見出し画像

星売る夜店


お月さまが、薄目になる夜。
どこからか星を売る夜店が、やってきます。
お代はいりません。
夜店にたどり着く人だけが、ただひとつ、星を持って帰ることができるのです。

あるところに少女がいました。
少女はずっと、お星さまがほしいとねがっていました。
だからお月さまが薄目になる夜に、こっそりと家をぬけだし、町の片隅にある空き地へやってきました。




「……ほんとだ、あった」

その夜店にはジンジンと光る星たちが、
瓶に詰められてお行儀よく並んでいました。
あたりはまるで星空がおりてきたように、ほんのすこしだけ明るくなっていました。

「……きれい」

少女は、うっとりと星々のかがやきを見つめてから、そっと星に近づきました。

「ひとつひとつちがうのね。知らなかった」

遠いお空にいる星は、みんな金色にしか見えません。
でも、ここには青い星、みどりの星。
強く光る星、やわらかく光る星がありました。
それぞれが、自分のよい心を光らせているみたいだと、少女は感じました。

それは、とても澄んだ光でした。



「……いけない、早くかえらないと」

少女はふと、家にいる家族のことを思い出しました。
だまって出てきてしまったので、
少女がいないことに気がつけば、きっと心配するでしょう。

遠い昔、かあさまはお空にいってしまった。そのかあさまのところからきた星が、少女はどうしてもほしかったのです。
でも、みんな同じようにきれいだったので、一体どの星なのかが、わかりませんでした。

そのとき、ひとつの星が少女に話しかけるようにジンと光りました。

「あっ!」

その光をよおく見つめていると、胸のあたりがぽかぽかして、まだかあさまがいた遠い昔を思い出しました。
少女はスカートの裾をぎゅっとつかみ、おそるおそる星にききました。

「……おまえ、かあさまのところから来たの?」

少女はひときわ優しく光る星に、そっと手を伸ばしました。
その星は、応えるようにゆっくりとまたたきました。

――ずっとあいたかった、かあさまの星。

そうっと抱きしめた星は、懐かしい匂いがしました。
かあさまの匂いです。
少女は、うれしさでいっぱいになりました。

「いっしょに、かえろ」

少女は星のかけらをひとつもこぼさないように、大事に胸に抱えました。
そして、夜空に深くおじぎをしてから、家に帰りました。



2026.07.16追記

夏休みの小さなおとぎ話は、朗読もつけてみようと思います。


2026.07.18追記

聴いておくれ!
これがすてきな朗読というものだよ〜♡

noteで仲良くしてくださる、音羽しーなさんに朗読をしてもらいました!!

私が朗読でぐぬぬ、となった箇所も、
うっとりするほど美しく表現してくれました。
……きれい!
作品が一段と輝きを増したようです。
一等星みたいね。

しーなさん、ありがとう!
夢見心地の気分です!

いいなと思ったら応援しよう!

くいたろう 読んでくれてありがとう!うれしいです。