『最前線物語』サミュエル・フラー~人物のアップを多用した戦場の緊迫感~
第一次大戦に生き残った軍曹が、第二次世界対戦にも参加し、4人の若い米軍兵士を率いてヨーロッパ戦線の最前線を転戦する姿を描く。ジャーナリストでもあったサミュエル・フラー監督が従軍の体験をもとに脚本から制作。サミュエル・フラーは、ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』(1965)に出演し、「映画とは何か?」との質問に「映画とは、戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。要するに、エモーションだ」と答えたことは有名。そんなサミュエル・フラーの戦争映画だ。
戦場の迫力ある生々しい描写の中で、鬼軍曹のリー・マービンをはじめ、4人の兵士たちの顔のアップが何度も挿入され、過酷な戦場の緊張感を人間ドラマとして描いている。感傷的に兵士たちをヒーローのように偶像化するわけではなく、ただただ生と死のギリギリのせめぎ合いを描いている。北アフリカ戦線、シチリア島、ノルマンディー上陸作戦、フランス領内、ベルギー、チェコスロバキアの最前線を移動していきながら、各エピソードが連なっている。
軍曹は、第一次世界大戦が終了していたのを知らずに、「戦争は終わった」と近づいてきたドイツ兵を終戦の数時間後に殺してしまった。軍曹が所属していたのが陸軍第一歩兵師団、通称「The Big Red One(原題)」で、第二次世界大戦においても軍曹はこの部隊に所属し、多くの新兵を失いながら、グリフ(マーク・ハミル)、ザブ(ロバート・キャラダイン)、ビンチ(ボビー・ディ・シッコ)、ジョンソン(ケリー・ワード)の4人が奇跡的に生き残り転戦していく。
シチリア島では、母親の遺体を運ぶ少年と出会い、遺体の埋葬を手伝う条件でドイツ軍の砲撃陣地を教えてもらい、働く農婦たちの陰に隠れているドイツ軍の偽装工作を見破って勝利する。また、フランスでも全滅して死んだと思われた兵士たち中に隠れていたドイツ軍兵士たちを見つけ出す。また、ドイツ軍から逃げてきた出産寸前の女性を助けて、戦車の中で出産を手伝う場面もある。ベルギーでは、精神障害者施設に隠れているドイツ兵たちのなかで、患者に扮している女性スパイの手引きで突入する。チェコスロバキアの戦場では親衛隊によって虐殺され焼却された収容者たちの姿も映し出される。怒りにまかせて銃を撃ち続ける兵士。そして最後は最初と同じように、戦争が終わっているにも拘わらず刺してしまった兵士を、4時間前に終結したことを知って軍曹は必死で助ける場面もある。数時間の違いによって、殺していい敵は殺してはいけない人間になる不条理。軍曹は戦場で容赦なく先兵隊を送り出し、決められた番号の順番に兵士は突撃して次々と死んでいく。突撃する順番によって生死が左右される運命の皮肉。誰もが死に直面している現場。そんな戦場の理不尽で過酷な状況を、人物たちの顔と表情を見せることによって描いている。
1980年製作/アメリカ
原題または英題:The Big Red One
配給:日本ヘラルド映画
監督・脚本:サミュエル・フラー
製作:ジーン・コーマン
撮影:アダム・グリーンバーグ
音楽:ダナ・カプロフ
キャスト:リー・マービン、マーク・ハミル、ロバート・キャラダイン、ボビー・ディ・シッコ、ケリー・ワード、ステファーヌ・オードラン
