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『青空娘』増村保造~歌うような台詞のグルーヴ感~

©KADOKAWA1957

重苦しい愛の映画が続いたので、爽やかな映画が見たいと思い、増村保造デビュー2作目、若尾文子と初めて組んだ『青空娘』を見てみた。いかにも爽やかな青春映画というタイトルだ。若尾文子もまだ溌剌として初々しい。

増村保造の代表作でもある『曽根崎心中』(1978)を評して、映画監督の塩田明彦が『映画術』という映画の演出に関する本の中で書いているのが、「映画が歌っている」という表現であった。「台詞の反復」、「独特のグルーヴ感」が「情念を加速させる装置」となっており、「映画が音楽」であり、「演技が歌」であると言うのだ。この増村デビュー2作目である『青空娘』を見ていてそのことを思い出した。台詞が歌のように圧倒的な速さで交わされていくのだ。まるで「映画が歌っている」ようなのだ。田舎の卒業間近の女子高生3人組の明るくはしゃぐような台詞のやりとり。人気者の美術の二見先生(菅原謙次)が、東京の父母の許に帰る小野有子(若尾文子)に向けて、いつも心の中で「青空」を思い描けとアドバイスする。有子は二見先生と何度も丘の上から大声で叫ぶのだ。ミュージカルのように。

増村映画では必ず不幸な環境を女性に用意する。有子の実家は東京の金持ちのお屋敷なのだが、有子の本当の母は父親(信欣三)の会社の不倫相手であり、今は行方不明だという。東京の実家に帰っても、母(沢村貞子)からは女中見習いをしろと言われ、長女の穂高のり子、長男の品川隆二からも冷たく扱われる。わんぱく中学生の次男(岩垂幸彦)とは喧嘩しながら仲良くなったのだが、父の娘でありながら大きな屋敷の狭い女中部屋で暮らす。女中のミヤコ喋々は有子を不憫に思いながら仕事を教え、何かと味方になってくれるのだ。

そんな境遇ながらも明るく強く振る舞う有子は、長女の結婚相手としてパーティーに呼んだお坊ちゃんの川崎敬三に好かれることになる。卓球大会で彼を打ち負かしたのだ。そして母や姉のイジメや意地悪に耐えながら、実家を出た有子は実の母探しをする。憧れだった美術の二見先生(菅原謙次)とボーイフレンドになった川崎敬三に協力してもらいながら、ついに有子は実の母親(三宅邦子)に巡り会えるというお話だ。そして中途半端な思いで暮らす父親に妻と家族と真剣に向き合えと説教までするのだ。

軽いタッチの女の子の成長物語。たぶん全体的にセリフの間がないのだ。間を開けずに台詞が重ねられていく感じがする。「了解!」と手を挙げて合いの手を入れるバーのママ、何かと気をも揉むミヤコ蝶々、文学的な引用が得意な魚屋さんなど、セリフのテンポがいいのだ。厳しい家庭環境にもめげずに溌剌と青空のように明るく生きていこうとする女の子の強さを描いたものだが、独特の台詞まわしのグルーヴ感がある不思議な作品だ。


1957年製作/88分/日本
原題または英題:A Cheerful Girl

監督:増村保造
脚色:白坂依志夫
原作:源氏鶏太
企画:藤井浩明
製作:永田雅一
撮影:高橋通夫
美術:柴田篤二
音楽:小杉太一郎
録音:須田武雄
照明:久保田行一
キャスト:若尾文子、菅原謙次、川崎敬三、東山千栄子、信欣三、沢村貞子、三宅邦子、穂高のり子、品川隆二、岩垂幸彦、ミヤコ蝶々、南都雄二、八潮悠子、藤田佳子、矢島ひろ子、田宮二郎、伊藤直保、高田信二、滝花久子、町田博子、清川玉枝


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