銀河フェニックス物語<少年編> 流通の星の空の下(3)
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「なぁ、ザブ、菓子買ってくれよぉ。さっき、魚屋で負けてもらった金があるだろ。あ、最新型宇宙船のプラモデルも欲しい」
レイターはおもちゃ屋のショーウインドウに張り付いて、動かなくなった。
「アーサーは、何か欲しいものはあるか?」
ザブリートさんに聞かれて困った。
「いえ、特にありません」
「いいよなぁ、何でも手に入る坊ちゃんは」

レイターの言葉にムッとする。
物が欲しいとは思わない。
だが、正直に言えば、僕は今、この時間と空間を楽しんでいた。
ここの空気は僕の知的好奇心を刺激する。
人々の欲が、形となって目の前に提示されている。その観察は興味が尽きない。
「ザブ、俺は本物の宇宙船が欲しい」
「カネを貯めて自分で買え。そのためのバイトだろ」
「とりあえず、今はアイスだ」
レイターはウインクしながら、アイスクリームを販売するワゴンを指さした。
「お前は欲しいものばっかりだな。しょうがない、きょうのお駄賃だ」
「ヤッター!」
レイターは大喜びでアイス売りの行列に並んだ。
市場を歩き回り、少し汗をかいた身体に、アイスクリームの甘さと冷たさは魅力的だった。
「アーサー、お前はどうする? おごってやるぜ」
ザブリートさんにおごってもらう理由はない。
「任務中ですから、結構です」
「うめぇ」
レイターは三段積みにしたアイスを、うれしそうに食べながら歩いている。
僕はこれまで街中で食べ歩きをしたことはない。確かに屋外で食べるアイスはおいしそうに見えた。
「あんたには、やらねぇよ」
レイターは妙に鋭いところがある。

「いらないよ。任務中だ」
自分の返事がいらだった声なことに驚いた。
ザブリートさんが僕に話しかけた。
「お前たちって、どう見ても同い年には見えないよな」
よく言われる。身長差が三十センチあるのだから。
「あいつを見習えとは言わないが、アーサー、お前もう少し、甘え上手になった方がいいぞ。お前だって、まだ十二歳なんだから」
まだ十二歳。
そんな風に人から言われたのは初めてだった。
高知能のインタレス人を母に持つ僕は、幼いころからあらゆる分野の専門家と議論を戦わせることができた。
そして、昨年入学した士官学校を、実技含めてトップの成績で卒業した。
ザブリートさんは軍属だ。僕と直接の上下関係にない。
だからだろうか、僕を少尉ではなくアーサー・トライムス個人として接してくれる。
他人に甘えるというのは、どうすればいいのだろう?
文献で読んだ心理学が、自分の中に血肉化されていないのを感じる。
僕にはまるで想像ができなかった。
*
コンテナ船に戻ると、購入した食料の積み込みはとっくに終わっていた。
帰りもレイターは、「後ろの操縦席に座る」とコンテナに乗り込んだ。
僕は牽引船を出発させた。
アレクサンドリア号には十五分ぐらいで着くだろう。
大気圏を抜けて少しした時だった。
後ろから来る、黒い船の様子がおかしいことに気づいた。この船に追い越しをかけようと猛スピードで迫ってくる。
「何だか変だぞ」
助手席のザブリートさんが言うのと同時に、レイターの顔がモニターに映った。
「おい、こいつらひったくりだ」

ひったくり?
ガシーン。
衝撃が走った。 (4)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」