売れている商品を、続けるか見直すか。小さなEC事業の採算判断法
売上が伸びれば、経営は楽になると思っていた
注文が増え、売上のグラフが上がれば、会社は強くなる。
私はそう信じて、名入れ商品のEC販売に取り組んできました。商品ページを増やし、写真を整え、広告を出し、問い合わせに答え、レビューを確認する。売れるために必要だと思うことを、一つずつ積み重ねました。
実際、売上が伸びた時期はありました。しかし、経営者としての実感は、数字から想像していたものと違いました。
加工機は動き続け、梱包する箱は増える。管理画面には注文が並ぶ。それなのに、手元にお金と時間が十分残っている感覚がない。忙しいから考える時間がなく、考える時間がないから、採算の悪い仕事も同じやり方で続けてしまう。
「今月を乗り切れば楽になる」と考えているうちに、次の繁忙期が来ます。
私はようやく、売上を増やす力と、利益を残す仕組みは別だと気づきました。
売上と一緒に増えた負担
名入れ商品は、仕入れた商品をそのまま送る仕事ではありません。
注文内容を確認し、文字の間違いがないかを見る。書体や配置を整え、必要なら完成イメージを作る。お客様に確認してもらい、修正があれば直す。素材に合わせて加工条件を調整し、加工後に検品し、贈り物として届くように梱包する。
一つ一つは小さな作業です。しかし、注文数が増えると、作業と作業の間にある確認も増えます。
「この文字は入りますか」「この日までに届きますか」「前回と同じデザインにできますか」。問い合わせに答えるため、注文画面、在庫、制作予定、過去データを行き来します。
売上の管理画面には、こうした中断時間が出てきません。
再制作が起きれば、材料費だけでなく、加工、検品、再梱包、再発送、連絡に時間を使います。在庫を厚くすれば欠品は減りますが、売れ残りと保管のリスクが増えます。広告で注文が増えても、その費用を商品ごとに見なければ、本当に利益を増やしたかは分かりません。
忙しさの中では、「売れているから大丈夫」という言葉が便利でした。けれど、その言葉では会社も自分も守れませんでした。
売れている商品に、利益がないかもしれない
販売価格から仕入価格を引けば、差額は見えます。
しかし、その差額がそのまま利益ではありません。
仕入れ、材料、販売手数料、決済手数料、送料負担、梱包資材、広告費。さらに、制作時間、デザイン確認、問い合わせ対応、修正、再制作。在庫が残る可能性や、季節による注文の偏りもあります。
これらを見ないまま販売数量だけを増やすと、売れるほど時間を失う商品が生まれます。
厄介なのは、売れている商品ほどやめにくいことです。注文がある。レビューがある。検索順位がある。今まで育てた時間がある。そのため、価格を見直すことも、受注条件を狭めることも、止めることも怖くなります。
だからこそ、感覚ではなく、同じ項目で商品を比べる台帳が必要でした。
この記事で得られること
この記事では、自社の実数を記入して判断できる方法を説明します。手順を具体化するため、後半に『架空の商品A』のモデルケースも掲載します。架空数値は末広またはEIGHTの実績ではありません。
この記事の後半では、次の内容を扱います。
販売価格から、直接費と販売関連費を順に引く方法
制作、確認、問い合わせ、修正の時間を測る方法
1時間当たり簡易利益を、事業判断の参考値として使う方法
継続、値上げ、外注、縮小・撤退の四つに分ける基準
数字だけでは決められない将来性、ブランド、顧客関係の見方
一度にすべてを変えず、30日で事業を整理する進め方
判断に迷ったときに確認するチェックリスト
購入者向けに、安全な計算式を組み込んだExcel、CSV 7種、README、計算式仕様、利用規約・免責、更新履歴を一つのZIPにまとめています。
こんな方に読んでほしい
売上はあるのに、月末にお金が残らないと感じる方
EC、店舗、工房を少人数で運営している方
自分の作業時間を原価として見られていない方
売れている商品をやめる判断ができない方
値上げ、外注、撤退のどれを選ぶべきか迷う方
AIや仕組み化へ時間を使いたいのに、日々の処理で終わる方
この記事は、利益を保証する方法ではありません。業種、契約、税務上の扱いによって必要な計算は異なります。ここで作る台帳は、経営判断の入口です。最終的な会計処理や税務判断は、必要に応じて税理士などの専門家へ確認してください。
この記事の目次
数字だけを見れば成功していた
利益を壊した7つの原因
簡易商品別利益台帳の作り方
継続・値上げ・外注・撤退の判断
今後残す事業
縮小・撤退を検討する事業
30日間の事業整理計画
判断に迷ったときのチェックリスト
まとめ:売上よりも利益と時間が残る経営へ
ここから先は、自分の商品を一つ選び、付属テンプレートを開きながら読むと実行しやすくなります。
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