たぬきをひろってみたら、1カ月で3級から2級になった話

こんばんは~
シアンです。

一門以外にも流浪の将棋指導をちょこちょこやっているのですが、一名昇級されたので、今回はそのお話をさせていただきます。

野良タヌキを拾ってきた話

裏でこっそり教えていたのは、飛車タヌキさんという方です。

FFさんだったので、時々アドバイスしたりくらいの関係の方だったのですが、何のきっかけか、お試しで1カ月間指導することになったのが6月の頭でした。

好奇心に負けて安請け合いというか、申し出ちゃった出張武器商人の図

簡単に飛車タヌキさんを紹介すると、ウォーズ3級の棋力で、居飛車振り飛車問わず指せるオールラウンダータイプのプレイヤーです。
3級に昇級したのは昨年12月ということで、まだまだ伸び盛りですが、自分なりに閉塞感があったようです。

なんでこんなことを言い始めたのかというと、私のFFさんの中でもかなり熱心で、だからこそ悔しがり方が尋常じゃなかったので、その熱意に手を差し伸べてしまったのだと思います。
とはいえ、失礼ながら飛車タヌキさんの将棋がどんなものか、ふんわりしたイメージしか持っていませんでした。
当初のイメージとしては、居飛車も振り飛車も3級レベルで器用に指す人くらいでした。

強いじゃないかと驚かされた話

1カ月教えますとなってから、まず最初に取り掛かったのが2つ。
ひとつは現状のヒアリング。
飛車タヌキさん自身の課題認識や環境など、いろんな角度から切り込んでみました。

もうひとつが将棋の癖の洗い出しでした。
とりあえずXに転がっている飛車タヌキさんの棋譜を片っ端から並べてみました。
これが手間なんですけど、人それぞれどこに課題があるのか違いますし、個人の課題とは別に棋力ごとにクリアしないといけない壁が存在するので、それらを鑑みながら優先順位をつけていかないとタスクに圧し潰されかねません。

というわけで棋譜を並べてみると、結構しっかりした将棋を指してるじゃないかと驚かされました。
最近の級位者は強いと、よく成るほどラジオメンバーで普及指導員の北斗さんと駄弁っているのですが、そういう意味じゃなくって普通に強いなあという印象です。
それじゃあ何故停滞しているのか。仮説として器用貧乏が祟っているのではないかと考えて、そこからのアプローチを始めていきます。

器用貧乏を本格派にする話

とりあえず棋譜を見て思ったのは、エース戦法を持っていないということでした。
それなら格上に勝てる、同格と負けないエース戦法を作っていこうということで、戦型ポートフォリオを一緒に作るところからスタートしました。

やることはシンプルに

ウォーズやクエストが主戦場で、指導開始当初は棋桜もリリース前でしたので、基本は切れ負けでの対局です。持ち時間に追われる展開が散見されました。
これに対して、指す戦型を限定し、経験値を蓄積することで時間消費を抑えるための施策です。
これに関しては、弟子の夜桜めぐむ昇段時の成功体験が活きていますね。
終盤で最善に近い手がパッと見えるタイプと、考えると深く見えるタイプがいますが、夜桜めぐむも飛車タヌキさんも後者でしたので、同じ路線で行きました。

またこれは級位者あるあるですが、囲う前に攻め始める、プロの真似をして玉が不安定な形で攻め合うきらいが、飛車タヌキさんにもあったのでこれも事前に解消することを取り決めます。

角換わりの79玉型を的確に咎める棋力があれば、少なくとも五段以上は間違いないと私は思っています。
言い方は悪いですが、五段以上相手に飛車タヌキさんが挑んだ際に68玉か79玉かは些細な問題です。どっちみち分が悪いのだから、そういう相手は想定せず、純粋な棋理に従って深く囲うほうが今の棋力帯では勝ちやすくなるという見立てです。

