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「花咲か くいさん」になりたくて

花を育てられる人って、なんだかかっこいいと思っていた。
簡単なことなのかな。
花を育てている人はみんな、
「そんなに難しくないよ。愛情をかけてあげれば綺麗に咲くよ」
って教えてくれる。

だけど私は、もらった花を咲かせられたことが……ほとんどない。
私もいつか、「花咲かじいさん」のようになれるだろうか。


小さな ひまわり🌻


「くいたろうちゃんに元気だしてほしいから、これをあげる」

そう言ってひまわりをくれたのは、お花が好きで卸の仕事をダブルワークしているという人だった。

その人がくれたのは、花の大きさが10センチほどの、ちいさなひまわり。
当時の私は、ひまわりといえばひまわり畑に咲いているような、背の高い大きな花しか知らなかった。
だから、こんなに小さくてかわいいひまわりがあるのかと驚いて、思わずキュンとした。

ひよこのように小さくて、温かい色をしたそのひまわりは、とてもいじらしく見えた。
「元気をだしてほしいから」小さなおひさまのような ひまわりをくれた。
その気持ちがまた、うれしかった。

「すごくうれしいです。大事にしますね」

そう言って、ひまわりはわが家にやってきた。

植物を育てるのは、ほぼ初めての経験。
一人暮らしの家にいる、私以外の「いのち」の存在。
なんだか気持ちがぽかぽかした。

注意深くお水をあげ、毎日たくさん話しかけた。
「たくさん話しかけると、きれいに咲くからね」
その人が、そう教えてくれたから。

でも、ちいさなひまわりは、だんだん元気がなくなり、力を失っていった。
どうしてほしいのか私にはわからなくて、その度にいろんな人に相談した。

「ちょっと育てるのが難しいのかもしれないね」
……とうとう、枯れてしまった。

なにがいけなかったんだろう?
「話しかけてた?」って聞かれたけど、それはもう、たっぷりと。

……もしかして、私の話がつまらなかったのかもしれないな。


星の王子さま と バラ🌹


ひまわりの少しあと、誕生日にプレゼントされたのは、バラの栽培セット。

「くいたろうちゃんに、ぴったりだと思って」

バラなんて、私には上級者向けの花のように感じていたのに…
白い陶器の鉢に、ピンクで描かれた星の王子さまのイラスト。かわいい。

ひまわりを枯らしたばかりの私は、内心不安。
うまく育てられるかな…。

でも、「ぴったりだと思って」。
そんなふうに思ってもらえたことが、やっぱりうれしかった。

種から育てるのは初めてで、説明書通り濡れたティッシュへ丁寧に種をくるんで冷蔵庫へ。

数日後、様子をみるが……発芽してない。
次の日も、その次の日も、ずっと待ったけれど、とうとう芽は出なかった。

「種子が死んでしまうこともあります」そんなことを説明書きに小さく書いてある。種まきのタイミングをうかがい過ぎて、半年近くそのままにしておいたのが、良くなかったのかもしれない。

星の王子さまに出てくるのは、わがままで繊細なバラ。私がもらったバラも、あんまり何もしてもらえないから、ご機嫌を損ねちゃったのかもしれない。もっと唯一無二のバラとして、早く大切にしてあげればよかった。

かわいい鉢が、ベンチを温め続けたまま試合終了のサイレンをきく、控え選手のように切なく見えた。


苔玉の景色🌱


「ずぼらなくいちゃんでも、これなら育てられるんじゃないかな」

そう言って、私をよく知る友人がプレゼントしてくれたのは、小さな苔玉だった。

「水やりは、『じゃぼん』って水につけるだけだから、簡単でしょ?」

枯れてしまったひまわりや、発芽しなかったバラの話を聞いて、考えてくれたらしい。ちょっと情けないような、でも仕方ないような、複雑な気持ち。

ふかふかの苔に、1本だけニョキっと伸びている草(もう草だったとしか思い出せないけど)が かわいくて、せっせと『じゃぼん』して、話しかけた。

えびの「くいたろう」が住む瓶の中の「マリモ」にもそっくりな、苔玉。
苔玉に、マリモに、くいたろう(えび)。
一人暮らしの家が、一気ににぎやかになった気がした。

…なのに、そんな幸せも長くは続かない。

いつの間にか草は色が抜けて枯れ、苔にもカビが生えていた。

「水、やりすぎてない?」と友人からのチェックが入る。
そんなはずは…でも、『じゃぼん』のしすぎだったのだろうか。
愛が重すぎた?

「苔玉くらいなら、なんとかなると思ったんだけどな…」
ほんとにねぇ…。


草は枯れ、苔にはカビ。

時間の経過とともに変わりゆく姿…不完全なものもまた自然なことなのかもしれない。
侘び寂びって、こういうものだっけ?

いや、カビはさすがに「寂び」とはいえないか……



自分なりに愛情をかけたつもりだったけど、枯れ木に花は咲かなかった。
植物とおしゃべりをする力は、もしかしたら私にはないのかもしれない。

だから、雑草を見るとちょっと安心する。
わざわざ種をまかなくても、放っておいても、うちでスクスクと育ってくれる。
しかもたまに花も咲いている。

それでも「あなたに」って、誰かが選んでくれたひまわりや、バラの種や、苔玉は、今でもちゃんと思い出の中ならきれいな花を咲かせてくれる。

今はまだ、土だらけのわが家の庭に咲かせたい。
いつの日か、
「花咲か くいさん」となれるだろうか。
やっぱり、なれないんだろうか…。



いつもいつもの気がしますが…
私がフォローしているくろいるすけさんの記事を見て、「向日葵」夏らしいから何か書いてみようかなぁ。と思いました。
でも、夏らしさはなくなっちゃったなぁ。
くろちゃん、ありがとう。

iさん、はじめまして。
私も風まかせに書いてみました。
よろしくお願いいたします。
すてきなお題、ありがとうございます。

#風まかせ文芸部

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くいたろう 読んでくれてありがとう!うれしいです。

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