銀河フェニックス物語<出会い編> 第九話(6) 風の設計士団って何者よ?
<第九話のあらすじ>
レイターとチャムールが宇宙船の防護シールドについて一晩中計算したが解にたどり着くにはまだ時間がかかるという。レイターは将軍家の御曹司で天才軍師のアーサーを呼び出した。(1)~(5)
「頼む、これ計算してくれ」
アーサーさんは超天才で確かに奥の手ではあるけれど、この計算のために午前四時に起こすのはいくら何でも非常識だ。
「ご、ごめんなさい」
チャムールが恐縮している。
「いいから、いいから、こいつのことは気にしねぇで」
レイターが手を振りながら言った。
そう言われてもアーサーさんは将軍家の跡取りで有名人というか天上人だ。わたしも申し訳ない気持ちになる。
迷惑そうな顔をしていたアーサーさんがメールを開いた瞬間表情が変わった。
「これは、面白いな」

「だろ。この方程式の解を軍の新型船の開発に利用していいからさ」
「誰が考えたんだ。この式のセンスはおまえじゃない」
「ちっ、よくわかったな」
「知的財産権が発生するから、勝手に開発利用するわけにいかないだろ。今から、解を送る」
「あ、きた」
即座に数字がびっしり書き込まれた返信メールが届いた。
レイターが五時間かかると言った方程式を一瞬で解いてしまった。
本当にこの人は天才だ。権威あるキンドレール賞が取れるんじゃないだろうか。
チャムールが呆然とした顔で返信メールを見つめている。
「これを考えたのはクロノス社の開発担当で、ティリーさんの同期のチャムール・スレンドバーグさんだ」
アーサーさんがチャムールに微笑みかけた。
「この発想は素晴らしいです。感嘆に値します」
「め、滅相もございません」
チャムールはモニターに向かってあわてて頭を下げた。
「すぐに特許申請しようぜ。この解は『風の設計士団』も使いたいはずだ。あいつらが使えば使うほど儲かるぜ」

レイターはにやりと笑った。
*
フェニックス号からの帰り際、チャムールがレイターに質問した。
「あなたはどうして設計士にならなかったの?」
「あん? 俺は『銀河一の操縦士』だぜ。他人の船を造ることには興味がねぇんだ。自分の船のために構造理論が知りたくてじいさんに教えてもらったけどな。『銀河一の設計士』に聞きゃ間違いねぇと思ってさ」
一呼吸置いてチャムールが聞いた。

「私は『銀河一の設計士』になれるかしら?」
「チャムールさんの考える銀河一の設計士ってどんな設計士だい? 売れる船を造るのかい?」
チャムールは恥ずかしそうに答えた。
「・・・私の作った船で幸せを運びたいの」
「いいじゃん。世界にゃアーサーみたいに『風の設計士団』より頭のいい奴がいる。『銀河一の設計士』になるのは大変だぜ。でも、あんたには理想がある。だったらどこからでも進めるさ。俺はどこにいても『銀河一の操縦士』であることを意識してる」
「居場所の問題ではないということね。私、格好いいことを言って、会社から逃げようとしていた。期待がプレッシャーになっていたの。理想の船に向けて、クロノスの環境は決して悪くない。今いる所で一歩ずつ始めてみるわ」
決意のこもった声だった。
二人のやりとりを聞いていてわたしは自分が恥ずかしくなった。
わたしは『銀河一の営業マン』になりたいなんて思ったこともないし、今もそこまでの意識はない。
でも、とりあえず自分のやれることからやってみようと思った。
あした、会社で課長に提案してみよう。『グラード』の販売方法を。 (最終回)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」