車なしで高齢者と箱根を楽しむ旅ハック
先月の終わり、母と姉と三人で箱根へ一泊二日で出かけたのだけど、知らなくて難儀したこととか、偶然知って便利だったサービスとかがいくつかあるので、書き残しておこうと思う。「旅ハック」もどうよと思ったけど「豆知識」か「生活の知恵」か「Tips」か、いろいろ迷って、一番仰々しくないのを選んだつもり。
箱根ではタクシーは予約できないものと思え
箱根は山なので、電車やバスを降りてからの歩きがなかなか大変だ。Googleが「徒歩6分」と教えてきても「急勾配を歩き続けて6分」だったりする。そもそも登山鉄道からして、あれは確かに楽しいし観光体験のうちだけど、週末ひどく混むので高齢の母を乗せるのはためらわれる。したがって、自家用車がない、レンタカーを借りようにも運転するメンバーがいない、そんな箱根旅行ではタクシーを使い倒すしかない。
どっこい、箱根エリアでは基本的にタクシーの予約を受け付けていない。2~3時間から貸し切るタイプの観光タクシーは予約できるけれど、駅からホテルまでなどの通常の移動に使うタクシーは予約できない。界隈のベテラン運転手さんいわく「予約を受けると30分前から他のお客さんを乗せられず不経済なので、会社として受けなくなった」そうだ。

わたしたちは箱根湯本駅からホテルまで30分近く乗るつもりだったし、往復なら1万円を超えるし、ありがたがってもらえたりしないかなと思ったが甘かった。外国人観光客なら箱根から東京ディズニーリゾートとか、箱根から河口湖とか、県をまたぐレベルの移動をまるまるタクシーでまかなったりする。わたしたちは清水の舞台から飛び降りて1万円払うつもりでも、エリア内の移動なんか、タクシー会社にはたいしてうれしいものでもないのだ。
なので、箱根ではタクシー乗り場に並ぶか、配車の電話を都度かけるか。配車アプリは「GO」がいちおうサービスエリアではあるけれど、雨が降るとほぼ配車不能だと思っておいたほうがいい。

なお、箱根湯本駅には案内係さん付き、屋根付きのタクシー乗り場があるものの、あれは公共の乗り場ではなく、特定のタクシー会社が設けた乗り場であることは知っておきたい(←知らなかった)。他の会社のタクシーはあの乗り場を使えないので、タクシー降り場で客を降ろすタクシーを待ったほうが早くつかまる可能性がある。乗り場と降り場は道路を隔てているけれど近いので、様子を見て選ぶのがいいかも。
パッキング当日ぎりぎり勢は箱根キャリー一択
都市部の出張や旅行だと、まずはその日泊まるホテルにチェックインして(時間が早いなら荷物だけ預けて)仕事なり観光なりに向かうという選択があるけど、箱根では移動がまあまあ大変なので、移動する機会をなるべく減らしたいところだ。コインロッカーや手荷物預かり所はどんどん活用したい。
わたしたちが今回利用したのは、箱根湯本駅で12時までに預けた荷物を15時以降に宿泊先へ届けてくれる「箱根キャリーサービス」。
これは便利。これは偉大。自宅から宿泊先へ荷物を送る手もあるけれど、パッキングを当日の朝に大あわてでやる勢には厳しいので、こちら一択だ。オンライン予約しておいて、当日は受付カウンターで予約番号や予約名を言って荷物を渡せばOK。事務所が改札内にあるので、改札を抜けるときには身軽になっているのがなんともいい。

予約時に荷物の個数や大きさも選ぶ。普通サイズ1000円、大型サイズ2500円。決済もネットで完了。わたしは姉の荷物がアホみたいにかさむはずと踏んで、預ける荷物は3つ、うち1つは「大型」と予約しておいたのだが、スタッフさんが「これ全部、普通サイズですよ」と言ってくれて、お会計が1500円安くなった。こちらの申告ミスなのにお店が手間をかけて、売り上げが減るような修正をしてくれるということに、ジーンとしてしまった。
ツインの一人利用、早期に予約が叶うことも
そのような“ジーンと事案”は今回もうひとつあった。うちは2年前に父が亡くなって家族旅行のメンバーは三人になり、ホテルはツインの部屋を三人利用するか、ツインの部屋とシングルの部屋を1室ずつ取るかになっている。ただ、瀟洒なホテルはたいがいシングルルームが少ない。ツインの一人利用も可能は可能だけど、日が迫っても予約が埋まらなかった場合に初めて一人客からの予約受付を開始するところが多い。
うちの場合、ツインの三人利用だと母が「夜中に気軽にトイレに行けるようにエキストラベッド(または布団)のほうがいい」と言ってくる。われわれ中年が大きなベッドに寝て、老親がなんか低いところで寝ている。それはなんだかだし、わたしたちだってトイレに立つこともある。そもそも親とは就寝のタイミングも違う。2室あったほうがやっぱりいい。とはいえ、ツイン一人利用の予約開始を待っていたら旅行の予定が立たない。
そこで今回は、ホテルに電話をかけて事情というか意向を説明して、実際には一人利用ではあるけれど、二人利用と同じ料金を支払う条件で、ツインの客室を今すぐ予約させてくれるようにお願いしてみた(姉とわたしのツインルームは普通にサイトから予約)。ホテルは了解してくれて、さらに、室料は予約受付中の料金(二人利用前提)から変えられないが、食事代を一人分差し引くとも言ってくれた。ジーン。


姉とわたしの分はネット決済。母の分だけチェックアウト時に現地精算となったが、この精算時にさらに大幅なディスカウントがあった。わたしたちが泊まった日は偶然、満室にならなかったそうで、最終的には一人利用の予約も“一人利用前提の料金で”受け付けを開始したから、そちらの料金に準じたということだった。早くから予約できたメリットを考えたら、直前予約と同じところまで引き下げてもらうなんて、そんなこといいんですか!?という感じだ。驚いた。



