『季節のはざまで』ダニエル・シュミット~「永遠」を手に入れた天国の住人たち~
引用写真©︎ HORS SAISON: 1992 T&C Film AG
『ラ・パロマ』(1974)や『ヘカテ』(1982)など官能的な美しい映画を作るスイスの映画監督ダニエル・シュミットの1992年の作品。「スイス山中の古いホテルで育った男性が少年時代を回想する姿を、シュミット監督自身の記憶を反映させながらつづったドラマ。」(映画.comより)
過去と現在を行き来するような幻想的な「時間」を扱うのが好きなダニエル・シュミット。本作は少年時代に過ごした古いホテルを訪ねながら少年時代を回想するいたってシンプルな作りだ。どこか郷愁を誘うフェリーニの映画のようでもある。取り壊される寸前の古い山の中のホテル。「懐かしい女性の声」に導かれて、当時のホテルの売店にいた女性ガブリエルを訪ね、「海の見える部屋」にある「ミッキーマウス」の漫画雑誌35年分のコレクションを探してきてくれる?とヴァランタン(サミー・フレイ)は言われる。少年時代のヴァランタンはいつも売店のガブリエルからその漫画雑誌を楽しみに受け取っていた。この山の中にあるはずのホテルに、なぜ「海の見える部屋」があったのかは謎だ。客室としては使われていなかったようだ。そして最後に「ミッキーマウス」の雑誌があった部屋の窓が開くと「幻想の海」が見えて映画は終わるのだ。山の中のホテルの窓から見える「海」とは幻想そのものであるし、過去の物語もまた幻想であり、それは映画そのものとも言える。
教授のマジックや読心術や催眠術などの奇妙なホテルでのイベント、祖母におねだりして聞かせてくれる数々の昔話、祖父がレストランの給仕としてテーブルの物の配置にこだわる大女優に仕えた話、娼婦のような美しいセクシーな女性に憧れ、テニスコーチとの情事を覗き見した思い出、いつも災害について語る2人の女性客や文句ばかり言う母と息子などの個性的な常連客たち、カトリックに入信しようとして祖母に教会から連れ戻されたこと、そして歌姫イングリット・カーフェンのドイツ語の古い歌、家族はハイ・シーズンは屋根裏部屋、そして季節ごとに荷物を持って階段を降りて部屋を移動したという思い出の数々・・・。そんなエピソードが次から次へと描かれていく。死者たちが天国で「永遠」を過ごすということに恐怖を感じた少年時代のエピソードも出てくる。まさにこのホテルの思い出の数々の登場人物たちは、天国にいる住人たちだ。スイス山中にひっそりと取り壊される時を待っているホテルで、幻想の「海」を見ながら、天国にいる「永遠」の時間を手に入れた死者たちを思い出す物語とも言える。『ラ・パロマ』にも出ていたイングリット・カーフェンの歌声がなんとも魅力的だ。
1992年製作/92分/スイス・ドイツ・フランス合作
原題または英題:Hors saison
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
監督:ダニエル・シュミット
製作:マルセル・ホーン
脚本:ダニエル・シュミット、マルタン・シュテール
撮影:レナート・ベルタ
美術:ラウール・ヒメネス
編集:ダニエラ・ロデレール
音楽:ペール・ラーベン
キャスト:サミー・フレイ、カルロス・デベーザ、イングリット・カーフェン、アリエル・ドンバール、ジェラルディン・チャップリン、モーリス・ガレル
