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コンちゃんパウダー♪

こんにちは。MJ喫茶室の室長、フックです。
今日のメモリージュースは、語られるだけで使われなかったスパイスの味です。

毎週のようにランチタイムに来てくださる常連さんがいます。
注文はいつも決まってアイスティー。けれど、座るなり話し始めるのは決まって“カレー”のこと。

私はうなずきながら、そのお話を聞いています。
カレーの仕込みは、実際、私にとっても大切な時間です。前日の夜に玉ねぎを炒めて、煮込んで、寝かせて……。うちのカレーは普通のおうちカレーですが、飴色玉ねぎと人参ジュースを加えるのが、ちょっとしたこだわりです。
けれど、その方は一度も、うちのカレーを頼んだことがありません。

「カレー、お好きなんですよね?」と、ある日お聞きしてみたことがあります。
その方は笑って、「うん、でも今日はそんな気分ちゃうねん」とだけでした。

そんなある日、近くの会社にお勤めの近藤さん──通称“コンちゃん”が、自家製スパイスを小瓶に詰めて持参されました。
「カレー、ちょっと物足らんやろ? 置いといてええよ、また来たときに使うから」

その瓶はカウンターに置かれ、やがて**“コンちゃんパウダー”**として常連たちに知れ渡っていきます。
ジュンゾーあたりが「ちょっとちょうだい、ええやん、コンちゃん許可くれとったし!」と、カレーを頼んだ他のお客様に振る舞いまくった結果、あっという間に中身は空に。

来店した近藤さんは「おお、よう使うてくれたな。また補充しとくわ」と笑って、時々中身を足してくれるように。
いつしか「コンちゃんパウダー♪」は、うちのカレーに欠かせない“裏トッピング”になりました。

でも、あるときから、近藤さんは長期出張でしばらく来られなくなってしまいました。
パウダーの瓶も底をつき、逆に私が「今日、コンちゃんの粉ないの?」と聞かれる始末。
さすがに申し訳なくて、今はこっそり市販のガラムマサラの瓶を常備しています。

今日の一杯は、健ちゃんではなく、コンちゃんの味。
ではまた、次の一杯で。

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