ペンタックス6x7-重いハッセル500C/Mの有効な治療薬
6x6から1x6だけフィルムサイズが増えることに興味があり、地元のカメラ屋さんで、幾つかのレンズとまとめてペンタックス6x7を約$1000ドルぐらいで、昨年ふらっと購入して、約1年が経過した。
使用した感想
その大きさと重さには十分な覚悟をもって、バケペンにのぞんだが、撮影してみると、なんの事なく、非常に楽しく撮影できた。往年のアラーキーさんのように、あれほど素早くシャッター巻き上げをしてどんどんとは撮れないものの、迫力のあるシャッター音も撮影体験を高めてくれる。また、付属されていた木製グリップもいい感じで重さを和らげてくれる。これがあるから、ストラップから肩にかかる重さを、間欠的に分散し、鉄アレイの如く木製グリップを保持し、負担を和らげることができる。できれば、カメラの背面から見て右側にグリップが欲しかったが、なぜか左側であるので、いつものように左手でピントを合わせようとすると持ち替えが必要で少しテンポは崩れることとなる。このカメラの場合、右手でピントを合わせるとスムーズにシャッターを押せる。のちのモデルではグリップは右側になったようである。それにしても、この無骨な木製グリップは、他社の経年変化でベタベタしてくる樹脂製パーツとは異なり、素晴らしい素材の選択である。しかし、フィルム装填がしにくい。本体左側でフィルムロールを固定する時に、フィルムと本体の上下の軸受けを一致させる必要があるが、このフィルムのスペースが狭く、上端の軸受けは回転させられない上に見にくいので、特に悪天候時などは難渋する。ハッセルは、フィルムを固定する片方が持ち上がり、もう片方の出っ張りを直接見て一致させやすいので、バケペンでももう一歩工夫が欲しかったところである。そもそも左側の軸受を団子の串刺し状にする必要はあるのだろうか?ハッセルには、フィルムを送る側はこの構造はない。ローライフレックス スタンダードでは、送り出し側は軸もなくサッとおいているだけである。一方、ファインダー倍率は90%でとても見やすくピントも合わせやすい。
レンズと写り
底面には、前オーナーのバッテリー交換日1989年5月というシールが貼ってあるので、それを信じるとすると、それ以来約30年以上も使われていなかったことになると思う。それほどの使用感もなく、カメラ屋での整備を経ると、快適に撮影することができているのは素晴らしいことである。楽しみにして現像結果を見ると、評判の105ミリレンズの淡いやわらかな写りもいいが、200ミリレンズの迫力満点のレトロな写りにはいつも驚かされる。75ミリレンズも135ミリマクロレンズも付属してきたが、まだ撮影しておらず、どのような絵になるか楽しみである。6x7のフィルムサイズも、6x6と比べて2枚減って10枚しか撮れないのは、残念であるが、逆にそれぞれの写真自体は、1x6だけ増えたとは思えないほどインパクトが大きく、一番いいのは、ポジフィルムで撮影して、ライトボックスで透過して直接みることだ思う。35ミリフィルムでは、ちまちまとルーペで見ていたものが、肉眼でゆったりとみることができるのは素晴らしい。欲を言えば、これをプロジェクターで見れたら素晴らしいと思うが、6x7用のマウントは販売されていたようなので、6x7に対応したプロジェクターはかつて販売されていたのだろうか?
