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夜のファミレスで「2週間恋愛しよう」と言われ、敗北した私。

嘘か本当かわからないLINEに登録されている下の名前と、ざっくりとした職業と、今目の前にあるその顔。それしか知らないひとつ年上の男性とココスでご飯を食べた、とある日の20時。

そろそろ行くか〜〜と、席を立ち上がったその人が「2週間恋愛しよう」と私に言ってきたんだけど、立ってレジに向かう動きをしながらだったもんで「!?」な顔でその人の背中を見ることしかできなかった気がする。


初めて聞く日本語で、返し方がわからず、結局私がそのときなんて言って返事をしたのか全く覚えていないんだけど「ありだな」と思ったのだけ確か。

これがたった1週間前の出来事で「ありだな」と思った私は、しっかりとその誘いに釣られてみたんだけど、敗北している。別に好きなわけでもなく、告白してもされてもなく、お互い遊びなんだけれど、なぜか、なぜか今、失恋したときと同じ気分で苦しい私がいる、なにしてんだ。


情報と人だらけな関東生活と、過去の恋愛からも全てリセットして、リゾバ生活を始めて田舎での暮らしを楽しんでいるこの数ヶ月。もう慣れきったここでの生活に刺激はほぼない。生活圏と化されて、心地が良い。

いつも通り、イオンからの帰り道、食料を詰め込んだパンパンのリュックサックとエコバッグを抱えてバス停まで歩いていると、目の前を歩いている男性2人がちらちら私の方を見て何かを話しているから(あ〜〜、話しかけられるやつだ、口角下げて下向いて歩こう)と、東京で学んだ”話しかけるなよ”の顔をして歩いた。


「すいません、この辺のおすすめのごはん屋さんないですか」


ご飯なんて自分たちで検索して探せよと思うんだけど、暇だった私は会話に乗っかってみることにした。楽しかった。そして職場と働く期間が一緒だった。「仕事でなんかあるかもしれないし、とりあえずLINE教えてよ」仕事でなんかあるわけはないけど、教えた。そのとき「これから一緒にご飯行こうよ」と誘ってこなかった点が、個人的にポイントが高かった。

LINEは下の名前だけで、アイコンの写真もホーム画面の写真も無し。こうやって遊んでるんだろうなあっていう、勝手な偏見から始まる。


案の定、帰ってからLINEでご飯に誘われたので、大丈夫かなぁこれ、と思いながらも暇な私は、次の日の仕事終わりに連れられることにした。最悪死ぬな、とまでは考えた。次の日、雨。せっかくなら顔を作って行きたいんだけど、雨で前髪が決まらず少し残念。

こんなにも情報がない人とご飯に行く機会ってそうないので、内心結構わくわくしていた。アプリで出会ったほうが情報を持っている。この人のことは、何も知らない。物事を攻略することが趣味みたいな私は、この見知らぬその人を知り尽くしてみたい、という欲。結構話した、楽しかった。

そろそろ行くか〜〜と、席を立ち上がったその人が「2週間恋愛しよう」と私に言ってきた。



「2週間恋愛しよう」



という言葉があまりにも響いた。

響いたっていうのは「何様やねん」でもなく「素敵!!!」でもなく、”2週間”と”恋愛をする”という組み合わせがあまりにも初めて聞く組み合わせで「こんな日本語作れるんだあ!?!すごい!!」という好奇心みたいな響き。「遊ぼう」ではなく「恋愛しよう」かぁ。

普段から言ってないと言えなくない?と、思ったし、その期間限定で恋愛(?)をしようという発想が湧く男性と出会ったことがなかったので「出会ったことない知らないジャンルだ!面白い!」とわくわくした。

まあこれを世間では遊んでる人だとか、チャラい、女慣れ、とか言うんだろうし、そんなことはわかっているんだけど。私が普通に私の人生を生きていたら、絶対に普段会えないタイプの人間が目の前にいて、これはどんな理由であれ、この人のことを知りたい、と思った。