この話は、もしかしたらホテルにとってあんまり広まってほしくない話かもしれない。予約サイトでの解禁前からツインの一人利用の予約を受けてもらえるんだってさ、電話したらいいんだってさ、となると現場に負荷がかかりそうだ。それに、今回はツインの空きが他にもあったということで料金を下げてもらったわけだけど、ツインと一口にいっても部屋タイプはいろいろで、母の予約した部屋が空いていればその部屋に泊まりたかった二人客がいたかもしれない。ホテルにとって機会損失の可能性がある。
だから、言わないほうがいいことかもしれないんだけど、感激したので言ってしまう。ありがとうございました。お金がいくら出ていくかというより、贅沢すぎる泊まり方にならなかったことで、母がとても喜んでいた。

ロマンスカーは窓が大きいGSEか青いMSEか
都内から箱根の往復には、小田急ロマンスカーを使った。乗車日の1カ月前の午前10時からオンラインで予約・購入できて確実に座れるし移動中に充電もできる。電子チケットなので予約した人のスマホがあればよく、紙チケットのように紛失するとか忘れるとかの心配がない(特急料金だけの決済なので、運賃分のきっぷかICカードは必要)。
ロマンスカーは車両が4種類あるので、余裕があれば選びたいところ。今回、わたしたちは発着の時刻を優先して選び、結果的に行きがEXE、帰りがGSEになった。
4種類の車両を就役順に並べると次の通りで、やっぱり新しいほうがより快適ではあるけれど、EXEも十分よかった。
1996年 EXE(30000形)
2008年 MSE(60000形)
2017年 EXEα(30000形)
2018年 GSE(70000形)
GSEは窓が大きくて眺望がいいので、観光気分を盛り上げてくれる。前と後ろには展望席。週末はすぐ売り切れるけど平日なら結構買える。今回は乗れなかったけど、個人的にオススメしたいのはMSEだ。あの青いロマンスカー。内装があえてレトロっぽくて、照明も電球色のものを採用している。タナダユキ監督の映画『ロマンス』(2015年公開)に使われているのも、この青ロマンスカーだ。
あと、新宿駅までタクシーで行く場合、小田急電鉄用の「タクシー降り場」があるので、素直にそこで降りるべし――という、いわずもがなのことを恥をしのんで書いておく。
あの朝、わたしたちが乗ったタクシーの運転手さんがなぜか「もう少し先で降りますか」と言ってきて、わたしはその言い方から、“本当はここで降りるルールだけど、少し先にホームまでの距離がより短いスポットがある”かのような匂いを勝手にかぎ取ってしまい、「じゃあ、その先で」と答えてしまった。何もなかった。雨ざらしでかつ混み合った空間があるだけだった。雨に濡れて余計な距離を歩きながら、何者かに良心を試されて罰を受けた気になる。母と姉も、罪がないのに濡れていた。
ニコライ・バーグマン箱根ガーデンズはいいぞ
あとは本当にハックというほどのことでは全然ないけど、ニコライ・バーグマン箱根ガーデンズは植物が美しいだけでなく小鳥の声がすてきだし園内を歩いていて気持ちがいいし座るところもたくさんあるしカフェやショップや受付のスタッフさんがみんな感じがいいので、箱根あとどこ行こうかねと迷った場合はここを旅程に入れてほしい。

ただ、公式マップにある各所名称と現地から受けるイメージがやや異なるので、回るときに注意したほうがいいかもしれない。「ウェルカムパビリオン」の名前からわたしはインフォメーションセンターのようなものを想起したけど、実際には植物が美しく咲く中にベンチがあるオシャレな四阿のような空間だった。「ショップパビリオン」はお土産が買えそうな印象だけど、実際には園芸ショップの様相。園のオリジナルグッズなどは「カフェパビリオン」の一角に陳列されている。


ポーラ美術館はめちゃくちゃいいぞ
箱根には魅力的な美術館がたくさんあって、わたしのお気に入りはポーラ美術館だ。現在は「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」展を開催している。開幕2日目の日曜日に訪ねると、混雑が思ったほどではなく、とても見やすかった。上野エリアの美術館などとはアクセスの難易度が違うせいなのか、ゴッホ自身の作品だけでなく、そのインパクトを思わせる世界中の各年代の作品が集まっているのがかえってゴッホリアン(?)には物足りない印象になるのか。でも、わたしは堪能したし、この絵を一人で見ていいんだ、とうれしくなる瞬間があった。


タクシー運転手さんによれば、初日はすさまじい混雑だったということなので、美術展は2日目以降の早めの日程を狙うのがいいのだなと思った。



ポーラ美術館は屋外の遊歩道がまた、歩いていて深呼吸したくなる心地よさ。館内のレストラン「RESTAURANT Array」はちょっとラグジュアリーな雰囲気があっていい感じ。シーフードカレーは絶品で、歩き疲れた身体にものすごく沁みる。レトルト化されてミュージアムショップで販売してもいる。レストランはネットから席だけ予約しておくこともできるので、混みそうな日はランチの時間をまず決めて、前後どう回るか組み立てるのがいいかも。


この美術館に“遠い”以外の欠点はないけど、1階ロビーから展示室のある地下へ下りるエスカレーターの手前で毎回チケットの提示を求められるので、半券を取り出しやすいところに入れておくのが、ここで時間を過ごすときのちょっとしたコツといえばコツかもしれない。ゴッホを見て、いったん屋外を見て、常設展やガンダーを見て、といった具合に動き回る場合は特に。