実際、飛車タヌキさんの負けた棋譜を見ると、玉の薄さや不安定さゆえに流れ弾に被弾して、そこからの受け間違いで急転直下というのもありました。
なのであえて流行形は追わないことにしました。
級位者の方はこの考え方を真似してみてもいいかもしれませんね。

横軸で取り組みを決めた話

指す戦法が決まったところで、日々の勉強内容をクリアにしていきます。
日にも依りますが、飛車タヌキさんが将棋に費やせる時間が概ね1時間程度ということでしたので、限られた時間の中でやれる練習メニューを組んでいきました。

ひとまず決めたのは棋書読みについてです。
定跡書は様々な戦法のものを持ってらっしゃいましたが、中終盤の本はほとんどが詰将棋だけという状態でした。
ここから逆算するに、序盤知識で3級まで上がってきた方なんだと推測できました。
つまりは中終盤が未開拓でブルーオーシャンだったので、ここを強化すべく終盤の手筋本を購入していただきました。

最初にはっきり、「序盤は勉強しなくて大丈夫です」と伝えたのも大きかったと思います。
飛車タヌキさん含めて、序盤型として成長してきた人は、序盤の勉強に悪い意味で縋りがちになることが多いです。
言うならば、戦法を変えて序盤を打破しようと考えがちということです。
ただ根本的に停滞しているということは、今までのやり方が通用していないのと同義なので、ここで変化をつけたいと考えました。
飛車タヌキさんは最初に述べた通り、3級レベルで卒なくいろんな戦法を指せる器用さがあります。しかしそれが中盤では裏目に出ていると感じる棋譜もいくつかありました。
中盤の手の見え方が非常に良いと感じる反面、飛車交換ひとつ取っても、エルモなら互角以上だが金無双だと自玉が不安定で少しやりにくいみたいな順に踏み込むような感じでした。。
なので、序盤においては復習も含めて入ってきた知識がノイズになり得る可能性があったので、あえて序盤の勉強は飛車タヌキさんの手元から切り離しました。

さて、本の中身にもどっていきますが、私自身は軽く立ち読みした程度ですが、先述の北斗さんが推していた書籍ですね。
流し読みでもいい本だと思ったのと、手軽さが今回にマッチしているのも選んだ理由です。
1時間という時間の中でも対局時間は確保したかったので、座学の時間は半分以内に抑えたかったというのがあります。また社会人あるあるで、休憩時間の30分を勉強に充てるケースも多いということなので、インスタントな問題集がハマると思い、こちらの本を導入しました。

1問あたり1分考慮、2分で解説を読んだり、分岐を読んだりといった具合で、10問30分を一日のノルマにしました。
この際、勉強のためなので、わからなければ潔く答えを見て力にすればOKというのも事前に伝えています。
答えがわからないと負けた気がすることがありますが、嫌な気持ちを引きずらずに棋力向上のためと割り切って向き合うことが一番大事ですね。
実はこの話も成るほどラジオメンバーで普及指導員のONOさんの受け売りです。
結構タメになる話してるんですよ、あのラジオ笑。

30分問題集に挑んだら、残り時間は実戦&振り返りにしました。
振り返りは上達には必須というくらい、自分の課題を映す鏡です。
ただ、振り返りを全局やるとなると対局数が減ってしまいますし、日々のモチベーションにも影響を及ぼしかねません。
ですので気分次第で裁量を変えつつ、最低1局は振り返ると決めました。

タヌキが手応えを感じ始めた話

最初の1週間を終えてみて、五分に近い星取りながら内容の良い対局ができていました。
飛車タヌキさん自身も手応えを感じていたようで、対局数も維持しつつ問題集も概ね予定通りに進めることができ、好調な出だしです。
やはりこういう取り組みは最初が肝心で、どうしてもグダグダしてしまうと手を止めてしまったり、嫌々やり続けて効果が薄くなったりといったこともあり得るので、ハードルを下げることも考えたのですが、幸いにも杞憂に終わりました。

