サンタの秘密のプレゼント

もうすぐクリスマス。
ランドセルの底でくしゃくしゃに丸まり、眠っていたその手紙は、いつの間にか消えてしまっていた。
―――わしの「秘密」を知っているって、手紙を書いたのはきみか?
ある夜。隼人がベッドで眠っていると、耳元で誰かの声がした。目をこすりながら見てみるとそこには、赤い服に赤い帽子、白いひげの……。
「サンタさん?……あれ?本当に?なんで……」
夢を見ているのかと不思議に思いながらも、隼人は「お願い」を思い出した。
「そうだ、サンタさん。ぼくのパパとママにもプレゼントちょうだいよ!」
隼人はいつも思っていた。
大人が、プレゼントをもらえないのにニコニコしているのは、なんかへんだ。もしかして、サンタの秘密を知っているんじゃないか、と。
―――パパとママも、きみと一緒に、ちゃんとプレゼントをもらっとるぞ。きみが知らないだけじゃ。
「うそだ!見たことないよ。じゃあどんなの?」
―――それはサンタだけの秘密じゃ。
カカカ!と得意げに笑うサンタに、「ずるい!じゃあぼくにもサンタやらせて!」隼人は、地団駄をふんだ。
―――サンタは大変じゃぞ。プレゼントは自分で考えて、用意して。だあれにも気づかれずに届けるんじゃ。きみにはまだ、でき……。
「できる!やる!そーんなのカンタンだよ!」
隼人は頭の中で、忍者になったクロネコヤマトを想像する。
シュタタッで任務完了。もうサンタの秘密のプレゼントを、手に入れた気になっていた。
そうして隼人はサンタになった。まずは調査だ。
「ねぇママ。誰かになにかもらえるとしたら、なにが欲しい?」
「え……?なに、ママになにかくれるの?」
「ち、ちがっ……例えば!の話!今友達とクリスマ……あーっ!もうなんでもないよ。じゃあね」
(あっぶなーい。)
ゲームオーバーになりそうで、隼人はあわてて逃げ出した。
でも、ママのちょっとうれしそうな顔が、隼人の中でいつまでもバウンドしていた。
(しばらくママを観察したら、わかるかな)
買い物のとき、TVを観ているとき。ママの目がキラキラしているものはどれだ?ママと内緒のクイズをしているようで、隼人はワクワクした。
「あら。このチョコ、もう出てたんだ。おいしいのよね」
キラキラした目でチョコを手にしたママは、でもそれを買わないで棚に戻す。
「なんで?買わないの?」
「うーん。年末年始は無駄遣いできないから。ガマン、ガマン!」
さみしそうに笑うママの顔を見た瞬間、ビビッと隼人に電気が走った。
頭の中で、一斉に鳴るファンファーレ。
(みつけた!)
隼人は、飛び立つ鳩みたいな気持ちを抑えて、チョコを買う忍者になった。
「これ、お酒が入ってるけど。『ぼく』が食べるの?」
「プ、プレゼントです!」
店員がプレゼントならと、特別な魔法をかける。それを隼人は夢見心地で見ていた。
おめかししたチョコを連れて帰るころ、自分が10cmくらい大きくなった気がした。
(あー、早くクリスマスにならないかな……
ママったら、うれしくて泣いちゃうかな。
パパの分も、ちゃーんといいの見つかったし。
パパ、「ぼくにもサンタが来た!」って大さわぎして、
大ニュースになっちゃうかも……)
隼人は夜ベッドに入っても、パパやママの喜ぶ姿を想像して、
「ふふ……くくく……」と笑いが止まらなかった。
ずっと胸のあたりが、ふわふわキラキラしてて、くすぐったい。
これがもしかしたら、サンタがいう「秘密のプレゼント」の正体なのかも。
だったら……
「なあんだ。こっちのほうが、ずっと楽しくて大きなプレゼントじゃんか」
隼人は今までで一番大きなプレゼントをだきしめて、幸せな眠りについた。
(約1521文字)
もうすぐサンタを卒業しそうな息子。
サンタがうちに来ている間だけ、私がもらえる「秘密のプレゼント」を残しておきたくて書きました。
ずっともらいたいなぁ、このプレゼント。
叶えてちょうだいね。
こちらは、
ことばとさん主催の「モノカキングダム2025」
参加作品です。
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