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【掌編】機運を醸成する

 改憲EXPOにおける「全国的な機運醸成等に要する費用」は、当初見込まれていた約38億〜40億円 から、国民の関心を高めるためのイベント費用などを目的に補正予算等で約29億円が追加された。

 街中で機運醸成のイベントが開催されている様子はないが、ワイドショーでは連日改憲に関する話題が垂れ流される。物言うタレントが雛壇に並びバラエティー番組の様相。

「結局は国民なんて日本国憲法の操り人形」

 サブスク映画を観ていても、不意に差し込まれる政府広報が見苦しい。

「そもそも日本国憲法って国民のために働いてくれたのかなー?」

 これって憲法に対する誹謗中傷動画よね。機運醸成費用で作ったのだろうか。

「改憲を、もう一度誇り高き万博で」

 SNSでは万博反対の声が上がりはじめる。民衆はペンライト片手に街を練り歩く。左派の論客はマイクを握って特定の大企業だけが潤う万博を粉砕しようと訴えた。

 ついに資本主義の祭典である万博は中止に追い込まれた。この国ではじめて市民活動が報われた瞬間だった。ビジネス左翼の三部作はシリーズ累計100万部を越え、ペンライトのあんな人たちは達成感に酔いしれる。

 そんな中、憲法改正原案が衆参両院の憲法審査会を通過、国会が憲法改正を発議した。国民投票へと流れ込んだ頃、民衆は万博粉砕に恍惚、この国は燃え尽き症候群に蝕まれていた。

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