とはいえまだまだ昇級まで足りない箇所がありました。それが形勢判断と指し手のチグハグさです。
形勢判断能力は決して1級や2級に劣るものではありませんでしたので、振り返りでは、チグハグな指し手をどういった状況で指してしまったのかをエクセルにまとめるように指示しました。手間だったはずですが、これも欠かさずやってくれたのが、後々大きかったですね。
あとは棋譜添削しながら私の方で細かく言語化していきます。

また幸いにも、指し手の言語化と飛車タヌキさんの相性がかなり良かったです。
この言語化の作業を楽しみながらやってくれていたので、振り返りがおざなりにならなかったのでしょう。
合わないなら合わないなりに代案を用意するつもりでしたが、走るレールが明瞭に見えてきたので、半ば昇級は既定路線くらいに感じていました。

求める振り返りのレベルを上げたら、タヌキがついてきた話

2週目に突入したあたりで、戦型ポートフォリオに若干変化がありました。
角道を止める居飛車に対して、従来の右四間から変更して、急戦矢倉を用いるようにしました。
これは私の指示ではなく、飛車タヌキさん自身が選んだものです。

ここではすぐに戦法を変える癖だけはつけさせてはいけないので、あえて否定的な話から入りました。先の通り、戦法をコロコロ変えるのは他の定跡がノイズになりかねません。
私の意図を組んでくれたのか、変える代わりに最後までやり切ると仰っていただき、以降のブレの可能性を消すという目的は果たされました。
本気で昇級を目指すなら、戦法は極力固定したいところですが、相居飛車での角換わり腰掛銀79玉型と対振り飛車でのエルモ急戦が2軸として機能していたので、このくらいのマイナーチェンジは本来なら許容範囲です。
ただここで言いたいのは、右四間でも急戦矢倉でも有力なので、どちらでもいいと言えばそうなのですが、安易に戦法を変化させない方が大事だという話です。
これが6月15日頃だったと思います。

またここらで振り返りの精度を上げるように求めました。
具体的に言えば、不意の攻めで自玉が倒れた際の表現として、相手の攻めを過小評価していたのか、自玉の堅さを過大評価していたのかを分別して書くようにするなど、似たニュアンスを排除させました。
定型で済ませることが常態化すると、振り返り事態が雑になりがちです。
気を張って振り返りをし、それを提出すると心がけてくれたことで、数字が変化を雄弁に語ってくれるようになりました。

月間棋力が1級台に突入。言ってしまえば2級の中位層並みの戦績を上げたことになります。
3級でくすぶり続けていたところから約3週間の取り組みで、これだけ成果がでたのは更なるモチベーションになったことでしょう。

タヌキが2級になった話

6月27日

爆速タヌキ爆☆誕

ウォーズとは違うプラットフォームですが、ウォーズ以上に厳しいと噂の棋桜で2級になりました。
私としてはポテンシャルと努力の方向性を整えただけで、持っていた出力自体は非常に高いものでしたので、遅かれ早かれ上がるだろうと思っていましたが、さすがに棋桜2級は早すぎます笑

ということで見事に1カ月教えますで、そのまま昇級されたので、めでたしめでたしって感じですね。

長々と書き連ねましたが、結局伝えたいのは「おめでとう!」の一言です。
この記事も飛車タヌキさんへ向けて、裏で私がこういうことを考えて課題を出していたんだよっていうフィードバックのつもりです。
あとはネットで見える指導実績になればラッキーみたいなのも少なからずあります。

弟子3名とも弟子入りから割と早めのスパンで昇級昇段してくれましたが、これだけ顕著に結果が出たのは私のほうでも望外です。
ひとまず、飛車タヌキさんの強化月間はここでおしまいですが、ご本人からも同じように取り組みたいので、引き続き援護射撃を仰せつかっているので、応援していく所存です。
一門ではありませんが、私が教えたことで結果が出て、これまで以上に将棋を好きになり、真摯に取り組んでくださる方がいらっしゃることは誇りになります。

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