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連杯 | シロクマ文芸部

毎日、公園で水を飲んでいる女性がいた。

とにかく飲む。

飲んではボトルを空にし、また新しいボトルを買う。

三日目で私は確信した。

河童だ。

人間に化けているが間違いない。

あの異常な水分摂取量。

河童以外に説明がつかない。

四日目。

私はついに話しかけた。

「失礼ですが」

「はい?」

「河童ですよね」

女性はしばらく黙った。

「違います」

「隠さなくていいんです」

「違います」

「大丈夫です。偏見はありません」

「そういう問題ではありません」

「皿はどこですか」

「ありません」

「今日は隠している?」

「今日はも何もありません」

「では、きゅうりはお好きですか」

女性は額を押さえた。

「好きですけど」

「ほら」

「何がですか」

「河童はきゅうりが好きだと聞きます」

「人間も好きです」

「確かに」

私は少し考えた。

「泳ぎは得意ですか」

「普通です」

「川を見ると落ち着くとか」

「たぶん普通の範囲で」

「相撲は」

「取りません」

「なるほど」

「何がなるほどなんですか」

女性はため息をついた。

それからペットボトルの水をひと口飲んだ。

「そもそも、なぜ河童だと思ったんですか」

「水です」

「水」

「毎日飲んでいるでしょう」

「人間ですから」

「でも飲みすぎです」

「医者に一日二リットル飲めと言われてまして」

「そうでしたか」

私は肩を落とした。

河童ではなかった。

少し残念だった。

「ところで」

彼女が言う。

「もし私が河童だったらどうしたんですか」

「きゅうりを持ってきます」

彼女は吹き出した。

「じゃあ次は持ってきてください」

「河童じゃないんでしょう」

「念のためです」



彼女が去ったあと、

ベンチの上にスマホが残されていた。

追いかけようとして画面が光る。

通知が表示された。

【河童の会 城東支部】

私は思わず笑った。

最後まで付き合ってくれる人だ。

そう思いながらスマホを拾った。

するともう1件通知が来た。

【本日の変身解除時刻 18:30】


おしまい



小牧幸助さんのシロクマ文芸部に初参加です。
よろしくお願いいたします。


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