【合同練習note】見えないボタンは推してもいいの?
私が大好きなnoteのクリエイターである、くろいるすけさん、くろちゃんの練習に時々勝手に参加しています。
今回は「毎朝見えないボタンを押す人」というどうかしているお題を出されたようで、おもしろそうだから私も勝手にまたまた合同練習と致しました!
駅前の広場には、毎朝いろんな人が行き交う。 スマホを片手に早歩きするサラリーマン。 犬の散歩のついでに交番のおまわりさんと立ち話している、老夫婦。 赤いランドセルを背負った子どもが、ぴょんぴょんと跳ねていく。
私はベンチに座って頬杖をつきながら、その人たちをぼんやり眺めている。 友人の「よりちゃん」を待つこの時間が、なんだかんだで好きだ。
あの人、最近よく見かけるな。あのメガネが知的でなんかいいかも……
「おはよう」
その時よりちゃんの声がして、隣に座ってきた。
「またあんた人のこと見てるの?」 呆れたような顔をして、私を見てくる。
「だって……よりちゃんを待ってる間、暇なんだもん」
そう言い訳してみたけど、それは半分本当で半分はうそだ。 私は、ほれっぽいのかもしれない。
そんなことをよーく知っているよりちゃんが、笑いながら言う。
「あんたさ、毎日いろんな人に心の中で『スキ』ボタン押しまくってるんでしょ?」
『スキ』ボタンって。noteじゃあるまいし。 ちょっと笑ってごまかす。
「でもさ、あんまりジロジロ見てると、そのうち『気があるんじゃないか』って勘違いされちゃうよ?」
「まさかぁ!見てるだけだよ?」
そんなことを言いながら私たちは立ち上がり、学校へと向かった。
私は、人を観察してその人のいいところを見つけるのが好きだ。
交番のおまわりさん。 空き時間に勉強しながらバスを待っている、同い年ぐらいの男の子。 忙しなく速歩きで仕事に向かうビジネスマン。
たくさんの人がいろんな表情で駅前の広場を通り抜けていく。 その人の見えないストーリーになんだかキュンとしてしまい、ついつい心の中で、見えない「スキ」ボタンを押してしまうのだ。
♡
次の日。 また私は、いつもの駅前の広場にいた。
「おはよう」
よりちゃんが声をかけて近づいてくる。
「……あんた今日は、元気ないね。どうしたの?」
私は、心なしか疲れた笑顔でのりちゃんに答える。
「それがね……昨日の帰り道。いつも見てる『メガネくん』……話しかけてきたの」
「え、まじで?」 よりちゃんが目を丸くする。
「うん。駅で偶然会ってさ。 『あの、いつも駅前の広場にいますよね』って。 それから、『なんだか目がよく合うので気になってたんです。よかったら』って……」
「ほらー。やっぱ見過ぎなんだよ。でもよかったじゃん。付き合っちゃえば?」
よりちゃんは、冗談まじりにひじでつついてきたけど、私は笑えなかった。 「……逃げてきちゃった」
「は?なんでよ。いいなと思ってるから、見てたんでしょ? 」
よりちゃんの声に、少し不思議そうな色が混じる。
私は、言葉に詰まる。
「……そんなのわかんないよ」 ぽつりと、小さな声で返す。
「だって……恋って、見てるだけだから楽しいんだよ。叶えたいわけじゃないよ」
だんだん声が小さくなる。
「かなっちゃったら、あとはもう壊れるだけじゃない……」
よりちゃんは、黙って私の顔を見ていた。 その目が、すこしだけ傷ついているようにも見えた。
「……そうとも限んないでしょ」 そう言った声は少しだけ低くて、真剣だった。
私は、じっと靴のつま先を見ていた。 でもさ…
「だって……よりちゃんは、いっぱい泣いてたじゃない」
だから恋はこわいよ。
その瞬間、よりちゃんの表情がチクリと痛むように変わった気がした。
「なんで振られた私じゃなくて、あんたが傷つくのさ」
「…だって。よりちゃんのこと大好きだもん」
「ばぁかじゃないの?」
「それに……彼氏はいらない。私にはよりちゃんがいるもん」
「私に彼氏ができたらどうすんのさ」
「よりちゃんに彼氏ができたって、ずっと変わんなかったでしょ。よりちゃんの一番はわたし。 だから、いーの」
「一番…どうかな?」
「そんなこと言わないでよ。よりちゃん、ずっと一緒でしょ?」
「えー。あたしは彼氏ほしいからやだぁ」
よりちゃんは、照れたような、呆れたような、少し優しい笑顔でそう言って、 「あんたともかく、今度メガネにあやまんなよ。フツーに失礼。」
もう、学校遅れるから行くよ。よりちゃんはそう言ってさっそうと立ち上がり、いつもの道を歩き出した。
駅前の広場に、ひとすじの爽やかな風が通り過ぎた。
朝の光は、立ち並ぶ木々の隙間からこぼれ落ちて輝いている。
人がどれだけ流れても、 よりちゃんと並んで歩くこの道だけは、どうか変わりませんように。
私は胸いっぱいに空気を吸い込んで、彼女の背を追い抜くように駆け出していった。
くろちゃん!遅くなりました!
楽しかったよー。
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