よくある物が原因で事故が起こってしまった話

ある日の放課後、隣のクラスの友人達と遊んでいると学校の裏で非常に汚れた上履きが発見された。

「これは、過去にこの学校で亡くなった人の上履きだ」

と、霊感があると常に自己申告していた女子が言い出した。
三階のトイレに閉じ込められ、自力で出ようとして転落した時のものであると語った。
その汚れ具合が妙な迫力を醸し出し、それは非常に信憑性が高く感じられた。
友人達は恐怖し、その中でもとりわけ私は震え上がった。
何故ならその汚い上履きは私の上履きであったからだ。
自分が死んだ事に気が付いていない霊が初めて事実を知った時の気持ちを味わってしまった。
霊視の結果、今も私は成仏できず上履きを探して校舎を彷徨い、学校全体に呪いを振り撒いているそうだ。
私の上履きが汚かった為に、えらい事になってしまった。

しかし、どうしてこんなところに上履きがあるのだろうと思っていると、明らかに隣の友人カネヤンの様子がおかしい。
カネヤン、お前の仕業かと気がついた頃にはもう遅かった。
カネヤンのせいで私は彷徨える霊魂である。

怖がった他の女子が先生を呼んでこようかと言い出した。
このままでは、腹いせに私の上履きを隠したカネヤンが怒られる未来が待ち受けている。
すると、カネヤンは

「いや、成仏したよ」

と、突如霊能力に目覚め始めた。
しかし、残念ながら私は隣にいるので成仏はしていない。
霊感少女は新人霊視師カネヤンと意見が対立したが、己の霊視見解を曲げる事なく言葉を続けた。

「私はこの上履きから許さないという強い怨念を感じている」

私もカネヤンから先生に怒られたくないという強い意志を感じている。

霊感少女は上履きの方に向かって手をかざすと、霊の姿が見えたと言った。
そして、上履きの持ち主はそこに立っていると上履きの更に向こう側を指差した。
残念ながら人違いである。
上履きの持ち主は指の反対方向にいる私であり、指を差されたその霊も「えっ」と思った事だろう。
見知らぬ霊はカネヤンの愚行のせいで汚い上履きの持ち主として不名誉なレッテルを貼られてしまった。
私がこの霊なら成仏できない。
今まさに許さないという強い怨念が生まれた事だろう。

いよいよ他の女子が早く先生を呼ぼうと本格的に騒ぎ始めた。

「いや、ほら、見てよ、今まさに成仏しかけてるじゃん、俺らが見つけてあげたからだよ」

と、カネヤンは今度は霊感女子の霊視に沿い、どうしても私を成仏させたいご様子であった。
人違いで汚い上履きの持ち主とされた霊が、更に見つけてやったから成仏するはずだと恩着せがましく促されていると思うと心が痛む。

「でもこれじゃ足りない、私に任せて」

と言うと、霊感少女は給食に出た茹で卵用の塩の小袋を取り出し、私の上履きにまぶした。

「……あっ」

と、カネヤンが声を漏らした。
私の汚い上履きは塩で味付けされた。
そして、霊感少女は何かを唱えると、怨念は消え、無事に除霊が済んだと言った。
私の怨念はカネヤンに積もるばかりであるが、取り敢えずその場を後にした。

霊感少女が帰った後、カネヤンは謝罪の言葉を述べ私の上履きを掴み走り去っていった。

翌日、見違えるほど美しくなった上履きが下駄箱に入っていた。

【その後】
「上履き綺麗にしたんだ、偉いね」
と、担任に褒められたので、私はカネヤンに「偉い」と伝えた。
カネヤンは汚れを落とすのが大変だったと嘆いていた。
今後は上履きで校庭に出ないようにしようと、私は心に誓った。

今でも塩の小袋を見ると、私の汚い上履きが塩まみれになった事によって何故か成仏した霊について思いを馳せる。


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