戴冠式
肩にずしっと重たく乗ったそれを宥める為
指を交互に縄を編むよう絡ませて腕を空に投げた
関節が軋む音と痛みと
じわっと血が巡る感覚と少しだけの快感と
閉じたままだった目を少し開くと
天気の違いくらいにしか気付けないいつもの空が遠くに見える
無彩色の雲を満遍なく敷き詰めた空は少し寒い
角度をずらして視界に入れた枝の輪郭が若干滲んでいる
身体を傾げたら指と枝の境界は薄く柔らかく溶け合った
数メートル先にある枝と自身の体から伸びる指と
遠くにある筈の空が全て一枚の紙に描かれている
ぼやっと混ざったそれらから指を解き腕も返してもらう
細く濃く青い草葉が紐の代わりに靴を結び沈黙している
もしかしたら長い時間ここに立っているのかもしれない
さっきまで溶け合っていたそこの木も
かつては曖昧なだけの隣人だったのかもしれない
街に隙間無く植えられた木は森林を作り
巨大なカーテンがより一層濃い影を作っている
「キレイなお花、少し私にちょうだい」
木の根元に立つ女がこちらを見上げている
静かな木から花を摘みしかしもう痛みも無い
小さな鼻歌を背景に添えて
コールに応えたように空が明るくなった頃の戴冠式
女王はその手の中の花冠を細い枝に掛けた
緩やかに溶けぼやけていた輪郭は正確に近い形を取り戻し
森は枯れそこに隣人はもう居なかった
或いは去ったのは私なのか
降りた重荷の行方と共にもうわからない
