銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(22) S1を制す者は星空を制す
<第十一話のあらすじ>
ティリーはミラーボールの落下を仕組んだのがエース自身だと打ち明けられて動揺していた。一方、エースの代わりにS1プライムに替え玉出場したレイターは、ギーラルを抜きトップで飛んでいた。(1)~(21)
プラッタを操縦するレイターの耳にアーサーの無線が入った。
「今どこにいる?」
「どこ、ってサーキットのコース。エースの代わりにプラッタに乗ってんだよ」
アーサーが一瞬、無言になる。
「エースが襲撃されたという情報が入ったから変だと思っていた。やっぱりお前が乗っていたのか。わかった。必ず優勝してくれ」
「あんたに応援されると、嫌な気分だ。冗談だ、とか言い出すんだろ」

「冗談ではない。我々が探している汚職リストのフィルムが優勝賞品の中に隠されていることがわかった」
「あに?」
「殺された内偵捜査員はリストを副賞のアルファーダイヤモンドの裏に張り付けたんだ。だから死んでも優勝してくれ」
アルファーダイヤモンド。
50カラットのピンクダイヤか。時価二億リルだ。銀河総合警備がレベルAの超弩級警備に指定してしまいこんでいる。
「表彰式までは主催者すら触れねぇぞ」
「隠し場所に気付いたアリオロンはギーラル社内に入手ルートを確保した」
エースがいなければギーラルが優勝する。
「それでエースを狙ったってわけかよ」
「ああ、アリオロンはマフィアの黒蛇にエースの襲撃を依頼したんだ」
黒蛇はS1賭博で儲けようとしてエースを狙ったんじゃなく、襲う依頼を受けたついでにギーラル社へ張り込んだと。
「お前がエースの代わりに出場してくれたおかげで再度アリオロンが動きはじめた。敵のアジトが割れそうだ」
敵さんはギーラルを優勝させたい、ってことは・・・。嫌な予感がする。
「おい、次はこの船が狙われるんじゃねぇのか」
「そうだろうな」
「策はあんのかよ?」
「お前に将軍家を受け取りとする生命保険をかけておいた」
「は?」
「冗談だ」
レイターは思いっきり無線を切った。
チッ。レイターは軽く舌打ちした。
あいつ何て言った? 死んでも優勝しろか。
一瞬、後悔が胸をよぎる。
そうと知っていればこんなに早く勝負をかけなかった。最後に抜いて逆転すりゃ良かった。
ま、しょうがねぇな。俺は銀河一の操縦士だ。
*
第三チェックポイントの前にアクセス反射圏がある。
デジタル機能が失われ、通信も遮断される。
テレビの中継もここを飛ぶ三分間は途切れる。
アクセス反射圏へ入ると同時に、レイターはアナログ操縦に切り替えた。
ナビゲーションシステムも切れたが、予選の航行ログは見たからルートはわかる。
点在する小惑星を目視でよける。
敵さんが狙ってくるにゃ格好の場所だな。
目の端に影が映った。
反射的に操縦桿を動かす。
何かが右翼をかすめる。飛行に影響なし。
「おいでなすったか」
目で確認する。
岩石弾。
敵は本気だ。事故に見せかけて撃ち落とす気だ。
周回遅れの船が反転し、行く手をはばむように接近してきた。
脅しに急接近をかけてみる。
敵は一歩も引かず、再度、岩石弾を撃ち込んできた。
「この動きはレーサーじゃねぇな。戦闘機乗りだ」
こっちは丸腰。
だが、プラッタは銀河で一番速い船だ。
「相手になるぜ。俺様を誰だと思ってんだ。銀河一の操縦士だぜ」
* *
クロノスのピットの裏の控え室でティリーはイライラしながらモニターを見ていた。
「早く、レイターの映像を映して」
トップのレイターがアクセス反射圏に入ったため、番組は後続のレースを伝えている。
通信も途切れていてピットもレイターの様子が一切わからない。

隣に座るエースが眉間にしわを寄せながら言った。
「アクセス反射圏は予選でもコースを放送していない。彼は初見で飛んでいるのか・・・」
「でも、予選の航行ログは見てました」
レイターは数字の羅列にしか見えない航行ログを見てはニタニタ嬉しそうに笑っている人なのだ。何とかするはず。
待つことしかできないピットの空気が張り詰めている。
メロン監督が渋い顔で聞いた。
「突入から何秒だ?」
「百七十八、百七十九・・・」
タイムキーパーが百八十をカウントした。
プラッタが姿を見せない。
レイターの腕なら三分を楽に切れるるはずなのに。一体、どうしたちゃったのよ、銀河一の操縦士は。
メロン監督が絞り出すような声で呟く。
「何かあったな」
二位のギーラル社は一分遅れでアクセス反射圏に入った。
ウウウウウウ。
緊急サイレンが鳴った。
「アクセス反射圏で事故発生、事故発生。救助隊が向かいます」
「事故だと?!」
ピット内の緊張が高まる。
レイター!! 無事でいて。
優勝しなくていいから、戻ってきて。わたしは祈った。 (23)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」