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日記|冬の光と忘れていたカメラ

   冬の空気は、きゅっと透き通っている。そして、じん……と冷たくて痛い。夏のあいだ忘れ去られたカメラは埃を被っていて、ぽつんと一人で佇んでいた。今年の夏は忙しかったから仕方がないよね……。誰かが聞いているわけでもないのに、自分で自分にそう言い訳する。五年前はあんなに、欲しかったのに──あんなに、毎日のように使っていたのに。欲しかったものを手に入れた途端、興味を失ってしまう。ずーっとキラキラした気持ちが続いていたら良いのに、ね。寂しそうに置かれていたカメラは、泣いているようにも、嘲笑っているかのようにも見えた。

   さっさっと埃を手で払ってレンズをそっと磨く。ファインダー越しのわたしの世界。

   冬の光は、残酷なほどに正直だ。夏の湿った空気とは違って、輪郭をくっきりと浮き彫りにしてしまう。私の気まぐれな気持ちも、このカメラのさみしさも、すべてを見透かしてしまうように。自分の気持ちを見透かされるのは、こわい。だから、フィルム風にレタッチしたくなる。荒い粒子の中に気持ちの揺らぎを隠したくなる。

   一日中お台場にいた日。初めてEggs ’n Thingsに行って、パンケーキ以外のごはんものがあることに驚いた日。どちらも食べたくてロコモコとパンケーキを頼んだけれど、目の前に運ばれてきたパンケーキタワーを恨めしく思った日。たくさん食べて、消化するために、ぷらぷらと歩いて、たくさん笑って、海の風はひりひりと痛くて、東京タワーを見てはいちいち感動して。懲りずに、夜ご飯にはラーメンを食べて、胃もたれしたことに、年齢を感じて笑い合って。そんな、胸の奥で温かく沈んでいく記憶たち。

   ぶくぶく──きっといつかは、泡のように消えてしまうから。だから私は、カメラを持つ。忘れたくないものを、掬い上げるみたいに。これからもまた、よろしくね。

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