【新シリーズ】侍と黒猫 #01「清貧」という名のシステムエラー。金は防壁を作る資材だ。
■ Scene 1:深夜2時の「酸っぱい葡萄」

場所: 札幌市内の6畳ワンルーム
時刻: 深夜2時15分
健太(32歳):
(スマホの画面を見つめながら、コンビニのハイボールを煽る)
「……ふん。35年ローンで一戸建てかよ。田中も終わったな」
画面には、大学時代の同期・田中が投稿した「新居購入!」のキラキラした写真。
奥さんと子供2人の笑顔が眩しい。
健太:
「一生、銀行の奴隷になって働くわけだ。哀れだねぇ」
「俺は違う。俺は自由だ。金のために魂を売ったりしない」
「清く、貧しく、美しく……それが俺の美学だ」
健太はそう呟いて、給料が振り込まれたばかりのネットバンキングを開く。
残高:32,000円
(家賃・カード引き落とし予定額を除く)
健太:
「……まあ、生きてはいけるしな。金が全てじゃない」
その時だった。
???(タマ):
「嘘つきニャ」
健太:
「うわっ!? ……なんだ、タマか。びっくりさせんなよ」
黒猫のタマが、冷蔵庫の上から冷ややかな目で見下ろしていた。
タマ:
「健太、お前の心拍数、田中の写真を見た瞬間に120まで上がってたニャ。
それは『哀れみ』の反応じゃないニャ。
**『嫉妬』**の反応だニャ」
健太:
「は? バカ言うなよ。俺は本当に……」
???(ケン):
「……笑止千万」
部屋の空気が、急激に冷えた。
健太の背筋に、昔からよく知る「あの寒気」が走る。
健太:
「……出たな、ご先祖様」
枕元に、着流し姿の侍――ケンさんが胡座をかいて浮かんでいた。
幼い頃から、健太が弱気になった時だけ現れる、佐藤家の古い守り神だ。
ケンさん:
「貴殿からは、腐った果実のような臭いがするぞ」
「手に入らぬものを『欲しくない』と偽り、己の無力を正当化する……その腐臭がな」
■ Scene 2:システム監査(尋問開始)

健太:
「勘弁してくれよ、ケンさん……。
俺は本当に、金儲けに走るのが嫌なだけなんだよ!
今の世の中、金、金って……汚いじゃないか!」
ケンさん:
「ほう。『汚い』と申したか」
タマ:
(電卓を叩きながら)
「健太、お前昨日、求人サイトで『年収800万』って検索してたニャ。
汚いものが欲しいのかニャ?」
健太:
「うっ……それは、ちょっと見ただけだよ!」
ケンさん:
「貴殿は矛盾しておる。
『金は汚い』と唾を吐きながら、毎日8時間、その『汚い金』を得るために頭を下げておるではないか。
嫌な上司に媚び、満員電車に揺られ、32歳という男盛りの時間を切り売りしている。
それは何のためだ?」
健太:
「それは……生活のためだよ! 仕方ないだろ!」
ケンさん:
「ならば問おう。
なぜ貴殿には金がない?」
健太:
「だから! 俺はガツガツするのが嫌いなんだよ!
人の役に立つ仕事がしたいんだ。感謝とか、やりがいとか、そういうのが大事なんだよ!」
ケンさん:
「……寝言は寝て言え!!」
(ドォン!と、見えない衝撃波が健太を打つ)
ケンさん:
「わしが生きた時代はな、刀一本で明日を切り開いた。
今の世における『刀』とは何だ?
それが『金』であろうが。
貴殿は『資本主義』という戦場の理(ことわり)を理解しておらぬ。
金とはな、エネルギーだ。
誰かに価値を提供した証として、渡される『交換手形』に過ぎん」
タマ:
「単純な計算ニャ。
お前に金がないのは、お前が『世の中に対してエネルギーを提供していない』からだニャ。
お前の『やりがい』なんて、他人から見たら知ったこっちゃないニャ。
価値=ゼロ。だから報酬=ゼロ。
お前は清貧なんじゃない。**『無価値』**なだけだニャ」
健太:
「ぐっ……無価値って……言い過ぎだろ……」
■ Scene 3:防壁なき城