手ぶれ
あれだけ大きなシャッター音がするので、手ブレが気になったが、心配な時は、無理をせずにミラーアップしてから撮影し、望遠レンズはレンズをしっかりと支えれば、手持ちでなんとか撮影できている。本体とレンズでかなりの重さにもなるので、できれば三脚は持ち運びたくないというのが人の情けである。
思わぬ副作用
さらに想定していなかった、一番良かった『副作用』は、その後、ハッセル500C/Mの手持ちが格段に軽く感じられるようになり、ハッセルの使用頻度が増えたこと。人間の脳などいい加減なもので、数回バケペンを使うだけで、相対的な判断で、ハッセルは軽いと誤認してしまうようだ。もう体力も落ちてきてハッセルの500C/Mなど重くて持てず手放そうかといわれる前に、試しにバケペンを少し手持ちで撮影されることをお勧めする。1x6だけ撮影面積を増やすために、あれだけの重量増加が見合うかは疑問である。それとも、ハッセルの方が、(ゼンザブロニカなどと比べると)かなり努力して小型化と軽量化を果たしたということだろうか?この疑問は、後ほど、マミヤRB67を持ったときにも考えたことである。
冬季の使用
あと一つ注意点がある。氷点下摂氏20度ほどの冬に撮影に出かけると、途中で中途半端なシャッター音の後、シャッターが降りなくなった。言われてみれば当たり前だが、電池式による電子シャッター機ゆえ、冬季の使用には制限がある。ただし、これも、解除する方法があるので、貴重な一枚を無駄にするのは忍びないが、カメラが暖まればまた使えることとなるので、たいした問題ではない。その後、摂氏0度の時に持ち出しても問題なく作動した。
67レンズやハッセルとの関係
バケペンというだけで、詳細はわからないまま購入したが、この値段、写り、撮影体験からすると買って良かったと思うし、人気が出るのもわかる気がする。レンズが手頃なのも嬉しく、最長800ミリの望遠レンズも作っていたようである。75mm/2.8や90mm/2.8なども気にならないと言えば嘘になるが、前者は価格がすごく、そこまでの覚悟はバケペンに対して全くないので、手は出さないと思う。そういえば、手元には、ハッセルVマウントに改造された(フォーカルプレーン機用)ペンタックス67 120mm/3.5のソフトレンズがあるが、ハッセルVシステム(フランジバック74.9mm)とペンタックス67(85mm)のフランジバックの関係上、そのような改造がなされたようで、逆に、世の中は広く、ハッセルVレンズを受け付ける「少し削った」改造ペンタックス67まであり、無限遠も出て、一部のレンズを除いてけられないそうである。
デジタル全盛期での中判フィルム
かつてフィルムカメラしかなかった時代には、フィルムサイズを拡大することは意味があったと思うが、このデジタル時代にセンサーサイズをフルサイズから増やすことにどこまで意味があるかは、疑問な点は多い。個人的には、フルサイズのソニーA7R3に比べて、44x33のハッセルX2Dやもう少し大きいハッセルH5Dなどは、撮影後のデジタル処理のしやすさでも最終的な写真でも雲泥の差があると思うが、今後のデジタル技術の発展で変化するかもしれない。6x6や6x7のデジタルセンサーがないので、少し話が飛躍するが、デジタル中判よりサイズとしては大きい6x6よりさらに大きな6x7フィルムをデジタルに取り込んでパソコン画面で見て、どこまでの違いがあるかは、いろいろな意見があるだろうが、私はパソコン画面でも携帯画面でも、6x6や6x7フィルムを取り込んだデジタル写真は、同じレンズで撮ったデジタルフルサイズ機の写真よりもとてもいいと思う。レンズの差か、フィルム現像という追加のプロセスの”フィルター効果”か、それともフィルムへの根拠なき贔屓か、理由はわからない。もちろん、これらのスキャンした画像に高解像度を求めて極端にクルップしてもうまくいかないだろう。また、先ほど述べたように、必ずしも6x7フィルムをデジタル化する必要性はなく、純粋なアナログを貫いた印刷が現実的でない現在では、アナログ時代のままポジフィルムを直接贅沢に眺めたり、プロジェクターで鑑賞するのもいいだろう。
まとめ
ハッセルブラッドVシステムの使用回数が10とすると、バケペンの使用は0.5か1といったところであろう。フィルムのサイズと写りとレンズの手頃さは評価するが、重さと大きさに起因する心理的抵抗は根強い。まず、旅行には持って行かないし、持ち出すとしても、車から降りてすぐの撮影だったり、持ち歩いたりしたとしても、フィルムを1−2本とったあと、バックパック型のカバンに入れて背負い、他の軽いカメラで軽快に撮ることになる。しかし、バケペンはぎりぎりなんとか持ち出して撮影しようと思える上限の重さとサイズではないかと思う。マミヤRB67まで来ると、もう2度と持ち出して撮影しようとは思わない。ハッセルが重いと泣き言をいっているハッセルユーザーに少し喝を入れる意味だけでも、存在価値は十分にあると思う。それにしても、6x6より広いサイズの中判写真は少し横に伸びただけですごいと実感したし、6x7の他の機材や6x8や6x9やパノラマ写真、大判写真にも興味が広がることとなった。

