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人口減少社会における自治体再編—「令和の大合併」は到来するのか—

はじめに

日本の総人口は、2023年10月から2024年9月までの1年間で約55万人減少しています。おおよそ鳥取県の人口(約52.6万人)と同等であるため、わずか12か月の間に1つの都道府県分の人口が減っていることになります。

さらに、外国人人口はこの1年間で約34万人増えているため、日本人人口に限ると当該期間に約89万人も減少していることになります。これは全国で9番目に少ない秋田県の人口(約88.4万人)に匹敵しており、1年間の人口増減率は-0.74%に達しています。

次の表1は、2023年と2024年を比較して人口増減率が低かった都道府県を示したものです。

表1 人口増減率が低かった都道府県(2023年・2024年比較)
総務省統計局「人口推計(2024年10月1日現在)」を基に筆者が作成。

表1より、東北地方や四国地方の県で増減率が-1%を大きく超えるなど、人口減少が著しいことがわかります。

さらに、道路や水道管などのインフラ設備の老朽化や、技術職や医療職を中心に人材不足が問題となっており、地域社会を持続することが困難ともいえる状態に陥っている場所も少なくありません。

そこで今回は「市町村合併」をキーワードに、令和の自治体再編についてみていきます。

「平成の大合併」とは

1999年に「旧合併特例法」が改正されて以降、自治体の財政基盤を確立することを目的として、自治体の再編いわゆる「平成の大合併」が全国で行われました。その結果、平成の大合併を経て自治体数はおよそ半数にまで減少しました。

次の表2は、平成の大合併前後の市町村数の増減を示したものです。

表2 平成の大合併前後の市町村数の増減(1998年・2018年)
総務省「都道府県別市町村数の変遷(平成11年3月31日以降の全てを収録)」を基に筆者が作成。

表2より、新潟県や広島県、長崎県では自治体数が4分の1まで減少し、市町村の集約が大きく進んだことが分かります。また、瀬戸内地方や九州地方などで島を抱えた都道府県などで合併が相次ぎ、長崎県では小値賀町以外の離島すべてで合併が成立しました。

他にも、8都市が新たに政令指定都市に移行し、その過程で人口要件(法律上では50万人以上、実例は70万人以上)を満たすことを念頭に、隣接する市町村が数多く編入されました。

次の表3は、2000年以降に政令指定都市に移行した自治体と、編入した市町村を示したものです。

表3 2000年以降に政令指定都市へ移行した自治体における平成の大合併の状況
各自治体のホームページを参考に筆者が作成。

表3のとおり、周辺14市町村を編入した新潟市、11市町村を編入した浜松市を筆頭に、政令指定都市に移行したすべての自治体で合併が行われました。このように、平成の大合併を契機として市域を拡大し政令指定都市に制定されることで、都市の地位向上を図った例もありました。

しかしながら、2014年に岩舟町が栃木県栃木市に編入されたのを最後に、国内で市町村合併は行われていません。それは一体なぜでしょうか。

令和の大合併が起こる可能性

先述のとおり、人口減少問題は年を追うごとに深刻さを増しており、地方税の減少や物価の高騰による財政問題についても、平成の大合併以降の15年間で解消されてはいません。

また、自治体DXが全国各地で推進されている中で、IT人材を中心に専門性のある職員が不足しています。とくに、地方部では都市部に集中する高度な技術を持つIT人材を確保することが困難であるため、行政のデジタル化に後れをとるケースも存在します。

このように、多様化していく行政サービスに対して、中小規模の自治体では対応しきれなくなってきています。そのため、市町村合併によって少しでも自治体規模を大きくしようとする動きが出てきても不思議ではありません。

しかしながら、令和に入ってから市町村合併を検討している自治体は少なく、自治体再編の動きは下火になっているといえます。

理由として、平成の大合併によって職員や議員数が大幅に減少したことで、住民サービスの低下や過疎地域の切り捨てを招いたという有識者による失敗論も根強いことが挙げられます。そのため、市町村合併自体が自治体再編の有効策と言えないのが現状です。

では、今後自治体の合併を検討する余地はあるのでしょうか。

①地方部の市町村合併

地方部の市町村は、平成の大合併時に合併を一度は検討していたケースがほとんどです。しかし、周辺自治体間とのスタンスの違い、山林を隔てた地形などから地理的、文化的な要因などから熟考の末、合併を選択しなかった自治体も数多く存在します。

そのため、平成の大合併時に合併を選択しなかった自治体は、令和になってからも合併を選択しない可能性が高いと思われます。

このような自治体では、独自で行政サービスの強化に努めたり、周辺自治体との広域連合等の活動活発化に力を入れたりしています。その結果、自治意識が強くなったことで、地域政策に対して積極的に取り組むようになったといえます。

しかしながら、年々行政の担い手が減少していく状況は否応にも避けられないため、次世代の育成をしっかり行っていくことが今後の自治体運営の鍵を握っているといえます。

②都市部の市町村合併

首都圏や関西圏では、平成の大合併時に合併に至った自治体はごく僅かです。なかでも東京都と大阪府は、西東京市と堺市のそれぞれ1例ずつしかなく、都市部では自治体の合併が進まなかったといえます。

都市部の自治体間では、サービスや財政状況等で明らかな差が見られないケースが多く、合併による恩恵が得られにくいことから合併が進まなかったものと推測されます。

しかし、都市部は地方部とは異なり、合併を行う上で地理的や文化的なハードルは比較的低いと考えられます。また、大都市郊外で1960年代から1980年代までの間に急速に進んだインフラ整備の更新や公共施設の建て替えのタイミングと重なっているため、このタイミングで市町村合併を視野に入れる自治体も多いのではないかと思われます。

そのため、地方部よりも都市部の自治体で市町村合併が進んでいくのではないかと私は考えています。

令和の大合併の実現度

地方部や都市部の状況を鑑みると、実際に合併を行う自治体は現れる可能性はあるもの、「令和の大合併」の呼ばれるほどの大きな政策トレンドとなる可能性は低いと考えられます。

平成の大合併時には市町村数を約3,200から1,000程度にまで減らすことが目標とされていましたが、実際には約1,720の市町村が存続しています。仮に令和の時代で市町村合併が進んでいったとしても、合併後の自治体数は1,500から1,600程度に落ち着くのではないかと推察しています。

おわりに

ここまで、「市町村合併」をキーワードに、令和の自治体再編についてみてきました。

令和においては、少しずつ市町村合併が進んでいくため、「令和の大合併」は起こらないと推察されます。

しかしながら、いずれにせよ人口減少や財政問題による行政の行き詰まりは避けられないことから、合併などで自治体そのものを変えるのではなく、行政サービスなど運営または政策から自治体再編をする動きが強まっていくのではないかと考えられます。

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