ライオンアドベンチャーの社名とロゴの話@ニセコ町
20年前の春、ニセコから始まった話
2026年5月。
ニセコの春は、いつも少し遅れてやって来る。
雪解けの水が音を立てて流れるのを見ながら、
私は会社の屋号を決めた2006年のことを思い出していた。
当時の私は30歳。
事業のスタート拠点となるニセコ駅舎の隣の小さな事務所で1人、コピー用紙の裏紙に鉛筆を迷わせ思案にふけっていたのだ。
事業登記の手続きと並行して「アウトドア会社の名前」を考えるという、なんとも孤独で、なんとも楽しい作業に没頭していたのだったっけ。
あのときの空気は、いまでも胸の奥に残っている。
あれからもう20年も経ったのか。

名は体を表す⁉
「会社の名前かぁ・・・」
「シンプルで覚えられやすい方がいいか」
「動物なんかもいいかもなぁ・・・」
そんな独り言を胸の内でつぶやきながら、
頭の中のイメージでは動物たちが行列をつくっていた。
昭和の好景気に乗って世に出た企業のシンボルに動物のキャラを採用しているメーカーのセンスが、ずっと気になっていたのだ。
ビールといえばキリン、
炊飯ジャーならゾウ印、
魔法瓶はタイガー、
宅急便にいたってはクロネコ、か。
そして、ふと頭に浮かんだのが百獣の王「ライオン」の姿だった。

「羊になるな、獅子になれ」
まだニセコに移住する前、若かりし頃にカナダを放浪していた時、ある人に言われた言葉があった。
" Don't be a sheep, Be a lion."
という言葉だった。・・・ような気がする。
曰く、
日本人は自分の意思で決めることができない。
周りの人たちに合わせた行動をとろうとする。
まるで羊のようだ、と。
そんな風に言われた。

つまり、
『羊は前の羊についていくだけで自分の頭で考えて動かない動物だ』
ということらしい。
言われてみれば確かにそうだ。
前の人に続いて進むのは得意。
割り込まず、列を乱さず、他の人と同じように。
日本人なら誰だってそんな風に教育を受けてきたはずだ。
だが、社会秩序を守る場面では真価を発揮するこの従順さも、
自分の意見を述べる場面では『周りの人からどう思われるか』
を気にしすぎて自己主張できない事がある。
周りに合わせておけば一安心だし、
なんといっても前の人たちが歩いて踏み固められた道は歩きやすくて楽であることは間違いない。
だが、自分の進路を決める時や人生の岐路に立った時、
『楽な道を進む従順な羊より、険しくとも我が道を行く獅子であれ』
という気概のようなものが必要ではないか、とも思うのだ。
そうして決めたのが『北海道ライオンアドベンチャー』という名前だった。

ロゴ誕生の瞬間
他の誰もが選ばない道を進み、誰もやらない事に挑戦しよう。
そんな思いを、少々カッコ良くこじつけながら考えたのがあのロゴだった。
最初はアルファベットでライオンのカタチをデザインしていたが、なかなかうまく行かなかった。
「お座りの姿勢」で考えてもいた。
だが、日本固有のカタカナの美しさに着想を得て、最初の『ラ』のデザインがライオンの顔になると気付いた瞬間、鳥肌が立つような感覚に襲われた。
ーーということにしておきたい。
試行錯誤の末、ライオンアドベンチャーのロゴは私の手書きによって完成した。
この世でただ一つのオリジナルロゴマークの誕生だ。
すなわちそれは、これまで日の目を浴びなかった資格「中学校二種の美術の教員免許」を保有する私のデザインセンスがついに開花した瞬間でもあった。
カタカナでライオンのカタチを表現できる可能性に気が付いたとき、私は決意した。
突拍子もないアイデアも否定せず、遊び心が溢れる会社にしよう、と。
もう20年も前の話だ。
若さとは、なんとも尊いものである。
ロゴを仲間たちに披露した時、
そして、
その仲間たちで手作りしたロゴの看板を店舗の入り口に掲げた時、
私は人生の道なき道を進む時が来たのだと覚悟を決めた。
その後、時を経て白馬やブランチの四国でも屋号としてこのロゴが採用されているのは、とても光栄なことだ。


いろいろとありましたが・・・
この20年を振り返ると本当に紆余曲折があったと思う。
リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍、北海道ブラックアウト。
結婚、出産、育児に公職。
子供の送迎、犬の散歩。
草刈り、除雪、ゴミ出しも、か。
犬も歩けば棒に当たる。
夫婦喧嘩は犬も食わない、だ。
そんな中でよくもまぁ、アウトドアの会社などやって来れたものだと、改めて思う。
正直なところ、もうダメかもな、と思ったことも一度や二度ではなかった。
だが続けて来れた。
20年。
これもひとえに地域のみなさま、
会社を支えてくれているスタッフのみなさま、
そして何よりライオンアドベンチャーを選んでくださっているお客様のおかげである。
そして、S社、P社、XP社、K社、T社、N社、M社のそれぞれの社長のみなさま方には、あらゆる場面で本当にお世話になった。
若輩の私を導いてくださったみなさまとのご縁がなければ、この道を歩き出すことすら出来なかったはずだ。

ロゴに刻まれたもの
これからも色々なことがあるだろう・・・。
ライオンアドベンチャーのロゴマークは、この先の未来も見続けていけるのだろうか。
あの時覚悟して歩き出したこの道なき道は、どこまで続いているのだろう。
このロゴは、私ひとりのものではない。
地域の人たちや仲間たちと積み重ねてきた20年の証でもある。
そして私が選んできた道や、迷いながらも踏み出した一歩一歩が刻まれている。
いつかの
『ビールと言えばキリン』
のように、
『アウトドアと言えばライオンアドベンチャー』
と言われるようになったら望外の僥倖だ。
そうなればもしかすると、
私たちがこのニセコ町で生きた証のひとつになるのかもしれない。
一度きりの人生だ。
重要なのは後悔をしない生き方をすること。
突拍子もないアイデアも否定することなく、遊び心が溢れる人生にしようじゃないか。
『楽な道を進む従順な羊より、険しくとも我が道を行く獅子であれ』
と、そんな勇ましい言葉を掲げている私こそが、
実は牡羊座だったりするのだが・・・。
ホントは獅子座ならカッコついたのになぁ。

