踏みつけられるし、そんな極限の状況の中で可能な限り人道的に生きようと踠くのは苦しくもおもしろい。


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