AIと「仕様」を作るときにやってはいけないこと/やるべきこと【実践編】
AIに「仕様書を書いて」と頼んだことがある人は多いと思う。
そして多くの場合、こう感じたはずだ。
それっぽいけど、実装に使えない。
現場の事情がまったく反映されていない。
なぜこの設計なのか分からない。
結論から言うと、これはAIの性能不足ではない。
使い方を間違えているだけだ。
やってはいけないこと①
AIに「最初から正解の仕様」を書かせる
これは一番多い失敗。
「◯◯の仕様書を作ってください」と丸投げすると、
AIはもっともらしく、一般論的で、破綻しやすい仕様を書いてくる。
理由は単純で、AIは現場を知らないからだ。
過去にどこで詰まったか。
どこが壊れやすかったか。
どこをユーザーに触らせると事故が起きるか。
こうした“痛み”は、人間の側にしかない。
やってはいけないこと②
AIを「設計者」にしてしまう
AIは設計者にはなれない。
設計とは、
トレードオフを選び、
何かを捨て、
その結果に責任を持つことだからだ。
AIは案を出すことはできる。
整理もできる。
話を広げることもできる。
でも、「どれを選ぶか」は決められない。
ここを勘違いすると、
誰も責任を取らない仕様が出来上がる。
やってはいけないこと③
完成形から話し始める
意外と多いのがこのパターン。
「最終的に、こういうシステムを作りたい」
から仕様作りを始めるケースだ。
一見、合理的に見えるが、落とし穴がある。
途中の思考プロセスが抜け落ちる。
なぜその選択をしたのかが残らない。
あとから変更すると、全体が崩れる。
AIは完成形を渡されると、
そこに辻褄を合わせるように仕様を埋めにいく。
結果として、
理由のない設計、修正に弱い構成、引き継げない仕様になりやすい。
ここからが本題だ。
やるべきこと①
仕様の前に「体験」を話す
AIと仕様を作るとき、
最初に渡すべきなのは要件定義ではない。
過去の体験や違和感だ。
たとえば、
昔、複数の処理を並列で走らせたことがある。
そのとき、どこまで進んでいるか分からなくなった。
再実行したら二重処理が起きた。
こうした話は、AIにとって設計の素材になる。
完成形ではなく、
「なぜ困ったのか」を渡すのがポイントだ。
やるべきこと②
AIには「整理役」をやらせる
この段階でAIに期待する役割はひとつだけ。
「それ、構造にするとこうですよね?」
と言わせること。
処理を状態に分ける。
流れとして整理する。
名前を付ける。
ここでAIは非常に優秀だ。
ただし、決断はさせない。
やるべきこと③
判断は人間が全部やる(ここが一番難しい)
これは正論だが、実際には難しい。
なぜなら、AIの提案は
たいてい「悪くない」からだ。
それっぽい。
一応、筋は通っている。
すぐ使えそうに見える。
だからこそ、境界が曖昧になる。
ひとつの判断基準はこれだ。
「この設計、失敗したら自分は説明できるか?」
説明できないなら、それはAIに決めさせている。
説明できるなら、それは自分の判断だ。
AIの案を、
採用するのか、捨てるのかを即決する。
ここを曖昧にしないことが重要になる。
やるべきこと④
仕様は“一気に完成させない”
良い仕様は、一度で完成しない。
少し話す。
整理させる。
違和感を指摘する。
もう一度、構造を見る。
この往復の中で、
仕様が立ち上がってくる。
AIとの対話ログは、
そのまま設計の履歴になる。
人間とAIの役割分担(文章で覚える)
判断するのは人間。
責任を持つのも人間。
AIに任せていいのは、
頭の中にある考えを整理し、言語化し、広げることまで。
考えるのは人間。
可視化するのがAI。
この線を越えさせない。
なぜこのやり方がAI時代に強いのか
このやり方で作った仕様は、
修正に強く、
属人化しにくく、
別の案件にも転用でき、
「なぜそうなったか」がきちんと残る。
完成した仕様書よりも、
作り方そのものが資産になる。
まとめ
AIと仕様を作るとは、
AIに答えを出させることではない。
考えている自分の頭を、
AIを使って可視化し、
何度も眺めて、修正することだ。
仕様は「書くもの」ではなく、
対話の中で育てるもの。
この前提を持つだけで、
AIは一気に“使える相棒”になる。
補足
このやり方は、
業務フロー設計、AIエージェント設計、業務自動化全般にそのまま使える。
「AIに何をさせるか」よりも、
**「どこで人間が決めるか」**を先に決める。
それだけで、失敗率は大きく下がる。
