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『刺青』情念の増村保造の世界~映画史に残る悪女

©KADOKAWA1966

「大映4K映画祭」より増村保造を続けて2本。溝口健二が計算され尽くした映像美と完璧な演出なのに比べ、増村保造は激しく凄まじい情念の世界を描く監督だ。熱い勢いのようなものがある。これだけの悪女は映画史上でもなかなかいない。しかも、背中の刺青の「女郎蜘蛛がそうさせるのだ」と言うのだ。刺青の力と呪い。ものに魂が宿るという谷崎潤一郎の日本文学世界の映像化。若尾文子がその悪女を堂々と演じている。

男の生き血を吸って精を吸い取り生きていくという女郎蜘蛛の刺青。そんな刺青に魂を吹き込んでしまった刺青師に山本學。若尾文子と長谷川明男が次々と人を殺していくのをそばでじっと見ているのが怖い。奉公してきた長谷川明男は、質屋の娘、若尾文子にそそのかされて主人を裏切り二人で逃げ出すが、ヤクザに離ればなれにされて、若尾文子は刺青を彫られて芸者に売り飛ばされる。長谷川明男も殺されそうになるが、ヤクザの手下を殺し、さらに人を次々と殺す羽目に陥っていく。それも悪女、若尾文子の策略に乗せられたようなものだ。夜の林で旗本(佐藤慶)に斬られたヤクザの親分徳兵衛(内田朝雄)と若尾文子が揉み合っているのを、そばでじっと見ている長谷川明男のシルエットも怖い。

ほとんどセットで撮られた画面の照明、美術が美しい。最初の雪の中の夜の道行きは舞台のようだ。橋を渡ることで日常とは別の世界へ二人は踏み越えてしまった。雨も多用し、外からの窓越しのショットが何度も使われる。

この映画では、死ぬか生きるかをつねに身体をぶつけ合いながら争っている。刺青師が刺青を彫る時の若尾文子との争い、雨の中の長谷川明男とヤクザの手下との傘を使った争い、女房を殺した権次(須賀不二男)と争う若尾文子と長谷川明男、さらに旗本芹沢(佐藤慶)を騙そうとして争う徳兵衛(内田朝雄)と若尾文子、林での若尾文子と内田朝雄、さらに若尾文子の裏切りを知った長谷川明男がムチで彼女を叩く場面もSMチックで凄い。そして若尾文子が長谷川明男の背中を短刀で刺した後に現れた刺青師の山本學・・・。折り重なる死体を窓外から俯瞰気味に映し出す。男と男も、男と女も、つねに死ぬか生きるかを争う世界。そんな激しい情念のぶつかり合いが充満している映画だ。

昭和の時代はここまで熱く激しかったことに、今更ながら驚く。

1966年製作/86分/日本
原題:The Spider Tattoo
配給:大映

監督:増村保造
脚色:新藤兼人
原作:谷崎潤一郎
企画:加賀四郎
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
音楽:鏑木創
照明:中岡源権
編集:菅沼完二
キャスト:若尾文子、長谷川明男、山本學、佐藤慶、須賀不二男、内田朝雄、藤原礼子

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