ケンさん:
「貴殿が貧しいのは勝手だ。だが、その貧しさは『罪』になるぞ。
わしが一番許せぬのはそこだ」
健太:
「は? 貧乏が罪? ふざけんなよ!」
ケンさん:
「想像してみよ。
明日、田舎の親が倒れたとする。最先端の手術を受ければ助かるが、500万かかると言われたらどうする?」
健太:
「え……」
ケンさん:
「今の貴殿に払えるか?」
健太:
「……無理だ」
ケンさん:
「ならば、金がないという理由だけで、親を見殺しにするのか?
『金が全てじゃない』と言って、親の死に顔を拝むのか?
……わしらの時代はな、飢饉や疫病で、守りたくても守れぬ命があった。
だが今は違う。金さえあれば守れる命がある。
それなのに、貴殿は剣(金)を磨こうともせぬ」
健太:
「っ……!」
ケンさん:
「金は贅沢品ではない。**『防壁(ウォール)』**を作るための資材だ。
病気、事故、災害、理不尽な命令……。
外敵から、自分と大切な者を守るための壁だ。
貴殿は今、素っ裸で戦場に立っているのと同義だぞ。
それを『勇気』とは呼ばぬ。『怠慢』と呼ぶのだ」
タマ:
「田中は35年ローンで『城』を買ったニャ。家族を守るための壁を作ったニャ。
お前はハイボールを買って、自分の脳を麻痺させてるだけニャ。
どっちが『魂を売った』のかニャ?」
健太:
(膝から崩れ落ちる)
「……わかったよ。俺の負けだ。
俺は……嫉妬してただけだ。あいつが羨ましかったんだ。
俺だって、金が欲しいよ……! 自由になりたいよ……!」
■ Scene 4:汚いガソリンを燃やせ

ケンさん:
「……ようやく本音が出たな。
赤子の頃から見てきたが、貴殿はいつもそうだ。
格好をつけて、泥を被るのを嫌がる」
健太:
「でも……俺には無理だよ。
『誰かのために』とか、そんな立派な志なんて持てないし……」
ケンさん:
「阿呆め。誰が『立派になれ』と言った?」
タマ:
「人間はみんな、自分の欲望(エゴ)でしか動かないニャ。
『誰かのために』なんて言ってる奴も、結局は『感謝されたい自分』に酔ってるだけニャ」
ケンさん:
「貴殿のそのドロドロした欲望。
『楽がしたい』『いい女を抱きたい』『あいつを見返したい』。
その**『汚いガソリン(原油)』**こそが、最強の燃料なのだ。
綺麗なガソリンで走ろうとするからエンストする。
自分の欲望を認めろ。それを燃やして走れ」
健太:
「汚い欲望で……いいのか?」
ケンさん:
「結果として防壁ができれば、誰も文句は言わぬ。
貴殿に必要なのは、高尚な理念ではない。
『稼ぐ』と腹を括る覚悟だ」
■ Scene 5:決断の夜明け

ケンさん:
「さあ、選べ」
ケンさんが健太の目の前に指を突きつけた。
ケンさん:
「今のまま、布団の中で文句を言いながら、無防備に死んでいくか。
それとも、泥水をすすってでも防壁を築き、自由を勝ち取るか」
タマ:
「ちなみに、今のまま行くと老後は生活保護一直線だニャ。
計算済みだニャ」
健太:
(顔を上げる。涙目で、でも少しだけ目に光が宿っている)
健太:
「……嫌だ。生活保護も、親を見殺しにするのも嫌だ」
健太はハイボールの空き缶をゴミ箱に投げ捨てた。
健太:
「やるよ。
やりたくない仕事でも、副業でも、なんでもやってやる。
種銭作って、投資して、絶対に防壁を作ってやる。
……見てろよ、田中」
ケンさん:
「フッ……。
その顔だ。男が一度腹を括ったなら、もう迷うな」
タマ:
「お、やっとマシな顔になったニャ。
じゃあ手始めに、そのスマホの課金ゲーム、今すぐ解約するニャ」
健太:
「えっ、それは……あ、はい。します」
ケンさん:
「行くぞ、タマ殿。
我らの血が絶えぬよう、もう少しだけ見守ってやろう」
ケンさんの姿がスッと消える。
タマは「あくび」をして、健太の膝の上に乗った。
タマ:
「とりあえず、ちゅーる代くらいは稼げよニャ」
健太は久しぶりに、未来のことを考えてパソコンを開いた。
深夜3時。窓の外、雪虫が舞う札幌の空が、少しだけ白んで見えた。

■ SYSTEM AUDIT:takeの解析
この健太の物語、笑えただろうか。
それとも、胸が痛くなっただろうか。
健太は特別ダメな人間ではない。
彼は「清貧思想」というウイルスに感染した、現代日本の標準仕様だ。
ケンさんの言葉を借りるなら、
金は「汚いもの」ではなく「防壁を作る資材」だ。
あなたにも、守りたいものがあるなら。
今日から、その資材を集め始めよう。
【実装手順:資本主義ハック】
バグ削除:「清貧=美徳」という思い込みを捨てる。
種銭作り:見栄の消費を切り、副業で泥臭く稼ぐ。
防壁構築:稼いだ金を浪費せず、知識と資産(投資)に変える。
「やる」と決めた瞬間、あなたの人生は再起動する。
さあ、どうする?
