銀河フェニックス物語<少年編>第十四話 暗黒星雲の観艦式(15)
アーサーがコルバにケーブルを切断するよう命令したが、自信がない、という。困ったその時だった。
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<少年編>第十四話「暗黒星雲の観艦式」
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「おい、アーサー。コルバならできるぜ。俺がナビゲートする」
突然、レイターの声が混線してきた。個別回線だ。僕は声を潜めて聞いた。
「お前、どこにいるんだ?」
「どこって、コルバの後部ナビ席だよ」

どうして僕の許可なしに乗っているのか。問いただしたい気持ちを抑え込む。事態への対処優先だ。
「アーサー、俺が乗ってることは秘密で頼むぜ」
厚かましいにも程がある。そんなことできるか。と言おうとした時、レイターが続けた。
「アレックのためにも」
前線で戦闘機のスクランブル発進に未成年のアルバイトを乗せていたことが明らかになれば、アレック艦長の責任問題になる。
「とりあえずお前の搭乗は伏すこととする」
「よっしゃ。三人の約束だぜぃ」
レイターのナビゲーション能力は優秀だ。ケーブルを切断する作戦の成功確率は上がる。だが、釘を刺しておかなくては。
「フチチ機もアリオロン機も爆発させてはいけない。これは絶対だ」
「わあってるさ。あと少しで鮫ノ口に入っちまうから、さっさと命令が欲しかったんだ。さあ、コルバやるぞ」
「無理だよぉ」
コルバ訓練生が泣きそうな声になっている。まずい。
「無理はするな。殿下を死なせては駄目だ。連れ去られても捕虜であれば返還手続きという手立てがある」
通信機が切れた。レイターの奴、わざと切ったな。
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コルバは茫然としながら領空侵犯機を追っていた。
どうしたらいいのだろう。やらなくちゃいけないことはわかっている。ケーブルの切断だ。でも、自信がない。
レイターの声が耳元で聞こえる。
「いいかコルバ、よく聞けよ。相手は二機が絡まっていて速度は出てねぇ。捕獲ケーブルの径は普段の練習の的より大きい。しかも距離は近けぇ。あんたの腕ならはずすことはねぇ。大丈夫だ」
言われなくても頭ではわかっていた。訓練ならはずさない。でも、これは実戦だ。撃った結果がどうなるか、どんな不測の事態が起こるかわからない。
「彼は王子なんだよ。もし、僕が誤って殺してしまったら、ど、どうなるんだ」

「そんなことアーサーが考えりゃいいんだよ」
「君は食堂のアルバイトで、何の責任もないから言えるんだ。僕に課せられた命令は爆発させないってことなんだから」
「じゃあ、あんたは、あいつを助けることができるのに見逃して、捕虜にしちまうってのか」
「坊ちゃんも言っていたじゃないか。死なせたらダメだって。でも、捕虜なら救いがあるんだ」
「アーサーの奴、甘ぇよ。捕虜を殺さねぇってのはあいつの考えだ。保証はねぇし、敵に捕まったら王子は自害するかも知れねぇぜ。救えるのはコルバ、あんたしかいねぇんだよ。できることをやらねぇで王子が死んだら、あんた、一生後悔して眠れなくなるぜ」
まるで経験したことがあるかのような、リアリティを持った説得だった。けれど。
「……」
緊張で息ができない。こんな重要な判断は僕にはできない。僕がしちゃいけないんだ。
母さんの言う通りだった。
「軍隊って危険だろ?」
不安げな顔で母さんが僕を見ている。
「大きな海戦は終わったし、母さんも知ってる通り僕は慎重で安全操縦だから危険じゃないさ」
自分の言葉が空虚に感じる。入隊するにあたり、もちろん僕だって考えた。戦闘になれば戦うしかない。怪我するかも知れないし、死ぬかもしれない。とはいえ民間だって事故は起きる。その時はその時だ、って。
でも、味方を殺してしまうかもしれない。僕の行動によって政治的な問題になるかもしれない。こんな状況は想像していなかった。そもそも「三食寝床付き」につられたのだ。今考えても詮無いことが重くのしかかって指が震える。
(16)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」