毎日18時には寮について、部屋の中にこもっていた生活を2ヶ月間していた私は、とにかく人と喋れるのが楽しかった。


結局お互いの仕事の関係で、2週間経過しないうちにきっと最後になった。最初から2週間だし気楽で楽しい人、とは理解していた。別に恋愛的に好きなわけでもなければ、付き合いたいという気持ちも一切ない。わかっていたんだけど、いざもう会わないとなるとさみしい。

そういえば、期間限定で人と関わったことがない。その期間しか会えない人でも、嘘でも「また会おうね」と次があるような言葉で別れる。留学先の言葉もそんなに通じなかった海外の人たちですら「また会おうね」と別れてきた。最初から”2週間”と期間を決めているもんだから、あれ、もう会わないのか、会えないのか。なんなんだ、このぽっかりとした感じは。


かといって、この2週間を終えると、地元も職場も全く別の人なので、会いに行こうと行動を起こす関係でもない。お互いちょうど時間が余っていて、知り合いが周辺に居ない同士だったから会っていただけ。彼女はいないと言っていたけれど、どうも「2週間恋愛しよう」発言ができる人の言葉はどれも心の底から信じることはできず、本当は居たかもしれないし、本当に居ないかもしれない。

リゾバをしなければ会えなかった人とは、リゾバをしているから会えなくなるのか。なるほどね〜〜。


そもそも初っ端のココスの帰り道に「まあ俺らが結婚することはないじゃん?」みたいなことを言われて、それが逆に過ごしやすかったのもある。本当に遊びなんだな、じゃああえて期間限定で釣られてもいいかもな、と。


となると、やっぱりもう会わないのか。あぁ〜〜〜、私これ向いてないかも。失恋と同じじゃないのか、これ。友達に戻ろうタイプの失恋じゃなくて「元気でね」と一生会わないタイプのそれ。


まだ4回しか会ったことないのに、なぜかすごくさみしくなったので、適当な雑談LINEで終わらせよう。最後ではない感じで、今後LINEを送る機会は一生ないだろうが、あたかもいつでもLINEできるような雰囲気にしよう。そしたら、こうだ。


「三重でのいい思い出になったね」
「これからも楽しく生きてね」
「俺よりいい男いないけど」


え〜〜〜〜すごいな、どこから分析しよう。最後のなに。本当に面白い、語彙がさ、なんていうの、私が使わない言葉をずっと使ってくる人。やっぱり楽しいなあ。

「これからも楽しく生きてね」までだったらもう仕方なく、そっちもね〜〜で終了なんだけど、最後のなに。どんな意味ですら、どっちとも取れる返信をしてみたんだけど、そこから返信も来なければ、既読もつかない。


「俺よりいい男いないけど」というセリフを捨てておいて、私の返信に既読すらつけずにブロックされていた場合、芸術点高すぎないか……。完全なる敗北。完敗。正々堂々と釣られて終わった女となる。気持ち良い。意味なさすぎない?とは思うけど。彼女が居たのか。

あれだけお互い笑いながら過ごしておいて、あれが本当に2週間だけの時間潰しの役回りで、既読がつかなかったら。相当の演技だ。さみしいのは確かなんだけど、ここまで来ると完全なる敗北でいいなあとも思う、未来はないし。


「2週間って言っときながら、まだ1週間ちょっとしか経ってないじゃん!!」と思ってしまっている時点で、もう完敗なんだけどね。

写真が1枚もないので、来月になったら良い思い出として、顔も思い出せなくなる。にしてもやっぱり「俺よりいい男いないけど」と吐かれるほどの、敗北だ。少し悔しい。どうせなら勝ちたかった。とても勉強になったけれど、勉強になっただけで自分は変わらんだろうな。



にしてもな〜〜〜〜
顔が、良かったなぁ。タイプでした。



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