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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二話(2/25) 緑の森の闇の向こうに

 <これまでのあらすじ> 
 宇宙船メーカークロノス社に勤める新入社員のティリーはダメ営業部員と定評のあるダルダ先輩と『疫病神』が乗る宇宙船フェニックス号でパキ星へ工場視察に出かけることに・・・。(1/25)


 二・再開したくない厄病神との再会

 フェニックス号の居間で一週間ぶりに船主、兼ボディーガード、兼厄病神のレイターと顔を合わせた。

「よ、ティリーさん。休み返上なんだって? また一緒にお仕事できるたぁうれしいねぇ。運命の赤い糸だ」
 先週、あんな大変な目にあったのに、まるで何事も無かったかのような軽い挨拶。相変わらずネクタイが緩んだだらしない格好をしている。

n20レイターウインク

「あなたこそ怪我はもういいの?」
「あん? 怪我? 何のことかな?」
 そのとぼけた様子を見ているとレイターが銃で撃たれたのが夢だったようにすら思えてきた。

 横で聞いていたダルダさんが
「ティリーさん、こいつは『不死鳥のレイター』だ。死んでも生き返る奴だからな。ガハハハハ」
 と大声で笑った。笑い事で済めばいいのだけれど。

 ダルダさんがレイターにたずねた。
「なあ、レイター。今回、俺たちが視察するパキ星の工場は、どうして納期が遅れていると思う?」
 難しい質問だ。現地からの報告ではそれがわからないから、わざわざ足を運ぶのだ。

 しかし、これはボディーガードのレイターにではなくアシスタントであるわたしに聞くべき質問じゃないだろうか。
「簡単簡単。あんたんとこの工場をでかくする計画のせいさ」
 レイターが無責任に答える。わたしは強い口調で反論した。

n11ティリー少し怒る

「適当なこと言わないで。拡張計画について反対運動があるのは確かだけど、現地でちゃんと対策を打っています。それよりも現地労働者との賃金交渉がうまくいっていないことが問題だ、って調査部は分析しているわ。パキ星は労働組合が強いのよ」

 きのうベルに渡された資料はすべて読んで頭に入れてある。ピンチヒッターだけどちゃんと仕事の内容を理解していることをダルダさんにアピールしておかなくては。
「へえ、そうなんだ」
 と感心したように言ったのはレイターではなくダルダさんだった。冗談なのか何なのかよくわからず、思わずダルダさんの顔を見つめる。

「いやあ、まだちゃんと資料読んでないんだよ。ガハハハハ」
 頭をかくその表情から察するに冗談ではなさそうだ。ダメ部員というレッテルが頭をよぎる。
「レイターに話を聞けばいいかと思ってさ」
「え?」
 思わず眉をひそめる。その言い訳は言い訳になっていない。
「情報部の資料より、こいつの話のほうが信用できるし」
 その理屈はさらにわからない。
「ったく、あんたはいっつもそうだ。ちゃんとカネ払えよ」
 そう言ってレイターがダルダさんに説明を始めた。

「お宅の会社が買収を決めたパキ星の工場拡張予定地に、きのこのパキールの自生地が含まれてるってことぐらいは知ってるよな?」
「ああ、そこは読んだ」
 ダルダさんがうなづいた。

 レイターが言ったことは資料の冒頭に書いてあった。それが拡張工事に対する反対運動の最大の理由。パキールというのは現地の特産品のきのこで、パキ人にとってなくてはならないほどの好物だということだった。特に自然発生地で採れる天然物は人気がある。

「だから、パキールを植え変えることで合意したんでしょ。すでに植え変えは始まっていて反対運動も収束したとあったわ」
 情報部の資料にはちゃんと結論まで載っていた。

「さすが、俺のティリーさん。ダルさんと違ってよ~くお勉強してるねぇ」
 どうしてこの人は人の神経を逆なでするような言い方をするのだろう。
「その呼び方止めてください。とにかくその話は収まってるわ」
「確かに一旦は収まった。けど、その後、植え変えたパキールが移転先で次々と枯れてんだ」
「え?」
 そんな情報は資料のどこにも無かった。

「反対運動はどうなってるんだ?」
 ダルダさんが聞いた。
「もちろん、またまた盛り上がっちゃって連日ストライキさ。だから、納期に遅れがでてんだよ」
 筋は通っているけれどにわかには信じ難い。
「レイターの言うとおりだとしたら、どうしてそれが情報部の資料に載っていないわけ?」
「そりゃ現地が情報を上げてねぇんだろ。あそこは政府が通信回線握ってるから外から情報得にくいし」
「じゃあどうしてあなたは知ってるのよ?」
「んぱっ」
 変な顔をしてわたしの質問をはぐらかした。
「いずれにしてもパキールの自生地を工場予定地にしたあんたの会社の失敗さ。パキ星政府は企業を誘致したくておいしいことばっかり並べ立てた。甘く見過ぎたのさ」
「な、こいつの情報はためになるだろ」
 ダルダさんがウインクした。

「情報料は別料金。振込先はわかってるよな」
「ガハハハ。俺が払わなかったことがあるかよ」
 

n70大笑い

 ダルダさんがわたしに笑いながら話しかけた。

「俺の実家は農家でね、土は大事なんだよ。俺も子供の頃、土の入れ替えをよく手伝わさせられてね。それが嫌で俺は家を継ぐのを弟に任せてサラリーマンの世界に入ったんだ」
「そうなんですか」

 レイターが鼻で笑いながら言った。
「ふふふん。農家ねぇ。商社も手がける年商百億の農家ねぇ」
 年商百億?
「ダルさんは今も毎年一億リルの小遣いを親からもらってんだぜ」
 一億リルの小遣い?
「しょうがないだろ、実家の節税対策なんだから」
「ま、あんたにとっちゃ、サラリーマンの仕事は趣味だからな」
 仕事は趣味?
「ノンノン。趣味じゃないさ。人生に必要なロマンとスリルの一部だよ。ガハハハハ」

 ロマンとスリル。聞くたびに脱力しそうになる。ダルダさんがダメ営業部員と言われる所以がわかった。仕事に対する緊張感がまるでないのだ。
 わたしはため息をついた。                 (3)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」