一応オスだった。──ダーウィン事変12話より


前回までで、しばらく逃亡生活になるかと思われたチャーリーはグラハムの下に匿われることになった。

正直なところ、家と家族いっぺんに失った割には切り替えが早いというか、思ったよりそこまで暗い展開にもならなかった。もっと言うならメタ的な意味で「もう少しショック引きずってほしいなあ……」などと個人的に思わなくもなくもない。


グレイスさんのインパクトのせいだろうか……


第12話:性的二形


筋力や知能が突如著しく発達しはじめたチャーリー。
人とチンパンジー、そのどちらの適切な年齢でもないタイミングで何故か彼は第二次性徴期を迎えた。
(改めて見返すと空腹の描写や食事シーンなど、何となく摂取カロリーが増えていることを示唆しているように見える。考えすぎかもしれないが。)

私の記憶違いでなければ、数人の警察相手に無双した事件が10年前、加えて当時のチャーリーは5歳。というか彼が通っていたのが高校だったし、今は15か16歳あたりだろう。たしかに人間で考えれば5年くらい遅い。ちなみにチンパンジーの適齢も10~15歳くらいで割と人間と被るらしい。

何故このタイミングかについては「急激な環境の変化やストレス」或いは「グロスマン博士がそう設計した」とか……どちらも今のところ信憑性は薄いと感じる。


で、


敢えて言い換えるならこの思春期が起因してなのか何なのか、今回は妙な進展があった。



チャーリーは「何故自分と友達になろうと思ったのか」をルーシーに訊いた。

人工授精によって生まれたたという(リヴェラも指摘していたやつだね)やや特殊な経歴を明かしたルーシーだが、彼女はそれとは関係なしに「ただ君に興味があるってだけ」と答える。

この後のチャーリーの台詞はやや吃り気味であった。

チャーリー「それって、“好き”ってこと?」

顔を赤らめながらしかし否定はしないルーシーに、さらにこう畳み掛ける(?)。

チャーリー「なら、僕と交尾しない?」

思わぬ急ハンドルに「は?」となった視聴者もいたのではなかろうか。たしかに「ルーシーのこと好きなの?」みたいなくだりは今まで無くはなかったけど、正直私は動揺、というより「あれ?」と感じた。詳細は後述する。


いくら思春期だからって……などと口を挟みたいところではあるが、ここから気付かされるのはまず、交尾を恥じらうのは人間くらいだというところだろう。

服を着て外を歩く、トイレや風呂が隔離され且つ男女分かれている、あとは諸々のアダルト消費者への“プライバシー保護”方面での配慮、等等。このような性的文脈における“隠す”文化は人間特有のものであり、人間以外のかれらは、森や海はおろか、動物園ですら積極的に時と場所を選ばず交尾に勤しむ。

これは野暮かもしれないが、しかしだからといって、その感覚って種族変わったらリセットされるものなの?という引っ掛かりはある。だって、一応半分は人間である。そんでもって生活環境はもう人間である。先天的にも後天的にも引き継がれる可能性は充分にある。

とはいえ、まず前提として性欲は全生物共通である。そしてそこに“恥じらい”的な人間特有の複雑な理由が一切介入しない限りは、

好き=交尾したい

という非常にシンプルな式が成り立つ。

ちなみにこの時私が引っかかったのは、彼に生殖機能がない点である。性に対して人間的な感覚を持たないチャーリーにとって、交尾に繁殖以外の目的はないはずだ。そんな彼にも、或いは性欲みたいなものがあるのだろうか。

ところで少し話は逸れるけど、ヒューマンジーという種はチャーリーただひとりである。
そういえば、生殖機能がない且つ他個体と比較する術がないなら、どうやってチャーリーをオスだと判別できるのだろうか?
もしかして、チャーリー性別ないんじゃない?



……という感じに、我ながら面白い妄想を膨らませてはみたんだけど、

軽く調べてみたところ、こういった異種間に生まれた“世界に一個体だけの種”にもオスメスの区別、つまりそれに当たる生殖器はあるらしい。生殖機能がない=生殖器がないというわけではなかった。で、あるにはあるがほぼ機能はしないというお話。
まあオスメスがあるなら性欲もあるかあ……。
(一応補足しとくと、交配種に生殖機能がないのは親同士が別種であることの証明になるよ。)





人間がヒューマンジーと性的関係を結ぶ。

ここだけ切り取れば、最近ジェンダーとか性欲関連のテーマにマイブームが来ている私にとっては結構面白い展開だったのだけれど、さりとて俯瞰すると「本筋とあんまり噛み合わない色恋沙汰」みたいな違和感もぶっちゃけなくはない。

しかし、この若干取ってつけたような展開から、私は“ヒューマンジーという素材でやれることは全部やる”といった作者の意志を感ぜられた。


そもそも私は結構前から公式で公開されていたこの

性的二形


というサブタイトルが楽しみで楽しみで仕方なかったのだ。「え!?性関連やってくれるの!?」と思った。

と言いつつ聞き慣れない言葉だったので、
一応(調べた)意味は

生物における、生殖器以外の性別の違い。

骨格とか身体の大きさとか、ヒトで言うと喉仏があるなしとか、毛深さとか、そういった男女の身体の違い。


しかし今話の内容はただ単に「男と女」という構図でしかないというか、「こんな分かりづらい使う必要ある?」と引っかかる。というかシンプルに身体の違いを比較するような内容ではなかった。


とはいえ、
今後もこうした2人の恋仲を描いていくのであれば、ヒトとヒューマンジー、特にヒューマンジー特有の性的問題は避けては通れまい。性欲があるとはいえ、チャーリーお前生殖機能ないんだぞ、分かってんのか。



理性を持ち合わせた人間の性感覚というものは、かなり特殊で謎めいていると思う。しかしその性質上、まじまじと観察してくれる人はほとんどいない。
ロジカルな解剖を試みようにも「恥ずかしい」「下ネタ」といった感じで蓋をされる。人によっては不快感を覚えることもあって、なかなか声を大にして語ることはできない(かく言う私も昔はそういう側で、だからこそ自身のクィアな内面を発見するのに遅れたのだと思う)。子孫を残すという生物共通の存在理由に関わるところなのに、不思議なもんだね。

そういった人間の玉手箱は、ヒューマンジーの目にはどう映るのだろう。究極な第三者からの俯瞰視点に今後も期待したい。

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